ビーリアル は広告なしで成功する最初のソーシャルアプリとなるか

DIGIDAY

Twitterの敵対的買収からメタ(Meta)の業績に不満を持つ投資家まで、ソーシャルメディアの大御所たちはマーケターにとっての印象を落としている。ブランド幹部たちはソーシャルメディアへの支出に確信を持てず、業界の次のスーパースターを探すのに奔走。そこで注目を集めているのがビーリアル(BeReal)だ。

フランスで設立された、若者向けの新しい画像共有ソーシャルメディアであるビーリアル。同アプリは、この数カ月間でユーザー(正確には月間ユーザー数7350万人)やブランドなどからの関心を集めている。チポートレイ(Chipotle)やe.l.f.コスメティックス(e.l.f.cosmetics)、シェイクシャック(Shake Shack)といったブランドたちが、鉄は熱いうちに打てとばかりに、ビーリアルに参加しているのだ。

ビーリアルは、ほかのソーシャルメディアのようには広告プロダクトを提供していない。その状況で、マーケターから集まった注目を維持するのは難しいだろう。しかし、ビーリアルやそのほかの新進のソーシャルメディアアプリにとって、広告機会の欠如は意図的なものかもしれない。広告をサポートしない形態。これは次世代ソーシャルメディアプラットフォームの新しい時代を表しているのかもしれない。

「歴史的に見て、市場シェアを第一に獲得し、収益化を第二に考えるという運営形態が(ソーシャルメディア業界では)とられてきたように思われる」とメカニズム(Mekanism)のパートナーで最高ソーシャル責任者のブレンダン・ガハン氏は述べた。「私たちが今いるソーシャルメディア業界では、広告収入だけに依存しないようにしようとしている」。

広告費への依存度が下がり、ソーシャルメディアは新たな収入源を模索する

広告費への依存度を減らす傾向は強まっている。ソーシャルメディア上のデジタル広告収入は、「広告価格の上昇」と「粗雑で一貫性のない広告測定」が原因で減少している。逆のいい方をすると、プラットフォーム企業は収益源を早めに多様化し、勢いを維持するためにサブスクリプションやプレミアムコンテンツを活用しようと必死になっている。

新興ソーシャルメディアは、これまではタイミングを図って広告を導入する、といった戦略が取られてきた。たとえば、クラブハウス(Clubhouse)はオーディオベースのアプリで、パンデミックの最中に人気のピークを迎えた。しかし、広告を導入したのが遅すぎたため、この分野で競合し続けることができなかった。

また、TikToKの場合は、同社の提供する広告が物足りないと広告主たちが感じたときに頭打ちになる可能性があった。ただし、同社のグローバル・プロダクトサミットである「TikToKワールド(TikToK World)」で、ショッピング広告や自動化などの新しいパフォーマンスマーケティングツールを多数発表し、広告プロダクトの強化に取り組んでいる。

ソーシャルメディアプラットフォームが経験する、この新しい広告ライフサイクルは、少なくとも部分的には、ソーシャルチャネルのほかのトレンドによって推進されている。

ソーシャルメディアマーケターたちの定番プラットフォームであるメタは、四半期ごとに減益を記録。一方、公表されているレポートによると、YouTubeの広告収入は2019年以来初めて減少した。しばらく前から「イノベーションでトラブルから逃れる」方向性を推進してきたスナップ(Snap)は、5年前の上場以来もっとも低い成長率を記録している。さらにTwitterは、イーロン・マスクに買収されたことで、広告主を震撼させ、その結果、恩恵を受ける広告支出が削減されている。

現在、これらのプラットフォームは、クリエイターと連携するプログラムを強化し、サブスクリプションベースのオプション(Twitterブルー(Twitter Blue)、スナップ+(Snap+)、またTikToKとInstagramにおけるライブショッピングなど)を開発することで、広告への依存を減らす方針転換をしようとしている。

ビーリアルはまず、マーケットのシェア拡大を狙う

ビーリアルはこのような環境で競争しようとしている。広告収益モデルの圧力から自らを守るために、広告以外の収益多様化を奨励する環境だ。

これまでビーリアルの戦略は、スタートしたばかりのほかのソーシャルメディアと似ていた。投資家から多額の資金を調達してユーザーベースを拡大し、「そして数年後にはスイッチを切り替えて、うまくいけばお金を稼ぐことができる」とガハン氏は推測する。

少なくとも投資分野では、ビーリアルは成長モデルに従っている。報道によると、昨年のシリーズA資金調達で3000万ドル(約41億4790万円)を調達し、今年初めのシリーズBラウンドではその倍の6000万ドル(約82億9296万円)を調達した。ビジネスインサイダー(Business Insider)によると、この最後の資金調達ラウンドでビーリアルの評価額は四倍となり、6億ドル(約829億2960万円)を超えるとみられており、アプリの収益化はまだ先のことであることを示唆している。

「彼らはマーケットシェア、成長、(より多くのユーザーへの)露出をまず狙っている。広告のないアプリは、広告を表示するアプリよりも常に、速く市場で成功する」とインフルエンサーマーケティング代理店ルーム・アンロックド(Room Unlocked)のCEO兼創業者であるアレックス・ペイン氏はいう。「彼らが狙う、マスにリーチするユーザーベースに到達したら、(広告)を少しずつ入れ込み始めるだろう」。

依然、広告よりも製品のアップデートに注力

モバイルアプリ分析会社アプトピア(Apptopia)によると、ビーリアルは2019年12月以来4000万回以上ダウンロードされている。成長の大半は今年からで、新規ユーザーの40%近くを米国が占めた。一方、同調査会社によると、昨年のTikToKのダウンロード数は6億5600万回。ただし、ビーリアルの勢いは強く、TikToKとInstagramの両方が同アプリを模倣する機能をリリースした。

