「 Z世代 にビジネスチャンスがある 」:ラグジュアリーブランドたち、未来の消費者に狙いを定める

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ラグジュアリーブランドはZ世代に注目している。

185ドル(約2万4000円)のフェイシャルトリートメントエッセンスで知られる日本の高級スキンケアブランドSK-IIは、最近、KポップのスターであるTWICEのミナなどZ世代のカリスマを起用したマーケティングキャンペーンを開始した。高級ファッションブランドのグッチ(Gucci)はメタバースにZ世代消費者向けの仮想空間を作ることを計画し、デジタル不動産プラットフォームのサンドボックス(The Sandbox)上で土地を購入している。高級化粧品ブランドのイヴ・サンローラン・ボーテ(YSL Beauty)は2月に、Z世代消費者に向けたマーケティングキャンペーンの一環として俳優でモデルのインディア・ムーアをアメリカでの新しいブランドアンバサダーに任命したと発表した。

ブランドに与えるZ世代の影響力は強まっていて、ラグジュアリーブランドも例外ではない。専門家によれば、購買力を高めているこの世代にリーチするために、各ブランドが新しいデジタルマーケティングチャネルに向かい、メタバースなど新しい概念を試しているという。ラグジュアリーブランド品の委託販売を行うザ・リアルリアル(The RealReal)の2021年ラグジュアリーリセールレポートによれば、Z世代の購入者は前年度比33%増、出品者は86%増で、どちらも全世代の中で最大の増加率を示した。この傾向に合わせてラグジュアリーブランドは、これまで無視してきたZ世代消費者の関心を引こうとしている。

「Z世代は未来の消費者」

調査および助言企業のジェネレーションZプラネット(Gen Z Planet)のCEO兼創設者で、最近出版された「ジェネレーションZのすべて:文化、仕事、コマースの不可避な変化への対応(Gen Z 360: Preparing for the Inevitable Change in Culture, Work, and Commerce)」の著者であるハナ・ベン・シャバット氏は次のように語る。「Z世代は未来の消費者だ。世界の労働人口には、すでに多くのZ世代が加わっていて、自分で金を稼ぎはじめ、その使い道を自分で決めている。つまり、そこにビジネスチャンスがある」。

ジェネレーションZプラネットが昨年公開した調査によれば、Z世代消費者の可処分所得は3億6千万ドル(約461億円)に達したという。Z世代の購買力は1430億ドル(約18兆3000億円)と見積もられ、この世代に対するビジネスの機会が見過ごされてきたと指摘している。

IT企業のエンプリフィ(Emplifi)で最高製品責任者を務めるアレックス・ジョージ氏は、Z世代消費者の影響力の増大は、最近生じている世代間の富の移動から来ていると述べている。また、すべてのZ世代がラグジュアリーな製品を手に入れられないとしても、ブランドが顧客ロイヤルティを築くことはできるとも述べている。「いつの時代も同じだが、20代前半で心をつかまれたブランドに対しては、その後20~30年は愛着を持つものだ。早期にブランドロイヤルティを築くことは、どのブランドにとっても非常に重要だが、ラグジュアリーブランドにとっては特に重要だ」。

世代と共に変化するチャネル

ブランドが若い消費者をターゲットにすることは以前からあった。グッチ、サンローラン(Saint Laurent)、ルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)などのラグジュアリーブランドは、以前からソーシャルメディア、特にインスタグラムを利用して、ミレニアル世代の関心を引いてきた。これは、今Z世代に対して行っていることと同じだ。ソーシャルリスニング会社のネットベース・クイッド(NetBase Quid)が発表した2021年のデータによれば、2025年までにミレニアル世代とZ世代がラグジュアリー市場全体の顧客の50%を構成することになると予想されている。

Z世代で変わったことは、もっとも時間を費やしているプラットフォームだ。ブランドにとって、Z世代に速くリーチできる対コスト効果が高い方法として、SnapchatとのブランドパートナーシップやTikTokインフルエンサーとの提携が一般的になった。シンクタンクのピュー研究所(Pew Research Center)が昨年行った調査によれば、18歳から29歳の65%がTikTokを使ったことがあり、48%が現在も使っていると答えている。

