オフプライス 企業たち、決算発表で「楽観的」展望示す:景気不安定でも成長するビジネスモデル

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サプライチェーンの問題やインフレ、そのほかの経済的な不確実性が、アパレル小売企業の長期的な見通しを覆うなか、オフプライスストアの大手3社は、決算発表で楽観的な見通しを示した。

たとえばロス(Ross)は、第1四半期だけで30店舗、通期では100店舗の出店を計画している。バーリントン(Burlington)は2022年度の指針を公開していないが、今年度中に120店舗を出店するとしている。T.J.マックス(T.J. Maxx)とマーシャルズ(Marshalls)を傘下に持つTJXカンパニーズ(TJX Companies)は、四半期の配当を13%引き上げたが、ロスも9%引き上げた。

景気に左右されにくいビジネスモデル

店舗の開設と配当の引き上げは、景気の不透明感を背景にありながらも、オフプライス小売業がこの分野の長期的な成長について楽観的であることを浮き彫りにするものだ。この分野は依然としてインフレやサプライチェーンの制約といった問題に直面しているが、アナリストによると、オフプライスチェーンは従来型の小売業者と比べ、これらの問題からの影響が大幅に少ないという。

サイズモアキャピタル(Sizemore Capital)の最高投資責任者を務めるチャールズ・ルイス・サイズモア氏は、「これらの業者が直面する問題は本質的に短期的なもので、これは数カ月または数四半期の話だ」と述べている。「彼らは長期的展望について、非常にバラ色の未来を描いているように思える」。

サイズモア氏は、彼らの自信は、四半期ごとの配当増加にもっともよく表れていると語る。企業は一般的に、自社の中長期的な成長に確信が持てない限り、配当を増やそうとはしない。同氏は、もしこれらの企業が最終的に配当を減らすことになれば、それは「企業が広報活動として行えるなかで最悪の行為のひとつ」だと述べている。

ロスの第4四半期の売上高は50億ドル(約5800億円)で、既存店売上高は2019年の同じ期間よりも9%増加した。TJXの第4四半期の純売上高は2年前より14%増加し、139億ドル(約1兆6100億円)に達した。一方で、米国でのオープンのみの既存店売上高(2021年第4四半期と、2年前の同じ期間で店舗が開いていた日数における売上を指す)は13%増加した。バーリントンの第4四半期の総売上高は2年前に比べて18%増加し、既存店売上高は6%増加した。

短期的な障害

オフプライス企業の先行きは比較的明るいものに思えるが、前の四半期にほかの小売業者を苦しめたいくつかの問題については、やはり重圧を感じている。

多くのオフプライス企業は、自社商品のうち海外から調達している割合は少ない(バーリントンが米国外から輸入している商品はわずか6%)が、トラック運転手の不足から、国内でサプライチェーンの問題に直面していると、サイズモア氏は語る。米国トラック協会(American Trucking Associations)によれば、米国では2021年に8万人のトラック運転手が不足した。現在の傾向からすると、2030年には16万人以上のトラック運転手が不足する可能性があることが、ATAのデータから示唆されている。

サイズモア氏は次のように述べている。「これらの小売企業は、必ずしもアジアなどの地域から大量の衣服を調達しているわけではないので、百貨店やモールよりも問題が少ない。しかし国内だけでも、トラック運転手を見つけるためには苦労するだろう」。

さらに小売業従事者の獲得競争も激しく、ロスの最高執行責任者を務めるマイケル・ハートソーン氏は「今後も非常に厳しい状況が続く」と述べ、なかでも倉庫作業の労働者の獲得競争がもっとも激しいとしている。

インフレも、オフプライス企業に影響を及ぼしつつある。T.J.マックスは価値を重視した商品で知られているにもかかわらず、一部の高級ブランドの値上げを11月に発表した。ただし同社は、どの商品を値上げするのかを明らかにしていない。バーリントンのCEOを務めるマイケル・オサリバン氏は、物価のインフレが「本格化」することから、2022年の小売支出は予測不可能になる可能性があると語っている。

経済的な不確実性のなかで成長するには

ただし、予測不可能なことは、通常、オフプライス企業にとって有利に働くとサリバン氏は語る。そうなれば、バーリントンはそれを活かす用意があるとしている。

ほかの小売業者が商品を確保するために苦労しているなか、TJXのCFOを務めるスコット・ゴールデンバーグ氏は、同社の在庫状況は「理想的」だといい、新しい春用の商品を発売するのに適切な状況にあると付け加えている。

低価格で優れた商品を入手できることは、オフプライス企業に熱心な顧客が戻ってくる理由でもあると、プレイサーエーアイ(Placer.ai)のマーケティング担当バイスプレジデントを務めるイーサン・チェルノフスキー氏は語る。同氏は次のように述べている。「我々はこの分野を適切に評価していないのではないかと考えることがある。単に値下げした商品を持っていることだけが重要なのではない。重要なのは、優れた商品を値下げするということだ。そのようなときに魔法が起きる」。

アナリストによると、今後数カ月のあいだに、消費者は財布のやりくりを考えて、従来のアパレル店舗で買い物をするよりも、ディスカウントストアでバーゲン品を買いあさるようになるかもしないという。

チェルノフスキー氏は、この経済状況のなかで成長する能力は、オフプライス業態のビジネスモデルの強さを物語っているという。「これらの業者は、彼らにとって理論上は史上最悪のシナリオであるはずの状況でも、回復力があることが証明されたのだ」。

[原文:Off-price retailers signal a ‘very rosy’ outlook in earnings calls]

Maria Monteros(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via T.J. Maxx

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