Amazon の広告事業、売り込みの目玉はデータクリーンルーム:「彼らはついに広告を受け入れ、自分たちの未来の一部だと認めた」

DIGIDAY

巨大eコマース企業のAmazonは、今やFacebook、Googleと並ぶ広告業界トップ3の一角をなしており、今年の第2四半期に88億ドル(約1兆3100億円)の売上を計上したメディア事業を加速させる準備を進めている。

その野望は10月25日から27日の日程で開催されたunBoxedカンファレンスで明かされた。Amazonはこのカンファレンスで、市場シェアを拡大するために、広告の食物連鎖と言うべきものを構築、購入、雇用してきたという開発戦略の結果を概説した。

ニューヨークのジャビッツ・センター(Javits Center)で開催されたカンファレンスに先立ち、Amazonのマーケティングクラウドおよびアドテクソリューション担当ディレクター、キーラット・シャルマ氏が米DIGIDAYの取材に応じ、Amazon Adsの市場への売り込みについて語ってくれた。

カンファレンスでの発表には、アドレサビリティに関する広告主の懸念を和らげるツールが含まれていた。キャンペーンのプランニングを支援したり、メディアの細分化に対処したり、測定を強化したりするためのポイントソリューションで、サードパーティCookieをはじめとする識別子が減少するなか、いずれも優先度が高まっている

アトリビューション、使いやすさ、パートナーシップ、より良いシグナル

シャルマ氏のチームは、Amazon Adsプラットフォームをより使いやすいものにしようと模索してきた。具体的には、DSP(デマンドサイドプラットフォーム)と他の製品、サービスをより密接に統合し、2019年に格安で買収したバイサイドアドサーバーのサイズミック(Sizmek)に投資してきた。

さらに、他のアドテクプラットフォームとの相互運用性の向上、アドテクを利用することで、どのようにROIが高まるかをより深く理解する方法、広告主とプラットフォームの専門家をつなぐパートナーシッププログラムがカンファレンスで紹介された。

これらの更新された機能、そして、メッセージの核となるのがAmazon Marketing Cloud(AMC)だ。AMCはAmazonのデータクリーンルームで、その顧客はこの1年で4倍に増加したとAmazonは述べている。

「2021年のunBoxedの最後に、約10のクエリが入ったインストラクショナルクエリライブラリを公開した」とシャルマ氏は振り返る。「現在、クエリは約50まで拡大している(中略)これらのクエリは本当に重要だ。AMCを始めたばかりのマーケターが新たな用途を検討したり、テンプレート化されたものを活用するのに役立つためだ」。

シャルマ氏はそう説明した後、AMCとアドテクポイントソリューションのさらなる統合を予告した。「第4四半期には、AMC内でAmazon DSPのオーディエンスを管理する機能を公開する予定だ」とシャルマ氏は語り、さらなる拡充が間近に迫っていることをほのめかした。

「パターン」をデータクリーンルーム運用に役立てる

また、カンファレンスでは、認定ベンダー制度というパートナーシッププログラムが発表された。広告主に代わってアドテクやマーテクを運用するサードパーティ企業をAmazonが推薦するというものだ。

「2022年に入ってから認定プログラムを立ち上げ、パートナーがカリキュラムをこなし、AMCの使い方を習得するための支援を行っている」とシャルマ氏は説明する。カンファレンスでは、約15社のパートナーが発表された。

シャルマ氏はさらに、現在ベータ版のSizmek Ad Suiteに投資することで、AMCにさらなる広告主を引き付けるつもりだと述べた。広告主が入札活動の効率性を調べたり、パブリッシャー間のアトリビューションを実行するための強化された機能を提供する予定だ。

また、2022年のカンファレンスの柱として、Amazonのさまざまなサービスを組み合わせて使うことが業務改善につながるというメッセージが伝えられた。つまり、例年より「アップセリング」の基調が高まっており、Amazon Web Services(AWS)は脇役に徹しているということだ。

シャルマ氏は「AMCはAWSの上に構築されている」とDIGIDAYに説明し、クラウドコンピューティングサービスが持つ多くのインサイト、つまり「パターン」をデータクリーンルーム運用の改善に役立てていると補足した。その結果、「AMCとAWSの両方を使った独自の自動化や統合がとても簡単にできる」。

「Amazonはついに広告事業を受け入れた」

10月27日には、Amazonの投資家向け説明会が開催され、第3四半期の売上が発表された。大手テクノロジー企業(Googleの親会社であるAlphabetなど)は軒並み、中核ビジネスモデルが抱える課題を報告している。大部分の関係者が世界的な景気後退に備えていることを考えると、ほぼ必然的な結果と言える。

Amazonが2021年に310億ドル(当時のレートで約3兆4000億円)を突破した広告売上をさらに伸ばそうと努力しているのは、中核事業であるeコマースが難題に直面したとき、その影響を相殺する狙いがあるのではないかと情報筋は述べている。

従業員研修サービス、ユー・オブ・デジタル(U of Digital)の創業者であるシブ・グプタ氏は、Amazon Adsのここ数年の人材採用戦略は(人数、人材の知名度という点で)、広告に対する野心の大きさを表していると考えている。

「周知の通り、小売は彼らの本業であり、広告は長いあいだ、道楽のようなものだった」とグプタ氏はDIGIDAYに語った。「彼らはついに広告を受け入れ、『これは私たちの未来の一部だ』と言っているように見える」。

グプタ氏はさらに続ける。「つまり、彼らはようやく、これは財務の一部だと認めたのだと思う。その証拠に、彼らは2021年から『広告』を(一つの収益源として)追加している」。

[原文:Amazon places its data clean room at the center of its adland charm offensive

Ronan Shields(翻訳:米井香織/ガリレオ、編集:分島翔平)

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