「金を無駄にしている気がしてならない」:混乱を深める デジタル広告 業界に関するエージェンシー幹部の告白

DIGIDAY

2021年、広告界全土に見られた亀裂は、今年2022年には巨大な地割れとなった。AppleのiOS14によるターゲティングおよびアトリビューションの混乱、そしてTwitterの嵐のごとき買収劇が起きるなか、デジタル広告主勢は皆、そこら中から激しい締め付けを受けている気分だと、こぼす。そこに追い打ちをかける経済の不安定性、さらにはGoogleやFacebookといった企業勢による最新の収益報告もあり、見通しは極めて暗いと広告主勢はいう。

匿名を条件に業界の裏側について赤裸々に語ってもらうDIGIDAYの「告白」シリーズ。今回は、ある広告エージェンシーのCEOがデジタル業界全体の激変ぶりと、デジタル広告がかつてないほど厳しい苦境にある理由を打ち明けてくれた。

以下のインタビューは、読みやすさのために編集および要約されている。

◆ ◆ ◆

――デジタルマーケティング業界の現況は?

まさに激変だ、興味深いとしかいえないくらいに。激しい変動はすべての領域で見られ、誰もがダメージを受けている。なかでもメディアエコシステムはいま現在、究極的に変動が激しい。ペイドは毎日、毎週、まさに乱高下している。

たとえば、ある日のFacebookのCPMは22ドル(約3080円)で、それが次の日には41ドル(約5740円)になる、といった具合だ。いまは週を重ねるごとに、ますます悪化している。何もかもがどん底にあり、パフォーマンスもどん底状態だ。私が話をしているどの会社もマイナス5~10%という状況で、慢性的にもがき苦しんでいる。いまや業界中の誰もがリテンションに頭を抱えている。消費者をどうやって維持するか、という問題だ。メディア効率はよくても「まあまあ」といった程度。CPAとCACは着実に上がり続けている。

この3~4週間、CPMは下がっている。それはつまり、人々が理論上、支出を抑えているということだ。デジタル広告が予測不能のエコシステムで、我々はこのエコシステムによって多くの企業が傷ついている、それも激しく傷ついているのを目の当たりにしている。

先ほどあるクライアントと電話で話していたが、こう言われた。「そちらは4番手のエージェンシーだが、ほかの3つはどこもCACを下げられなかったのに、おたくは1週間でやってくれた」。だが、私としても金を無駄にしている気がしてならない。私自身このままやっていけるかどうか、正直見当もつかない。

――最近、メタ(Meta)の投資家がFacebookのメタバース推進姿勢を批判した。その一方で、iOS14の新データプライバシー方針に対する標準的解決策は、同プラットフォームにはない。それについては?

iOS14が出た瞬間、メタのCEOマーク・ザッカーバーグは目を逸らし、ただただ怖がっていた。解決できたはずの問題が山ほどあるというのにだ。人々の生活費から何百万ドルという金を引き出せるのがわかっているのに、誰もそこを解決しようとしなかった。その代わりに、まだ多くが採り入れようともしていない、あるいは採り入れる話さえしていないものに向かう、つまりメタバースだ。そもそも、あそこはあの広告プラットフォームにいくら投資しているのか。

このエコシステム全体、現在進行形のこのマクロ環境、Facebookの収支報告から、例のTwitter買収の件に、Snapchat(スナップチャット)の株価下落に至るまで、すべてが問題だ。そのせいで一部のマーケターはとんでもない打撃を受けている。

我々としてはこう考える。「一体全体、あのプラットフォーム連中のどこかひとつでも、この問題をどうにかしようとしてるのか?」と。ブランドも、エージェンシーも、その混合的存在も、呼び方は何でもいいが、あらゆる広告主もみんな、このわけのわからない、宙ぶらりな、ふわふわとした状態に置かれている。全員がいわば頭をかきむしっている。一体全体、この先どうなるのかと。

――広告エージェンシーは、どうするべきだと?

iOS14のあの3領域(ターゲティング、アトリビュ-ション、サード~ファーストパーティデータ)に関して巨大な革新がない限り、我々としては、今後の運営に関してまったく違う景色に備えておくしかないと思う。

――このトンネルの先に明かりはあると?

どの業界にも進化の過程はある。確かに、今回は少しばかり無理やりという感じはするが、D2Cは死んでおらず、Amazonもリテールもある。いまはかつてないほど厳しいか? それは間違いない。ただ、トンネルを抜けた先には、常に明かりがあると私は固く信じている。エージェンシー業界にはずっと前から、改良モデルが必要とされていたということだ。

プラットフォームは、広告プラットフォームの観点でいえば、いつの間にかひどく欲深くなった。ただ、その足元をすくうのはデータに関するちょっとした変更1つあれば事足りる。たとえば例のあの会社は1兆ドル(約140兆円)企業から、わずか2年足らずで、今や2000億ドル(約28兆円)規模だ。結局、みんながどこかびくびくしているのは、わからないことだらけだからだ。だからとにかく、ベストを尽くすしかない。つまり、賢い判断を下し、金を使い過ぎず、そしていま現在、会社をどう切り盛りするべきか、慎重を期す、ということだ。

[原文:‘I’m burning money’: Confessions of an ad exec on the current volatile digital ad landscape

Kimeko McCoy(翻訳:SI Japan、編集:島田涼平)

Source

タイトルとURLをコピーしました