オリンピック選手 ショーン・ホワイト 氏が自身のブランドをローンチをした理由

DIGIDAY

オリンピックのスノーボーダー、ショーン・ホワイト氏は、今年の2月に競技を引退した。現在、自身のブランドとなるホワイトスペース(Whitespace)をローンチした彼は、新たなベンチャーに目を向けている。

ブランド名に込めた無限の可能性と創造性への想い

ホワイトスペースは、当初は2月に開催された北京オリンピックの最中にソフトローンチしたが、10月17日に新しい衣類とギアで正式にデビューを果たした。このアスレチックブランドには、3Lパフォーマンス3イン1シェルパ・ジャケット(3L Performance 3-in-1 Sherpa Jacket、499ドル/約7万3700円)、シグネチャーパフィーベスト(Signature Puffy、299ドル/約4万4160円)、メリノサーマルベースレイヤーモックネックセーター(Merino Thermal Base Layer Mock Neck、119ドル/約1万7580円)などのアイテムがある。もちろん3種類のオプションがあるスノーボード(550ドル〜595ドル/約8万1230円〜約8万7880円)やゴーグル(74ドル~289ドル/約1万1000円〜約4万2680円)も扱う。ホワイトスペースは、アウトドア小売のバックカントリー(Backcountry)で独占販売される。ブランド名の由来は、ホワイト氏の名前にちなんではいるが、そこには無限の可能性と創造性を表現したいという想いもあった。多くのルールに縛られないスノーボード自体がそうしたことを体現しているから、とホワイト氏は語る。また、彼の得意技であるダブルマックツイスト1260などのように、スノーボードでは独自の技を開発することが奨励されている。

アスリートとしての自分らしさを打ち出す

ホワイト氏はオリンピックを最後にプロスノーボーダーから引退したが、この過渡期にホワイトスペースに取り組んでいることが役に立っているという。ホワイトスペースのボードとギアをテストするためスイスに滞在中のホワイト氏がGlossyの取材に応じ、このブランドが競技のスリルに代わることはないにしても、人生の次のフェーズを築きながら仕事をすることには「純粋な楽しさ」と充実感があると話した。彼はそのキャリアにおいて、オリンピックに5回出場、ハーフパイプで3回金メダルを獲得している。スノーボーダーとしては、X Games(エックスゲームズ)の金メダル数およびオリンピック金メダル数の世界記録の保持者だ。

「ほかのブランドと何年か仕事をしてみて、アスリートとしての自分の仕事は、たとえばカラーパレットやロゴ、スローガン、動画コンテンツといった、そのブランドの型にうまくはまりながらも自分らしくあろうとすることだと気づいた」とホワイト氏は言う。「でもゼロから何かをする場合、それは自分の型であり、企業が決めたことにひとつひとつ合わせていく必要はない」。

ホワイト氏は、トニー・ホーク氏とジェイク・バートン・カーペンター氏のレガシーからインスピレーションを受けたという。いずれも自分のブランドを立ち上げたアスリートだ。ホーク氏はスケートボードブランドのバードハウス(Bird House)を創業、カーペンター氏はバートンスノーボード(Burton Snowboard)を創業し、現代のスノーボードの発明者のひとりとみなされている。

日常でも着られるスタイリッシュで高機能のスポーツウェア

5歳でスノーボードを始めたホワイト氏は、製品開発を大いに楽しんでいる。彼はボードに使用するさまざまな種類の木材の選定や、ボードのフレックスやコア素材のテストなど、ホワイトスペースのボードやギアのありとあらゆる側面に関与している。ボードの品質や競合他社とどのように差をつけるかといったことだけでなく、ホワイトスペースのデザインやブランディングにも関心を持っているという。スノーボード板のソールの中央には1本の太い白い線が入っているが、これは彼がホワイトスペース以前に、スポンサー契約から解放されて自分用のスノーボードを作ってもらったときに生まれたものだ。もっとも速いソールの素材は黒だったが、ホワイト氏はそれではつまらないと思い、中央に白い線を入れるように頼んだのだ。いかなる名称も派手な柄も入っていない洗練されたデザインであり、彼のファッションに対する審美眼を物語っている。

またホワイト氏は、旅行に行くときに何を持っていくかを自分に問い、それをウェアの開発のヒントにしている。アイテムは濡れても保温性が高く、雪の中で活動した後は簡単に脱げるようにデザインされている。ジャケットの下に着用するベースレイヤーは、スタイリッシュかつカジュアルなコーディネーションとして1枚でも着ることが可能だ。