業界のマーケターたちは次世代のソーシャルメディアに早く参入しようと必死になっており、当然、ビーリアルに注目を集めている。しかし、ビーリアルの利用規約は広告禁止のポリシーが明記されており、マーケターの参加は言うは易く行うは難しである。

ビーリアルの関心はどうやら別のところにあるようだ。現在、同社はエンジニアや開発者を新規雇用している。9月、テッククランチ(TechCrunch)は「このアプリがインフルエンサー文化を収益化したいと考えており、広告の代わりに有料機能を検討している」と推測した。しかし、ビーリアルは収益化計画について口を閉ざしており、コメントを求められた同社の広報担当者は、「今は製品とミッションに集中している」という。

そのため、ブランドはビーリアルへの投稿を実験してはいるものの、広告支出は確立されたソーシャルチャンネルに投入している。「TikToK、インスタグラム、Facebookは、私たちの生活に非常に深く入り込んでいるため、今でも広告ミックスやコンテンツミックスの一部である。(これらのソーシャルメディアの使用を)やめたという人々もいる一方で、まだプラットフォーム上には人が存在して続けている」とソーシャルメディア代理店ザ・ソーシャル・エレメント(The Social Element)のCEOタマラ・リトルトン氏は述べた。

サービスは模倣されており、イノベーションの課題が重要に

ビーリアルの戦略は、旧来のソーシャルメディア・プラットフォームとは明らかにアプローチが異なっている。従来のプラットフォームでは、ユーザーたちは広告収入を得るために画面をスクロールすることに無限に時間を費やすよう奨励されており、そんなユーザーにリーチするためのものとして、広告収入モデルが好まれてきた。

しかし実際のところ、ビーリアルの本質はユーザーを長期間フィードに留めておくことではない。そんなプラットフォームで何らかのマネタイズを生み出すことは可能なのか、という疑問が残っている。友人に見てもらうための写真を投稿するために、毎日ランダムな時間にユーザーに通知を送信してくるアプリは、広告であれサブスクリプションであれ、マネタイズが可能なのだろうか。

ユーザーが膨大な友人のネットワークを迅速に構築できない限り、このモデルが典型的な広告や、リーチと発見に大きく依存するサブスクリプションモデルに向いているとは(少なくとも現時点では)思えない。

クリエイティブエージェンシー「ビリオン・ダラー・ボーイ(Billion Dollar Boy)」の創業者でグループCEOのエド・イースト氏は、「このアプリに意図的に課された制限が、新鮮で刺激的な、自然発生的なクリエイティビティを促すのではないか」と推測している。そしてZ世代に共鳴したのはまさにその要素である。

ほかのプラットフォームがビーリアルと似たような模倣機能をリリースするようになったため、収益化とユーザーの注目を維持することの両方において、ビーリアル自身のイノベーションの課題が重要となっている。

ビーリアルと同様に、スナップは当初、発見や滞在時間よりも、親密なつながりに基づいたソーシャルメディアプラットフォームであった。しかし、(親密なつながりを重視したことで)利用者が限られたため、広告主との関係はうまくいっておらず、スナップは広告主にとって必需品ではなく、あればプラス、といった存在となっている(詳細はこちら)。安定した資金の流れを維持するため、スナップは方向転換し、プレミアムサブスクリプションのスナップチャット・プラスを開始した。

ソーシャルプラットフォームの広告戦略は、ユーザーとどのような関係を築きたいか、に行き着くことが多い。

マーケターは信頼性を必要としている

今、ソーシャルメディア・プラットフォームを始めることは、ガハン氏がいうように「不安定なポジションになる」。景気低迷に直面しているなかでも広告支出を継続しているマーケティング担当者たちは、ソーシャルメディア広告から離れつつある。CPMの増加や、Apple iOS 14が原因粗悪なターゲティングや測定が原因だ。

マーケティング担当者は信頼性を必要としており、プログラマティック機能によってトラッキングがしやすくなったオーディエンスを持つ、ほかのソーシャルチャネルやストリーミングチャネルに資金を移動している。

「長期的には、ビーリアルは機能であり、スタンドアロンの製品ではないと考えている。広告ビジネスがなければ、この真実性は増す」と、インフルエンサーマーケティング代理店ザ・ソーシャルスタンダードの創業者兼CEOであるジェス・フィリップス氏はいう。「もしネットフリックス(Netflix)とディズニー+(Disney+)ですら広告に対応するのであれば、ビーリアルが永遠に広告を避けることはできないと断言できる」。

しかし、ソーシャルメディアが成熟するにつれ、広告はチャンネルの事業計画全体ではなく、事業計画の一部にすぎなくなるべきだと専門家たちは指摘する。もしそうでなければ、ビーリアルのようなプラットフォームは単なる一時的な失敗に終わる可能性がある。ただし、クリエイティブエージェンシーであるムーバーズ・アンド・シェイカーズ(Movers and Shakers)のCEO兼共同創業者であるエヴァン・ホロウィッツ氏はEメールで、ビーリアルが「有料」になる前に、ブランドはまだ同プラットフォームをテストすべきだと述べた。

「プラットフォームが成熟して混雑すると、ブランドが消費者に到達するのがはるかに難しくなる」とエヴァン氏はいう。彼は「ビーリアルが市場を突破し、より多くのマーケティング機会を創出すれば、広告支出はすぐに後に続くだろう」と付け加えた。

[原文:Could BeReal be the first successful social media channel to grow without ad support?

Kimeko McCoy & Krystal Scanlon(翻訳:塚本 紺、編集:島田涼平)

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