ダイソン(Dyson)はヘアケアに関して有言実行のようだ。
ヘアケアの世界的権威を目指し製品開発や研究に大投資を行うダイソン
ダイソンは、今後4年間でヘアケアにフォーカスした研究・小売・製品開発に5億ドル(約697億円)の投資を行うことを公約し、健康の観点からヘアケアに取り組むというコミットメントを強化している。同社は2019年以降、「ウェルビーイング」企業への変革を目指している。
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この投資により、ダイソンは髪の健康にフォーカスして、髪全体に関するデータ、消費者の習慣、独自の洞察の世界的なリソース兼権威になることを目指している。今後4年間で製品アタッチメントなど20製品を発売する予定がある。また数とタイムラインは不明だが、研究所も数カ所オープンするという。ダイソンの2021年の収益は68億8000万ドル(約9592億円)で、前年比で5%増、利益は16%増の17億2000万ドル(約2398億円)と報告されている。2022年だけでもポートフォリオ全体で7億ドル(約976億円)近くをテクノロジーと施設と研究所に投資している。
2016年に発売されたスーパーソニック(Supersonic)ヘアドライヤーが高い評価を受けたことで、シンガポール拠点のダイソンは美容業界と時代精神の中心に躍り出た。2018年にはエアラップ(Airwrap)マルチスタイラーと2020年にはコーラル(Corrale)ストレートナーを発売し、2022年にはエアラップの最新バージョンを発売。また、小売にもさらに投資しており、スタンドアロンのデモストア(Demo Store)や、10月にフロリダ州バルハーバーのサックス・フィフス・アベニュー(Saks Fifth Avenue)内にビューティラボ(Beauty Lab)の新店舗をオープンしたことなどがある。同社の製品はセフォラ(Sephora)やベッドバス&ビヨンド(Bed Bath & Beyond)、ベストバイ(Best Buy)などの小売店でも販売されている。
多様な髪のタイプに対応するための試み
ダイソンアメリカズのリージョナルプレジデント、ジェシカ・スキナジ氏は次のように述べている。「今後数年間でこの投資をどう分割するかについては多面的なアプローチがあり、毛髪や健康技術のパイオニアであり続けることにフォーカスする」。同氏は今後の製品ローンチやタイムラインについて詳細は共有してくれなかったが、多様なヘアタイプに対応する製品と付属品類に注力すると語っている。
製品開発に貢献しているのは、世界中にある数カ所の研究所である。ダイソンは、シンガポール、英国、フィリピンで研究を行っている。スキナジ氏からは新しい研究所を何カ所設立するかについては共有されなかった。同氏は、ダイソンのエンジニアたちは、走査型電子顕微鏡、赤外線カメラ、エアフローレーザースモークマシンなどの機器を使って、髪の損傷の影響、世界中の髪のタイプ、高速気流の影響などをもっと理解しようと尽力していると述べている。
髪のスタイリングの問題解決に注力
この投資ニュースと同時に、ダイソンは今年2万3000人を対象に実施した調査を発表した。この調査ではフケや脱毛などの消費者が持っている髪の懸念事項、スタイリングやシャンプーなどのヘアルーティンの習慣、パンデミックによる髪と習慣への影響が判明した。ダイソンのヘアケアカテゴリーインテグレーション責任者、サム・ザーパック氏によると、同調査には目的が3つあったという。それは、将来の製品開発のための洞察を得ること、ダイソンの研究への取り組みを実証すること、将来の製品の有効性を実証するためのベンチマークを得ることだった。
「解決すべき問題はまだ多いので、ヘアケアには大きなチャンスがある。髪型がもっとも優先されているのは理解しているが、人々は自分の髪をスタイリングするのに妥協している」とザーパック氏。「我々は髪のタイプとスタイルの多様性を完全に網羅したいと考えている」。
ダイソンの投資のタイミングにより、ヘアケアイノベーションの莫大な可能性とヘアケアが高成長カテゴリーに指定されていることが示唆されている。NPDのデータによると、ヘアケアは引き続き美容市場で最小であるがもっとも急速に成長しているカテゴリーである。第2四半期にはプレステージヘアケアが24%成長して7億8100万ドル(約1092億円)になり、ヘアケア、ヘアスタイリング、ヘアカラーを含むほぼすべてのヘアケア部門で売上が増加している。スキナジ氏は、顧客が髪についてスタイリングだけではなく健康とセルフケアも考慮するようになっているのを目撃していると述べている。この動きにより頭皮ケアのようなテーマが注目されるようになっている。ダイソンの調査では回答者の26%が健康な頭皮と健康な髪の外見は関連していると考えていることが判明した。また、世界の回答者の10人中6人が2020年から2022年の間にパンデミックのせいで髪に関する習慣を変えたと回答。また、17%は髪をスタイリングする回数が減ったと述べ、9%はヘア関連製品の使用が減ったと回答している。
顧客が製品を体感できるサービスを含むビューティラボ
ダイソンの新製品は専用小売スペースで販売される。スキナジ氏によると、2023年に全米でビューティラボを数店オープンする計画があるが、それはまだ確定ではないという。また、ビューティラボの計画にはサービスが組み込まれている。たとえば、顧客は自宅でスタイリングの予約ができ、(ビューティラボで)髪を乾かしてスタイリングされているときに製品の機能を体感したり、自宅でスタイリングするためのアドバイスを受けることができる。予約料金は50ドル(約7000円)だが、サービス時に価格が299ドル(約4.2万円)以上のダイソン製品1点を購入すると予約料金は免除になる。
ザーパック氏は次のように述べている。「当社はまだ存在していないものを作ることで独自の道を切り開いている。単に違うことをするのが目的ではない。常にオーセンティックに行っている。我々が信じていない製品なら、他人に信じてもらえると期待することは無理だ。次の段階でまた当社が大変革を起こせることを願っている」。
[原文:Beauty & Wellness Briefing: Dyson invests $500 million in hair care]
EMMA SANDLER(翻訳:ぬえよしこ、編集:山岸祐加子)