「日常生活で気軽に着られてライディングにも十分に適した品質の、普遍的なものを作りたかった。自分のライディングスタイルでは性能が必要だった」とホワイトは述べた。

ヴァージル・アブローからアドバイスを受ける

2020年、カリフォルニア州マンモス・マウンテンでスノーボードをしていたとき、「頭からつま先まで」ルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)を身につけた別のライダーがホワイト氏の目に留まった。その人物とは、当時ルイ・ヴィトンと自身のブランドであるオフホワイト(Off-White)のクリエイティブ・ディレクターを務めていたヴァージル・アブロー氏である。2021年11月に亡くなったアブロー氏とホワイト氏は意気投合し、ホワイト氏は自分のブランドを立ち上げたいという思いをアブロー氏に伝えた。アブロー氏は、自分のビジョンに自信を与えてくれたと彼は振り返る。また、スノーボードブランドであることとは別に、ホワイトスペースのストーリーをどのように表現するのがベストなのかもアドバイスしてくれたのだという。ホワイトスペースが進化していくにつれて、ホワイト氏は同ブランドがスノーボードの枠を超え、ほかのスポーツにも展開していくことを期待している。

人生によい波及効果をもたらすブランドを目指して

ローンチ時は、インフルエンサーやほかのプロのアスリートはマーケティングに関与しないが、後日インフルエンサーとのコラボレーションを計画している。カーペンター氏とバートンスノーボードのレガシーについて話したホワイト氏は、会社として新進気鋭のスノーボーダーと提携することを検討していると述べた。顧客については、ホワイトスペースがスノーボードに挑戦するきっかけとなり、その人の人生によい波及効果をもたらすブランドになることを期待している。

「努力と時間のすべてを製品に費やし、誰かがその製品を楽しんでいる姿を目にすることでつながりが生まれる。それが引退とは対照的に、今の自分に必要なことだ」と彼は語った。

ショーン・ホワイト氏への5つの質問

ーーアフタースキー、アフタースノーボードには何をする?

「世界のどこにいるかによる。アスペンとヨーロッパでは少し違うし、自分のホームマウンテンである(カリフォルニアの)スノーサミットだと、週末だけスポーツをする人たちやLAの人たちのパーティがあるので、また違う。でも自分は体を温めて楽にならないといけないので、すぐにレイヤーを脱げるようにしなくてはならない」。

ーーオリンピックメダルはどこに保管している? そして他人にメダルをかけさせることはある?

「メダルは貸金庫に入れている。紛失したら本当に交換できないし、あちこちに飛び回っている生活なので、外に出しておく意味がない。ガールフレンド(女優のニーナ・ドブレフ氏)は、『こんなに長い間一緒にいるのに、メダルはどこにあるの?』って冗談を言う。でもいったん外に出したら、やたらと執着したりはしない。間違いなくみんなの首にかけさせるね。コースターとして出しっぱなしにしておくよっていうジョークをよく言っていた」。

ーーライディングするのに一番気に入っている山はどこ?

「それは答えるのが難しい。ハーフパイプをやるなら、スイスのラークスに行くかもしれない。でも日本の北海道のパウダーランはすごい。パークもパウダーもハーフパイプも楽しめるもっとも選択肢の多い場所なら、カナダのウィスラー・ブラッコム。大好きな場所のひとつだ」。

オリンピックでのキャリアの初期には、長い赤毛だったことで「フライング・トマト」と呼ばれていたが、また髪を伸ばすつもりはある?

「あるかもしれない。カツラを被らされてCMを撮影したことがあって、『これもらっていい?』と聞いたらOKが出たので、それを着けたまま家に帰ったら、彼女も似合うって言ってくれた」。

ーー2011年の映画『ステイ・フレンズ(原題: Friends with Benefits)』では、小さい役を演じているが、また演技をすることは?

「ぜひやりたい。(10月1日の)『SNL』に(ゲスト司会者の)マイルズ・テラー氏のために出席したら、飛び入り参加したいかと聞かれた。自分が成果を出せるかどうかというプレッシャーがかかるという点で、競技にとても似ているスリルがある。今は時間があるので、もちろんもっとやってみたい。でも、自分自身を演じるのではないものがいいな。意地悪だったりうぬぼれていたりといった、変なバージョンの自分を演じるようにいつも言われるから。それよりも、店員のような、無名のその辺にいるキャラクターになりたい」。

[原文:Olympian Shaun White on launching his own brand: ‘It’s what I need right now’]

EMMA SANDLER(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)

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