紙・ガラスなどの「原材料不足」、製造業を根底から覆す

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過去2年間にわたり、原材料はサプライチェーンのもっとも重要で、しかし調達が困難な部分のひとつだということが証明されてきた。これらの基本的な要素が不足すると、ブランドは顧客に商品を遅滞なく配達できなくなる。

しかし、紙やプラスチックのような一般的な品物、小売会社がこれまで深く考えてこなかったような基本的な材料の供給が不足するようになってきた。そして、各社はその不足に俊敏な対処を迫られるようになった。

チェリー飲料ブランドのチェリバンディ(Cheribundi)の最高操業責任者を務めるプラバ・チエマラパティ氏は、次のように米モダンリテールに語った。「将来の計画は、このような状況で最良のツールだ。現在は、どの製造業者にとっても万能の解決策はない」。

過去2年間にわたり、労働力の不足やCovidに関係した工場のシャットダウンは、原材料の製造と配送におけるボトルネックとして働いてきた。これにより、多くの大手小売業者や新興のブランドは、必要な原材料を入手するため競争を強いられるようになった。パンデミックのあいだには、厳しい荒天などほかの要因から、特定の材料が一時的に欠乏することもあった。

これに対して、多くのブランドは前もって購入を行う、別の原材料に切り替える、対処のため新しい製造業者を見つけるなどの予備的な方針を採用し、2019年のものとは大きく異なる、新しい第一線のサプライチェーン戦略ができあがった。

小売の各ブランドが適時供給を受けようとしてきた原材料の主要なカテゴリーのいくつかを、以下に示す。

缶とボトルの不足

過去1年間に、大手の食品および飲料会社は、自社商品を詰めるアルミ缶の欠乏について不満を抱えてきた。これは主に、家庭向けのアルコール飲料の売り上げが増加したことと、ガラスボトルからより安価なアルミ缶のデザインに移行するブランドがパンデミックの前から増えていたことの両方によるものだ。缶の需要の高さと、米国内の工場がパンデミックのあいだに十分な製造を行えなかったことから、欠乏が起きた。

金属とアルミのパッケージの供給は、米国内での製造量の増加にもかかわらず、昨年も依然として不足していた。米国での缶の製造量は2021年に前年比で6%増加し、1000億缶を超えた。それでも、モンスターエナジー(Monster Energy)やモルソンクアーズ(Molson Coors)などのCPG企業は依然として、海外から缶を調達することを余儀なくされた。缶の輸入自体が高価であり、この10年間でもっとも盛んになっている。ファクトセット(FactSet)によれば、2020年から2021年にかけてアルミ缶のコストは35%も増加した。このコスト上昇は、中国の新しい環境ポリシーで、これらの銀色の製品を製造する同国内の工場に対してより厳しい制約を規定した結果だ。

しかし、アルミ缶の代替品であるプラスチックやガラスのボトルなどにも、それぞれ固有の課題が存在する。

たとえば昨年のテキサスを襲った冬の嵐のウリ(Uri)により、プラスチックが一時的に不足した。これは主に石油化学工場の生産が数週間にわたって中断したことによるもので、多くの企業は全世界から別の供給元を探すことを迫られた。

チェリバンディは、自社のボトル詰商品のラインで使用する十分なパッケージを確保するという課題に取り組んだブランドのひとつだ。同社は「過去6カ月から9カ月にわたって、パッケージのリードタイムの前例のない増大」に直面したと、チエマラパティ氏は語る。それ以来同社は、新しい製造業者からプラスチックボトルの供給を受けるよう変更を加えてきた。

同氏は次のように述べている。「当社の製造側と供給側の両方に柔軟なパートナーが存在したことは幸運で、これによって対処できる状況になった。当社はもっとも重要なコンポーネント用の供給を確保し、ほかの材料について引き続きリードタイムを監視していく」。

同様に、CBDブランドのコーンブレッドヘンプ(Cornbread Hemp)も、プラスチックとガラスボトルの価格の上昇を目の当たりにした。共同創設者のエリック・ジッパーレ氏は、同ブランドの液体滴下ボトルの価格が過去1年間で30%も上昇したと、米モダンリテールに語った。「残念ながら、これは現時点で当社のキャッシュフローの10%が前倒し供給品に費やされていることを意味する」と同氏は述べた。

さらに、小売価格の上昇を回避するためSKUの調整を行ったブランドもある。

カクテルミキサーブランドのキューミキサーズ(Q Mixers)の創設者であるジョーダン・シルバート氏は、同社が価格の競合力を維持するために、ガラスボトルから缶への切り替えという小さな転換を行ったと語った。同社はクローガー(Kroger)、アルバートソンズ(Albertsons)、ターゲット(Target)、パブリックス(Publix)などの大手小売業者で飲料を販売している。

キューミキサーズは依然としてガラスボトルを使用しているが、小売販売向けには細形のアルミ缶の飲料パッケージを中心にしていると、シルバート氏は語る。「当社の6.7オンス(約200ミリリットル)のガラスボトルはほとんどがフォーシーズンズホテル(Four Seasons hotels)などのバーやレストランで使用される」と同氏は述べている。これは、接客業の顧客は見た目の観点からひとり分のガラスボトルを好むためだと、同氏は説明する。「しかし小売においては、当社は缶を前面に押し出してきた。こちらの方がガラスボトルより安価で、結果として従来の小売業者ではよく売れるためだ」と同氏は述べる。キューミキサーズの4本パックの缶入り飲料の小売価格は3.99ドル(約487円)で、これに対してガラスボトルの同等品の価格は5.99ドル(約731円)だ。