ジョージ氏は次のように述べている。「各ブランドは、特にTikTokやインスタグラムのようなチャネルとのコラボを通じて、フォロワーを増やし、バズらせることができると気づいた」。

たとえば、ヴェルサーチェ(Versace)がランウェイの様子を投稿するTikTokアカウントは、66万1000人を超えるユーザーからフォローされている。バーバリー(Burberry)には、ショートムービー共有アプリでのフォロワーが100万人以上いる。

多くのラグジュアリーアイテムが、Z世代の利用者の多いプラットフォームでバズったあとで完売することからも、Z世代の購買力は明らかである。たとえば、ラグジュアリーファッションブランド、ケイト・スペードのハート型バッグは、標準小売価格がおよそ349ドル(約4万5000円)であるにも関わらず、去年TikTokでバズった後で売り切れた。

没入型ARショッピング体験

ラグジュアリーブランドは店舗でのショッピング体験に投資をしてきたが、最近はユニークなオンラインショッピング体験にも投資をしようとしている。アパレル通販のファーフェッチ(Farfetch)は昨年、3Dボディーメッシュや音声コントロールなどの技術を利用して没入型ARショッピング体験を提供するためにSnapchatと提携した。プラダ(Prada)やグッチも同様のパートナーシップをSnapchatと結んでいる。

ITサービスとコンサルティングの企業であるサーチアイオー(Search.io)の最高収益責任者、ジョー・アヨウブ氏は次のように述べている。「当社のクライアントであるブランドは、より若い世代をターゲットとし、オンラインに移行しようとしている。若い世代は、ほかの世代と比べてオンラインに親しんでいる」。

デジタルショッピング体験がスムーズでなければ、Z世代消費者の関心は簡単に失われてしまうとアヨウブ氏は述べている。「気が短いデジタルネイティブな消費者は、ショッピングサイトで探している物がすぐに見つからなければ、あっという間に去ってしまう」。

価値観を重視したZ世代の買い物

Z世代の可処分所得は、ブランドがマーケティング予算の一部をZ世代向けに割り当てる十分な理由になる。しかし、実際に購入してもらうのは別の問題だ。

ジェネレーションZプラネットのベン・シャバット氏によると、多くのZ世代消費者は、価値観を重視して買い物をする。つまり、サステナビリティなど個人の価値観に合ったブランドを購入する傾向があるのだという。

これに応えて、いくつかのブランドは環境に配慮した活動に乗り出している。ジョルジオアルマーニ(Giorgio Armani)、エンポリオアルマーニ(Emporio Armani)などのブランドを抱えるアルマーニグループ(Armani Group)は12月に、脱毛皮の一環としてアンゴラウールの使用を中止すると発表した。

ベン・シャバット氏は次のように述べている。「多くのラグジュアリーブランドが、環境に与える影響を減らそうとしている。しかし、5〜10年前から同じように考えていたブランドは多くない。Z世代のおかげだろう」。

また、すべてのマーケティング戦略が成功しているわけではない。ラグジュアリー宝飾品ブランドのティファニー(Tiffany & Co.)は昨年、Z世代をターゲットとして「Not Your Mother’s Tiffany(お母さんのものではないティファニー)」と名付けたキャンペーンを発表した。しかし、ティファニーが現在の顧客をバカにしていると感じたフォロワーから、もはや母親は顧客として必要ないのかと反感を買うことになった

ベン・シャバット氏は次のように述べている。「ミレニアル世代でうまくいった戦略が、Z世代でもうまくいくと考えがちだが、これは大きな間違いだ。Z世代はミレニアル世代ではないし、ほかのどの世代とも違う。Z世代はユニークな存在だ。そのユニークさを理解しなければならない」。

[原文:‘The consumer of the future’: Luxury brands place their bets on Gen Z]

Maria Monteros(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:黒田千聖)

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