「十分な報酬が得られない仕事に人生を捧げたくない」: ゲーム・eスポーツ メディア業界人たちの告白

DIGIDAY

ゲームやeスポーツ分野のメディア企業は、気まぐれなオーディエンスの行動や収益性の問題の影響で、従業員の解雇やレイオフを続けている。その最近の例が、動画コンテンツ・ネットワークのG4だ。10月16日、コムキャスト・スペクテーター(Comcast Spectacor)のCEOであるデイヴ・スコット氏は、2021年11月の再ローンチから1年も経たないうちにG4の閉鎖を発表する声明を発表した。

米DIGIDAYでは、ゲームメディアやeスポーツメディアにおける最近の大量解雇の流れを報道してきた。そのニュースを追ってきた人々にとって、このニュースは衝撃的なものではないだろう。しかし、一部の業界観測筋は、G4では9月中旬にレイオフが行われたばかりであり、そこからの急速な衰退に驚いているかもしれない。実際、9月30日には、G4とコムキャスト・スペクテーターの最高収益責任者であるジョシュ・セラ氏が、ネットワークへの影響について質問された際に、レイオフは「何も影響しない」とDIGIDAYに語っている。

G4の終焉は、ゲームおよびeスポーツメディア業界全体で現在起きている大きな縮小傾向を反映している。景気後退が起こるかもしれない、という状況の中、不採算なメディア事業は閉鎖されたり、この分野で利益を上げている少数の大企業に買収を持ちかけたりしている。そして、多くの人の予想通り、この状況で被害を受けているのは従業員たちである。

解雇を受けたゲームやeスポーツのメディア関係者は、業界で起きている問題についてどう考えているのか。DIGIDAYはG4を含む幅広いゲームメディア企業で働いていた7人の解雇されたライター、編集者、プロデューサーに、匿名を条件に業界の裏側について赤裸々に語ってもらう「告白」シリーズに登場してもらった(この記事では、G4だけでなく、ここ数カ月の間にゲームメディア全体で発生したレイオフに関するさまざまな見解を紹介する)。

以下のインタビューは、読みやすさのために編集および要約されている。

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元eスポーツライターが業界を去った理由

(業界を去った理由としては)主に、この業界が本当に最悪だということ。それ以上の言い方は思いつかない。読者層とアルゴリズムの両方が、ライターに要求する投資と時間、そしてエネルギー量はその見返りに合っていない。自分の生活の非常に大きな部分を捧げるのに対して、そこから得られる感謝の気持ち、ビューワー、報酬が見合っているとは思えなかった。

私はeスポーツが大好きだが、十分な報酬が得られない仕事に人生を捧げたくない。もっと別のことをしたい。

ビデオ・プロデューサーが語る、高品質eスポーツ・コンテンツの視聴率

再生回数、視聴者の数が非常に小さいわけではない。(ゲーム・eスポーツ分野のコンテンツを)楽しんでいる人は確かにいた。しかし、コンテンツ制作に投入される人員を正当化するには十分な数ではなかった。もっと小さなチームの人や、自作でやっているクリエーターたちが、ずっと多くのビュー数を得ていたりする。

つまり、必ずしも再生数が足りなかったわけではなく、動画の制作体制に対して再生数が足りなかっただけなのかもしれない。

エディターが語る、ゲームメディアにおける経営陣のマネージメント失敗

(ゲーム分野以外も管轄する、上のレベルの管理職たち)はゲーム、eスポーツ分野の仕組みを根本的に理解していなかった。彼らはそもそも何を達成したいのか、ゲーム関連の動画ウェブサイトの成功がどのようなものになるのかを全く知らなかった。我々のオーディエンスがどのようなものか、私たちのコミュニティがどのようなものかを知らなかった。

ほとんどの(上級管理職)にとって、それはエクセルの表計算の項目の一つに過ぎなかった。最終的には、「おい、この項目(オーディエンス)は何だ? 不要そうだし、この項目、削除してしまえばいいんじゃないか」と言って、実行してしまった形だ。

長年のフリーライターが語る、メンターシップの欠如とこの分野での成長機会

eスポーツ業界ではフリーランサーのトレーニングにリソースを費やすことはできない。(会社としては)それは社員として働いているスタッフのためにしなければならないことだ。

フリーランサーにとって、人を訓練する責任はない。記事を公開する必要があるため、編集者として(ほかのフリーランサーを)編集、指導、トレーニングを行うには十分な時間がない。記事を公開する必要があるときに、誰かと1〜2時間記事についてやり取りすることはできない。

元eスポーツ編集者が語る、安いフリーランス報酬と仕事の種類

仕事の内容は、(安い報酬でも)引き受ける人材(ライター)を反映していると感じた。私の仕事のほとんどは、(そういったライターたちが起こす)すべてのエラーを細かく管理することに感じられた。低料金でも働く人というのは、何らかの形で情熱を理由に仕事をしている人たちだ。

ちなみに、私は必ずしも良い意味で「情熱」という言葉を使っていない。熱意が大きいと、衝突を生むことがある。私が仕事を始めた頃、ゲーム(広報)のメールを記事コンテンツとして活用するアイデアは、却下するものもあった。そのことに明らかに不満を感じていた人がいて、熱のこもった議論になったこともあった。また我々から高評価をもらうために、自分自身の健康や幸せを常に犠牲にしていた人物もいた。

ベテランのフリーライターが語る、ゲームメディア業界に存在する社会的不平等

この業界の流れの中で解雇されたのは全て有色人種かトランスジェンダーだった。一人残らず。白人は誰も解雇されなかった。私が一緒に働いてきた人々のなかでも、午前3時に私にメッセージを送ってきたり、勤務時間外にも仕事をするようハラスメントしてきたりするような、能力不足の白人男性たちは全員昇進した。

フリーランサーが語る、業界に大量に存在する無給の仕事

業界で働いていた時、私は全力で求められている以上のことをした。私を解雇した理由の一つは「あなたが提供したトレーニング内容からは私たちにとって有意義な利益は生まれていない。そのため、(解雇すること)は経済的に理に適った判断だ」というものだった。

しかし、私が提供したトレーニングやガイドというのは、勤務時間外で行ったものだった。彼らのためにアクセシビリティ・サービスやクイア(多様性、公平性、包摂性)関連のトレーニングをした。私は好きなチームが成功するのを見たい人間なので、単純に善意からそれを行った。しかし、これらの多くの高価な(トレーニング関連の)仕事を無料で提供していたが、彼らは私を切ることは彼らにとって意義があると言っていた。

[原文:‘I love esports a lot, but I do not want to give up my life’: Seven confessions from inside gaming and esports media

Alexander Lee(翻訳:塚本 紺、編集:分島翔平)

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