Amazonが今年2回目のプライムデー開催:厳しいホリデー商戦に備えて大幅割引を行ったブランドたち

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Amazonの2回目のプライムデーが10月12日に終了し、ホリデーショッピングシーズンが従来よりも早く幕を開けた。

Amazonによれば、プライムアーリーアクセスセール(Prime Early Access Sale)の期間中に1億点以上の商品が販売された。しかし、これらの数字は、7月12日から7月13日までに3倍の商品が販売されたAmazonの夏のプライムデーとは比べものにならない。

それでも、今回の48時間の秋のイベントでは、玩具、家庭用品、美容・パーソナルケア用品、アパレル、電子機器などの分野で堅調な売れ行きを示したと、Amazonは語る。顧客は、割引されたペロトン(Peloton)の自転車や、Appleの2年前のMacbook Air M1ラップトップを買い求めた。さらに、アパレルへの需要も急増した。

Amazonワールドワイドストア(Amazon Worldwide Stores)のCEOを務めるダグ・へリントン氏は、企業声明で次のように述べた。「当社のプライムアーリーアクセスセールはホリデーに向けた最高の滑り出しとなったが、もっとも素晴らしい点は、これがまだ最初の段階にすぎないということだ。顧客はこのシーズン中、何百万もの重要なお買い得品を見つけることができ、大切な人へのプレゼント代を節約し続けることができるだろう」。

ホリデー商戦の売上を危惧するブランドたち

アドビ(Adobe)は、今年のオンラインホリデーの売上額が2097億ドル(約31兆2000億円)に達すると予測している。これは昨年より2.5%の増加だ。しかし、同社はオクトーバープライム(October Prime)イベントがサイバーウイーク(Cyber Week)の業績に影響する可能性があると警告している。「今年のホリデーシーズンは、10月の早期割引によって、サイバーウィーク前後に発生するはずだった支出が引き上げられるたため、これまでとは様相が異なるだろう」と、アドビの成長マーケティングおよびインサイト担当バイスプレジデントを務めるパトリック・ブラウン氏は語る。このプライムデーの最初の結果は、ブランドがホリデーの売上を失うことを危惧していることを示唆している。多くのブランドは、第4四半期の売上が成長しないことを望まなかったため、早い段階で参加し、大幅な割引を行ったと考えられる。

ブランドと代理店は、全体として、新しいイベントが完全な失敗というわけではなかったと語っている。多くのブランドは、売上の健全な増加を見せた。一部の出品者はこの機会に従来よりも大幅な割引を行ったが、これは過剰在庫をさばき、ホリデーの売上額を水増しする試みだった可能性が高い。

eコマースアクセラレーターのパターン(Pattern)で広告担当のアソシエートディレクターを務めるターナ・コーファー氏は次のように述べている。「多くのブランドと出品者は、アーリーアクセスセールが7月のプライムデーに相当する需要の高まりを示したことに勇気づけられたと思う。これまでのところ、コンバージョン率は、ほかのプライムイベントのときに見られたものとほとんど同じだ」。

ペロトンは過剰在庫を放出

歯磨き粉ブランドのベター・アンド・ベター(Better & Better)の共同創設者でCMOを務めるメアリー・コスタ氏は、この2回目のプライムデーが、旗艦イベントである夏のプライムデーほどの効果はなかったが、顧客は割引を利用してさまざまなアイテムを買い求めたと語っている。「1日の平均売上が60%増加した。この新しいプロモーションイベントは、従来のAmazonプライムデーのプロモーションや、ブラックフライデー(Black Friday)とサイバーマンデー(Cyber Monday)ほどの影響はなかった。トラフィックの増加は控えめで、収益を増やした要因はコンバージョン率だった」と、同氏は付け加えている。

Amazonは、特にこれまで同社のプラットフォームで販売されていなかった新しいブランドを紹介するためにこのプライムデーを活用してきた。たとえば、eコマースソフトウェアプロバイダのプロフィテロ(Profitero)でインサイト担当バイスプレジデントを務めるアンドリュー・パール氏は、Amazonが最近デビューしたペロトンの商品ラインを積極的に宣伝していたと語る。「Amazonはプライムアーリーアクセスを利用して、プロモーションと認知度を高めている。これはAmazonからの独占的な注力のようで、ペロトンの自転車用シューズ、フリーウエイトなどのアパレルとアクセサリが25%、ペロトンの自転車が15%など、めったにない割引が行われた」と、同氏は米モダンリテールへのメールによる回答で述べた。

ペロトンは8月、過剰在庫の処分と損失が増え続けるなかでの資金調達のため、スポーツ用品、ギア、アクセサリをAmazonで販売しはじめた。

買い物客の支出は増加

一方、2回目のプライムデーを利用して、総売上高を伸ばすために大幅割引を行ったブランドもある。パール氏は、コンピュータおよびプリンターのメーカーであるHP(エイチピー)が35〜47%の範囲の割引を行ったことを例に挙げ、大幅な割引は一般的なものだったと語る。これにより、HPのほかの商品も、割引なしでもプライムデーに売上が伸びたと、同氏は語る。「HPは、大幅割引を行って結果的に利益をあげたブランドの例だ」と同氏は述べている。HPはAmazonセールの初日、東部標準時間(EST)の10月11日朝11時の時点で、電子機器部門の人気度ランキング(Movers & Shakers)で5位にランクインした。「同社の人気度ランキング最上位のひとつは、プライムのセールに含まれてもいない商品だった。これは、ブランドページへのトラフィックを促進する効果だけでも十分で、場合によっては割引を行う必要もないことを示している」と同氏は述べる。

Amazonは出品者に対してプライムデーに20%割引クーポンの提供を求めているが、一部のブランドはさらに大幅な割引を行っており、これらのブランドが商品をさばくことを強く望んでいることを示している。飲料ブランドのポッピー(Poppi)の創設者で最高ブランド責任者を務めるアリソン・エルスワース氏は、同社商品を30%割り引き、良い結果を残した。「標準の10〜20%の割引と、さらに大幅な割引とでは、買い物客のエンゲージメントと購買意欲がまったく異なる。30%の割引に加えてインサイダー向け特典も提供するのが、ポッピーにとって有効だと証明された」と同氏は述べる。同社は週末の15、16日に売上の3倍増を予測していると、同氏は付け加えた。

セールスフォース(Salesforce)のショッピングデータによると、大幅割引が再開したにもかかわらず、消費者は昨年や一昨年よりも実質的に多くの額を支払った。10月11日と10月12日における秋のプライムイベントの期間中、平均小売販売価格は2021年よりも8%、2020年よりも17%上昇した。2日間のプライムイベントの平均割引率は21%強で、パンデミックが始まって以来、前年比で25%の割引率増加となった。

最終的に、ブランドと出品者は、この新しいイベントが混在した状況において、四半期全体の業績がどのような結果になるかを注視することになるだろうと、パターンのコーファー氏は語っている。

[原文:Second Prime Day results show brands preparing for a difficult holiday period]

VIDHI CHOUDHARY(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Amazon

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