オムニコムは データクリーンルーム の課題をどう理解しているか:「相互運用性の標準化が鍵となる」

DIGIDAY

プログラマティック広告業界は、Cookieベースの時代から、データクリーンルームの時代へと移行しつつある。しかし、この移行を管理するのは容易でない。パブリッシャーたちは潜在的な課題の複雑さに早くも気後れを感じているマーケターたちも同様だ。早晩、ファーストパーティデータをどこにつなぐか選ばなければならず、戸惑いを隠せない。

5月5日にカリフォルニア州パームスプリングスで開催されたDIGIDAY Programmatic Marketing Summitで、オムニコムメディアグループ(Omnicom Media Group)の投資およびアクティベーションアナリティクス担当シニアバイスプレジデントを務めるマーク・ロッセン氏に話を聞いた。同氏は現在の状況を短くまとめてこう述べている。「要はプライバシー保護の規則に則ってデータをひとところに集めるということだが、ここに来て、それは以前よりもずっと複雑になっている」。

いまだに確たる戦略はなし

データクリーンルームといえば、一般的にファーストパーティデータと関連づけられるが、クリーンルームを活用するのに、ファーストパーティデータを保有している必要は必ずしもなく、それがクリーンルームにまつわる複雑さの一例だとロッセン氏は話す。「特に広告主やブランドにとって、ファーストパーティデータを大量に保有しているか否かは問題ではない」と同氏はいう。「問題は、いったいどのような能力を持ち、どのような立ち位置でクリーンルームを活用するのかということだ。広告効果の管理や最適化、特にプランニングや投資に有用な知見の収集など、活用法は多岐にわたる」。

クリーンルームの活用法はパブリッシャーやプラットフォーマー次第だ。彼らはそれぞれのファーストパーティデータをクリーンルームに接続し、広告主がキャンペーンのパフォーマンスを測定したり評価したりできるようにする。セルサイドでは、いまだ確たるクリーンルーム戦略を打ち出せないパブリッシャーがいる一方で、ディズニー(Disney)、Google、メタ(Meta)、NBCユニバーサル(NBCUniversal)などは、広告主やOMGなどのエージェンシーと共同で、クリーンルームを展開したり、試験運用を開始したりしている。

「大手のパブリッシャーは、いずれも独自のクリーンルーム環境を構築するだろう」とロッセン氏は述べている。一部のパブリッシャーは、ハブ(Habu)、インフォサム(InfoSum)、スノーフレイク(Snowflake)ら、クリーンルームを提供するベンダーの活用を考えており、この場合、パブリッシャー間の相互運用性はある程度促進されるだろう。一方で、自前のクリーンルームを構築するパブリッシャーも出てくるだろう。

クリーンルーム同士の接続の是非

もちろん、クリーンルーム構築の選択肢が広がれば、問題も複雑化する。多種多様なクリーンルームに対応する必要が予想され、頭が痛いと訴えるパブリッシャーもすでに現れている。ロッセン氏もこの複雑さをよく承知しているようだ。

「課題は、これら異なるクリーンルームのすべてにどう対応するかということだ。いわゆるウォールドガーデンに投じるメディア予算があり、動画配信サービスやテレビに投じるメディア予算があり、それ以外にもあちこちに予算を投じるとなれば、これらをひとつにまとめてメディア投資の全体像を把握するにはどうすればよいのか。異種のクリーンルームの接続こそ、我々が一致団結して取り組まなければならない次なる課題だろう」と、ロッセン氏は語った。

しかし、異なるクリーンルームをまたいでデータを接続するという考え方は、情報を安全に保管できる場所というクリーンルーム本来の趣旨にそぐわないのではないか。そうではないとロッセン氏は反論する。「趣旨に反するということはない。クリーンルーム本来の目的はデータ権の保護だ」

ブリーフケースに手錠でつなぐ

ロッセン氏はデータを保護するというクリーンルームの機能を、鍵のかかった金属製のブリーフケースを配達人の手首に手錠でつなぐことになぞらえて説明する。この喩えでは、クリーンルームをブリーフケースに、その中身をデータに、配達人をクリーンルームのベンダーに見立てている。

大雑把な喩えではあるが、プライバシー規制や企業各社のプライバシーポリシーに準拠しつつ、ひとつのクリーンルームに保存されたデータを、別のクリーンルームで共有できるような基準が確立されれば、十分に成り立つ喩えだろう。クリーンルームに関する限り、相互運用性をこのレベルで標準化することが、もっとも困難で複雑な課題のように思われる。

「いかなるアイデンティティも使わずに、アナリティクスやアルゴリズムによるマッチングを通じて、現在よりも一段上の、プライバシー規制により厳しく準拠したデータ共有を実現するにはどうしたらよいのか」とロッセン氏は問う。同氏自身も参加するIABテックラボ(IAB Tech Lab)のプライバシー保護技術(PETs)作業部会では、現在この標準化に取り組んでいるという。「具体的にどのようなものになるかはまだ明確ではないが、方向性としてはそういうことだ」。

[原文:How Omnicom Media Group is making sense of clean room complexities

Tim Peterson(翻訳:英じゅんこ、編集:分島翔平)

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