DIGIDAYリサーチ:ファーストパーティデータの重要性は理解しているが活用していない、矛盾を抱えるブランドの実態

DIGIDAY

Cookieレス時代を見据え、ファーストパーティデータの利活用を謳う多様なサービスやソリューションが生まれている。しかし実際のところ、ファーストパーティデータの特性を理解したうえで、利活用に取り組んでいるブランドやパブリッシャーはいまだ多くないようだ。

CX(顧客体験)プラットフォームのKARTEを展開する株式会社プレイドとDIGIDAYが共同で実施したリサーチの結果、こうした事実が見えてきた。今回のリサーチは、ファーストパーティデータの収集・活用状況、利活用に関して感じている課題などについての実態を掴み、ファーストパーティデータ活用の現状についての解像度を上げることを目的とし、ブランドや、パブリッシャー、エージェンシー、ベンダーなど59名を対象にアンケート調査を行ったものだ。

リサーチから見えてきたのは、ファーストパーティデータの重要性は認識しているものの、実際に活用していると答えたブランドが、半数にも満たないという事実だ。2022年内に廃止される予定だったChromeにおけるサードパーティCookieが延命を重ね、2024年後半までは生きながらえることになったことになり、「代替ソリューション」としてのファーストパーティデータに対するブランドの関心は薄れてしまったのか。

しかし、「リサーチの結果を見ると、危機感を持っていることはわかる」と語るのは、株式会社プレイドでプロダクトマーケティングマネージャーを務める武石啓二朗氏だ。「先行して取り組んでいる立場であれば、今回の結果に『遅れ』を感じるかもしれないが、これはブランド各社で対応への進み方に差が生じていると見るのが正確なのではないか」。

その「差」が生まれる原因は何か。そして今後、ブランドはファーストパーティデータとどのように向かい合うべきなのか。今回のリサーチ結果から、武石氏とDIGIDAYが解き明かしていく。

Cookieレス時代への危機感が薄いのか?

今回のリサーチにおいてまず意外に思われたのが、ファーストパーティデータの利用状況だ。「ファーストパーティデータを何らかの形で保有し、利用しているか」(グラフ1)との問いに対し、ブランドの半数以上である58%が「利用していない」と回答している。

<グラフ1>

次に、ファーストパーティデータの重要性についての回答結果を確認しよう。「ファーストパーティデータを利用している」と回答した層に対して、「ファーストパーティデータは自社の事業、業務にとって重要なものだと思うか?」と問いかけた結果、81%が「重要である」、残りの19%が「やや重要である」と答えており、全員がその重要性を認識していることがわかる(グラフ2)。

<グラフ2>

同じ質問について、「ファーストパーティデータを利用していない」と答えた層の回答結果が、グラフ3だ。グラフ3では、全体での集計とともに属性別の結果も掲載した。後続のグラフ4は、ファーストパーティデータを利用していないと回答した人に対して、「今後ファーストパーティデータを収集する予定があるか?」という質問を投げかけた際の回答結果を示したものだ。この層のファーストパーティデータの重要性への認識と、今後の意向を併せて見ていく。

ブランドは、その重要性を概ね認識しているにも関わらず、半数以上が、「今後もファーストパーティデータを収集する予定は「ない」または「わからない」(グラフ4)と回答した。

一方、パブリッシャーは、上記のファーストパーティデータの重要性についての問いに対し、100%が「重要である」と回答した(同グラフ3)。さらに、現在はファーストパーティデータを利用していないパブリッシャーであっても、「今後ファーストパーティデータを収集する予定はあるか?」という質問に対し(同グラフ4)、そのすべてが「今後、収集する予定だ」と回答しているのに比べると、ブランドの意識とは微妙に温度差があるように感じられる。


<グラフ3>


<グラフ4>

とはいえ、ファーストパーティデータを利用しているという回答者に、ファーストパーティデータの収集、活用に関して「課題はあるか?」とそれぞれたずねたところ、いずれの問いにも、何らかの課題を感じていると答えた(1. 課題はない、2. 課題はあまりない、3. やや課題がある、4. 課題がある、という選択肢のうち、3と4を選択)ブランドが半数以上いた。このことから、ブランド全体の空気として、必ずしも危機感が薄れていたり、Cookie廃止のたび重なる延期に乗じて、Cookieレス時代への対応を先延ばしにしているわけでもないように見える。これは「ファーストパーティデータの重要性は理解している」ものの、「収集や活用の方法がわからずに戸惑っている」というブランドの事情を反映したものなのだろうか。

データ利活用に向けた4つのポイント

この点について、武石氏は、「日頃接しているブランドの話を聞くと、ITP(Intelligent Tracking Prevention)についての認識も進んできている。だから、Cookieレスに対する『危機感の欠如』を感じることはあまりない。むしろ、対応の進捗が各社で異なっていると見たほうがよいと思う」と指摘する。その差が生じるポイントとして武石氏があげるのは、以下の4点だ。


ファーストパーティデータ利活用に伴い整理するべきポイント(*画像クリックで拡大)

