米国会計検査院(GAO)は新たなレポートの中で、大規模な衛星コンステレーションの打ち上げに向けた規制と認可方法を見直すよう連邦通信委員会(FCC)に求めています。
GAOのレポートは、少なくとも週に1度は新たな物体が宇宙に送られ、地球を周回する衛星の数は増えていく一方という状況の中で発表されました。ちなみにアメリカは、そういった打ち上げで最大のシェアを占めています。
レポートによると、「2030年までには、軌道上に既にいる数千基の商業衛星に数万基が加わると見込まれている」そう。「科学者などが、大量の人工衛星による潜在的な環境や他への影響についての懸念を提起してきました」と書かれています。
人工衛星が増えて衝突の可能性が
打ち上げられて軌道にたまっていく衛星が増えるにつれて、問題が起きる可能性も増えるとGAOは指摘。例えば、ダメージをもたらす衝突の可能性はますます高まり、衝突によって新たな物体が生じれば地球を周回するデブリの数は増えてしまいます。あるリサーチは、そういった打ち上げ全てからの累積の排出量が(特に上層における)大気の組成を変えているかもしれないと示唆。また、SpaceXのStarlinkのような衛星の大群の周回は、天文観測と地球への電波送信に干渉するというリスクがあります。それに衛星からのデブリが、軌道から落下して土地に被害をもたらしたり人を傷つけたりする可能性も、非常に小さいですがゼロではありません。
一元的な環境レビューを行なう方法は?
GAOのレポートによると、こういった影響はそれぞれ少なくとも1つの政府機関によって研究や評価されているようですが、機関間の協力は限られていて、全てのカテゴリーをまとめて考究している機関はありません。徹底した一元的な環境レビューが確実に行なわれるようにする方法の1つは、国家環境政策法(NEPA)を通すこと。しかしながら衛星の打ち上げという行為は大規模なコンステレーション計画であっても、そういったレビューの対象外となる「適用除外行為」に当てはまります。この除外リストが設けられたのは1986年で大規模な衛星コンステレーションが存在する前のことですが、GAOいわくFCCはその理由をきちんと説明していないとのこと。
レポートには、「FCC職員らは、適用除外行為が時代に即して適切かどうかを常に考慮していて、彼らは関係者が懸念を提起するためのプロセスを持っていると教えてくれました」と書かれているものの、「しかしながら適用除外行為を大規模な衛星コンステレーションの認可に適用されるものとして、具体的に検討したと示す文書をFCC職員らは提供できなかったのです」と続いていました。
そのため、GAOはFCCが衛星コンステレーションの環境へのあらゆる影響を新たに評価し、それらが適用除外行為に当てはまるべきか否かを再検討し、その成果をすべて公表することを勧めています。
GAOのレポートには、こう書かれていました。
連邦機関が大規模な衛星コンステレーションの潜在的な環境への影響についてリサーチを行なって知見を深めていることを考えると、FCCにとって大切なのはこの情報を今後の意思決定において考慮することです。
FCCはGAOの推奨に応じることにしたようで、レポートに対するレターの中で、「衛星の認可活動を含む行動が(NEPAの)要件に準拠するよう尽力します」と書いていました。
衛星の規制を増やす動きも
GAOの提言とは別に、FCCは衛星への規制を増やしたい意向を表明しています。つい先日、FCCのジェシカ・ローゼンウォーセル委員長は衛星への認可と規制を整備する宇宙局を立ち上げる計画を発表。そして9月には、地球低軌道を漂う宇宙ゴミをできるだけ減らす取り組みとして、衛星を任務完了後(25年ではなく)5年以内に地球に戻すよう求める草案を出しています。
こういった新たな検討事項によって、地球の上層大気と低軌道域が浄化されて、環境がよくなることを願うばかりです。
Source: U.S. Government Accountability Office, Gunter’s Space Page, Federal Aviation Administration, Access Partnership,