紙を求めて

昨年入手が困難だったもうひとつの材料は紙で、供給の不足は収まる兆候がない。

ファイナンシャルタイムズ(Financial Times)のレポートによれば、2月の時点で製紙工場は木材パルプが不足しているため注文に対応しきれていない。その結果、米国の消費者向けパッケージ商品は新たな課題を抱えている。

D2Cの文房具ブランドのアポインテッド(Appointed)は商品をワシントンD.C.で製造しており、紙の不足から商品の製造が遅延した。米国労働統計局(Bureau of Labor Statistics)によれば、段ボール箱に使用されるパルプと紙のコストは2020年から2021年のあいだに25%以上増加し、紙の調達コストが増大した。

アポインテッドの創設者であるスアン・ソン氏は、「紙の不足と供給の不安定から、当社は材料の供給元を調整することを余儀なくされた」と、米モダンリテールに語った。同社は通常、原材料を受領してから8週間後に商品を配送する。昨年より前は、同社はこのサイクルに基づいて材料と必要な紙を購入していた。

「当社は現在、材料が不足しないように一括で、12から16週間前に購入する」とソン氏は認めている。何カ月にもわたって遅延が続いたあとで、同ブランドは2022年にはリードタイムを変更し続けることが普通となった。ソン氏は、良い兆候として「制限が次第に緩くなっていくのを目にしているが、常に転向が行われ、柔軟性が求められている」と述べている。

パッケージ材料の追求

パッケージは、D2Cブランドが自社を顧客にアピールするための、もうひとつの重要な要素だ。

D2Cの消毒剤ブランドのノシンク(Noshinku)は2017年に設立され、全面的に価格が上昇してきた。同社の共同創設者であるアンドリュー・ザホナッキー氏は、同社が現在パッケージの材料を中国のサプライヤーから調達しており、カリフォルニアの港湾の渋滞によって遅延を経験したと語っている。

同社は旅行用消毒剤にプラスチックの容器を使用しており、過去1年間にその価格は上昇した。同じ商品で紙管を使用したものもあり、そちらは過去6カ月に20%から25%価格が上昇したと、ザホナッキー氏は述べている。

同社は現在、2022年の在庫に必要となるプラスチックと紙のパッケージを備蓄しており、このために昨年後半から準備する必要があった。「当社は材料を輸入しているが、米国に到着したあとの国内での在庫の移動も、昨年の嵐によって遅延した」とザホナッキー氏は述べている。2021年2月の湾の凍結により、多くの日用品メーカーは不可抗力を宣言することになった。これによりさらに原材料が不足し、2021年末まで続くことになった。2021年のプラスチックの価格は、前年比で4%から10%上昇した。

これらの継続的な状況から、ノシンクなどのブランドは生産拡大を注意して計画するようになった。「当社は多少の備蓄を保有しているが、可能な限り需要を予測し、無駄をなくそうと試みている」とザホナッキー氏は述べている。

取引を甘くするための砂糖の代用品

いくつかのCPGブランドによれば、パッケージだけでなく、甘味料などの主要な材料も1年近くにわたって不足している。これにはモンクフルーツ、ステビア、エリスリトールなどの代替品も含まれ、パンデミックがはじまってからどれも価格が上昇した。

調理専門学校(Institute of Culinary Education)のパン菓子とパン焼き専門プログラムのディレクターで、オンラインベーカリーのレイズ(Raize)の最高製品責任者を務めるジェフ・ヨスコビッツ氏は、砂糖の代用品などの材料の価格は過去1年間に4倍近くに上昇したと語る。ヨスコビッツ氏は、新興企業である同社は今年初めの時点で、2022年に在庫切れを起こすことを避けるため、砂糖の代用品のブレンドを最低でも6か月分は備蓄したことを認めている。

ほかのニッチな砂糖の代用品も、短時間で入手するのは困難になった。

栄養食品バーのブランドであるマインドライト(Mindright)は、優先して使用している甘味料の遅延を経験した。同社はレシピでココナッツシュガーを使用しているが、過去6カ月にわたってリードタイムが長くなっていた。「当社は新規ブランドとして、競合力を維持するために、これらのコストを一部でも吸収しようと手を尽くしている」と、マインドライトの共同創設者であるクリス・バーナード氏は米モダンリテールに語った。「しかし可能な場合は注文数量を増やすことで、スケールメリットも活かそうとしている」とも同氏は述べている。

全体として、各ブランドは必要なときに原材料か代替品を入手する方法を見いだしつつある。この方法は、少なくとも予見しうる将来について有効だろう。「必要なものを入手できても、サプライチェーンのタイミングを満たせるかどうかが問題だ」と、ザホナッキー氏は結論している。

大手の複合企業と供給を奪い合っている小規模企業の場合、コストの増加は回復不能に思える。コーンブレッドヘンプのジッパーレ氏は次のように述べている。「近い将来に価格が下落することは期待していない。当面はコストの負担に対応していくことが必要だ」。

[原文:The shortage of paper, glass and raw materials has upended manufacturing]

Gabriela Barkho(翻訳:ジェスコーポレーション 編集:長田真)
Illustration by Ivy Liu

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