まず、1の「プライバシーポリシーの修正対応」。広告配信にデータを生かそうとした場合、プライバシーポリシーが、その用途までを含んだものになっていなければならない。そのためには、ブランドの法務部門とマーケターの間でしっかりしたすり合わせができている必要があるが、ここが高いハードルになっていることが少なくないのが実態だ。いわば、スタート地点でつまずいてしまっているということだ。

そして、2、3、4は、データ活用に至るまでのシステム構築に関する要素であり、まさにここが、ブランドがもっとも課題であると感じている部分かもしれない。

2の「活用のためのデータ取得方法やその整備」については、データの取得とその保有を進めるためには、いろいろなベンダーが展開しているサービスを利用するにせよ、自社で開発するにせよ、システム構築のために要件定義が必要となる。しかし担当者が一般的なマーケターで、システムに関しては門外漢である場合には、それは難しいだろう。

3の「媒体にデータを繋げるための対応」も、課題となる点については同様だ。データを媒体に送り込む方法としては、APIで連携したり、スプレッドシート経由で連携するなどいろいろある。しかし、そのためにはバッチ処理の制御が必要になる場合もある。また連携の前提として、媒体側にデータ形式を合わせるために「電話番号の前に+81をつけて国際電話の形式にする」などのようなデータ加工をしなければならないかもしれない。さらに、データを送る際にはハッシュ化する必要もある。いずれにせよ、マーケターにとっては技術的な壁が高いと言えそうだ。

そして、4の「実装工数」にあるように、そもそも、そのようなシステムを実装するための技術的リソースをどう手配したらよいのか、適した方法が見つけられずにいる可能性があるということだ。

武石啓二朗/株式会社プレイド プロダクトマーケティングマネージャー。慶應義塾大学文学部卒業後、システムインテグレーターを経て、株式会社サイバーエージェント入社。広告運用、DSP事業を経て、子会社でゲーム事業のサービス改善に従事。2015年、株式会社リクルートマーケティングパートナーズに入社後、オンライン動画サービスの事業開発やマーケティング担当部門のマネージャーを歴任。2020年10月、エキサイト株式会社での新規事業立ち上げを経て、2022年3月に株式会社プレイド入社。

これらのポイントをクリアするためには、当然のことながら相応のリソースとスキルが求められるし、それを満たすブランドは、そう多くはないだろう。武石氏もこう述べる。

「ブランド側には、Cookieレスへの危機感はあるはず。それにもかかわらず対応が遅れてしまうのは、ファーストパーティデータ活用に向けた技術的なマイルストーンそのものが見えていないからではないか。いったい何をするべきなのか、頭を痛めているブランドは少なくないはずだ」。

ファーストパーティデータは「顧客理解」の起点

<グラフ5>

ではブランドは、ファーストパーティデータをどのように活用しようと考えているのか。「収集したファーストパーティデータを活用している分野は何か?」という設問(グラフ5)に対しては、広告やマーケティングオートメーションであるという回答が中心だった。これは予想通りとも言えるが、もうひとつ興味深いのが、ファーストパーティデータを活用するなかで、「課題だと感じている点は何か?」という問い(グラフ6)に対し、「利活用のプランニングができていない」という回答も見られることだ。これらから感じられるのは、ファーストパーティデータは、サードパーティとは異なる新たな活用方法があるように感じているものの、具体的な方法が見えていないため、ひとまず「サードパーティの代替」と捉えられているのではないか? ということだ。


<グラフ6>

同じ問いに対し、パブリッシャーの立場は明快だ。「データ活用の分野」については、広告やサブスクなど収益に直結したもので、その上で、「データ活用における課題」については、「現時点で投資に見合うリターンが得られていない」という、極めて実用的な、利活用の結果を踏まえた課題をあげている。ブランドとは対照的なのだ。

この点について、武石氏はこう述べる。「収集しているデータの種類についての回答を見る限り、ファーストパーティデータの特性について一定の理解は進んでいるように思う。ただ、活用において課題があると感じるのであれば、ファーストパーティデータを使って顧客理解を深めることから始めるべきだ」。

サードパーティデータの代替ではないことを認識する

そもそもファーストパーティデータの特徴は、自社商品やサービスに関心のあるユーザーについてのデータであり、その信頼性も高いということがある。そして、サイト内とサイト外という2つの場面で利用されるが、前者では、マーケティング促進やユーザーの利便性の向上などが目的であり、後者であれば、広告配信などコミュニケーションでの活用が中心となっていることが多いと思われる。

「サードパーティCookie廃止による、広告配信の際のデータ利用」という文脈で見れば、ファーストパーティデータもサードパーティデータと変わるところはないように思えるが、ここで思い返す必要があるのが、ファーストパーティデータの特性だ。デモグラフィックデータはもちろんのこと、サイト内での行動や購入履歴など、顧客と自社との関わりがすべてわかるのが、ファーストパーティデータだといっても過言ではない。

広告配信での利用という側面では、たしかにサードパーティデータと同質だが、サードパーティデータの目標が「より多くの集客」だとすれば、ファーストパーティデータによって実現できるのは、「顧客理解を通じた、自社の目的に沿うユーザーの集客」とも言える。外部とのコミュニケーションを進めるうえで、顧客からの適切な同意を前提にファーストパーティデータを活用する意味は、そこにある。

そのために起点とすべきことは、ファーストパーティデータを分析し、顧客解像度を高めることだ。見えてきた重要な顧客と適切なコミュニケーションをとるためにはどのようなプランが必要になるか、そのプランを実現するためにはどのようなターゲットに対してどのようなメッセージを届けることが最適解なのか、そして、その解を導くために必要なデータは何なのかを理解する必要がある。

このように活用プランを決めたうえで、演繹(えき)的にデータの収集や整備を進めていくことで、ファーストパーティデータを収集する目的もわかってくるのだ。そこで、その目的を実現するためには、「収集と活用の間にある、蓄積・分析・加工・最適化というプロセスが非常に重要だ」と武石氏は述べる。

「このプロセスを最適なものにするためには、社内組織の見直しが求められる場合もあるだろう。集客担当チームとデータ担当チームの密接な連携が必要であり、これらを統制して推進する専任担当者も欠かせない。重要なのは、各部門の担当者が一堂に会して、収集したデータを見ながら議論を進めていける環境をつくることだ」。

ファーストパーティデータに求められる「規模」と「質」

<グラフ7>

ファーストパーティデータを利用していないと答えた人に、「現時点でファーストパーティーデータを利用していない理由は何ですか?」とたずねたところ(グラフ7)、ブランドの回答として目立つのが、「利用可能な規模のデータを収集できない」ということだ。パブリッシャーであれば、広告ターゲティングのためにデータ規模が重視されることも理解できるが、ブランドの場合、「規模」よりも、リテンションにつながる施策が重視されるべきと思える。それでも、ファーストパーティデータの「規模」は不可欠なのだろうか。

この点について、武石氏の見解は明確だ。「一定以上の規模は必要だと思う。具体的な数値は媒体によるが、媒体に送るデータにも一定量のボリュームが求められるためだ」。武石氏によれば、Googleの場合であれば、配信時のマッチ率を考えると1万〜2万のリストは必要となる。ただし、と武石氏は続ける。「今までの話と関連するが、重要なのは規模よりもデータの質だ」。

たとえば、累計で10万円以上購入している顧客をターゲティングしようとした場合、その顧客が1週間以内にサイトにアクセスしているのか、あるいは半年以上アクセスがないのかでは、コミュニケーションも当然変わってくる。しかし、単純に「購入金額10万円以上」で絞り込みをかけたのでは、そこまでは見えてこない。もしもRFM分析などで顧客理解が進んでいれば、分析データをそのまま媒体に流すこともできる。これが「規模」よりも「質」ということの意味だ。

ファーストパーティデータ活用の本来的な意義は顧客理解にあるという本旨に沿えば、規模は重要であるものの、目的に沿ってデータを分析し、それを保持、活用することのほうが重要だということも理解できるだろう。

繰り返しになるが、ファーストパーティデータを顧客理解の起点ととらえ、そのうえで自社が進めるべきコミュニケーションと目的を明確そのために必要なデータを、顧客から適切に同意を得て収集・分析していく。このような姿勢が、ファーストパーティデータの活用には重要となる。

サードパーティCookieの廃止時期がなし崩し的に伸びているとはいえ、いずれCookieレスな世界は現実のものになる。さまざまな課題を抱え「ファーストパーティデータの活用」がスローガンにとどまっているブランドに向け、武石氏は、次のように語る。

「ファーストパーティデータの活用と、さらにサイト内外で一気通貫した顧客体験を実現するのが、KARTEであり、KARTE Signalsだ。KARTEは、サイト上での顧客の動きをリアルタイムで把握し、さらに具体的なアクションにつなぐことができる。そして、そこで収集したファーストパーティデータを、KARTE Signalsを使って媒体とつなぎ、適切なコミュニケーションを実現する。これらによって、顧客とブランドの強固な関係性が構築できるのだ」。

「ファーストパーティデータの活用と、さらにサイト内外で一気通貫した顧客体験を実現するのが、KARTEであり、KARTE Signalsだ。KARTEは、サイト上での顧客の動きをリアルタイムで把握し、さらに具体的なアクションにつなぐことができる。そこで解析収集したファーストパーティデータを、KARTE Signalsを使って媒体とつなぎ、適切なコミュニケーションを実現する。これらによって、顧客とブランドの強固な関係性が構築できる。プロダクトとしてのKARTEと、その展開を通して蓄積している知見がプレイドの強み。ブランドとしてはデータ活用自体がチャレンジになる場合も多いと思うが、我々をパートナーとして是非とも検討していただければ幸いだ」。

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Sponsored by 株式会社プレイド

Written by DIGIDAY Brand STUDIO(滝口雅志)
Photo by 渡部幸和

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