Netflix などのストリーミングサービスがゲームのIPを借用する理由:消費者を惹きつける、価値あるソース

DIGIDAY

Netflixの「サイバーパンク:エッジランナーズ(Cyberpunk: Edgerunners)」など、ゲームにインスパイアされた番組の成功が示すように、ゲームのIPはメディア戦争の主戦場となりつつある。消費者の注目を集めようと、ストリーミングサービスがゲームプラットフォームと直接競い合うようになるにつれ、ゲームのIPは消費者を引きつけるための一貫した価値あるソースになっている。

ゲームとストリーミングコンテンツがクロスオーバーした初期の例には、2019年にNetflixで最初に放送された「ウィッチャー(The Witcher)」がある。これは人気のゲームフランチャイズにも影響を与えたポーランドの書籍シリーズを原作としたものだった。この1年で、小さな流れは洪水となり、「アーケイン(Arcane)」や「サイバーパンク:エッジランナーズ」のように直接ゲームにインスパイアされたシリーズは、Netflixでもっとも視聴される番組のひとつとなっている。

ゲームの知的財産に対する消費者の熱狂的な関心は、ストリーミング配信の数字以外にも影響を及ぼしている。9月に「サイバーパンク:エッジランナーズ」がリリースされた後、「サイバーパンク2077(Cyberpunk 2077)」のアクティビティが急増したことが示すように、ゲームに影響を受けた番組の人気は、ゲームそのものに還元されることがある。ストリーミングサービスとゲーム開発者はともに消費者のマインドシェアを獲得するために、今後もこのようなクロスオーバーコンテンツへの投資を続け、あらゆる恩恵を得ようとしている。

ゲームIPに注力するNetflixの動き

  • 主要なストリーミングサービスのなかで、Netflixはゲームに関して主導権を握っている。2021年、同社はゲーム開発の責任者としてマイク・ベルドゥ氏を採用し、ゲームを同社の継続的な成長にとって重要なものと考えていることを一貫して表明している
  • しかし、Netflixの競合他社もここ数カ月、ゲームのIPにインスパイアされたコンテンツの制作を強化している。注目すべきは、パラマウントプラス(Paramount+)が制作した「リーグ・オブ・レジェンド(League of Legends:以下、LoL)」のシーンをもじったモキュメンタリーシリーズ「プレイヤーズ(Players)」で、ライアットゲームズ(Riot Games)でLoLのeスポーツ部門責任者を務めるナズ・アレタハ氏がエグゼクティブプロデューサーを務めていることだ。
  • スチームDB(SteamDB)などによると、本稿執筆時点で「サイバーパンク2077」はSteam上で9万4000人以上のプレイヤーを誇っている。ここ数カ月のアクティブプレイヤー数は概ね1万~1万5000人に近い水準で推移しており、「サイバーパンク:エッジランナーズ」のリリースを機に、2年前のゲームにかなりの関心が集まっていることがうかがえる。
  • ゲームのIPに基づくストリーミングコンテンツの成功は、ストリーミングプラットフォームとゲーム開発者の双方に恩恵をもたらし、ゲーム開発者が将来、Netflixのようなプラットフォームに対してより自由にプロパティをライセンスしたり、独自のストーリーのコンテンツを制作することを促す可能性がある。2022年9月29日、ライアットゲームズは、かつてNetflixに勤務していたベテランのテレビ業界幹部、マンディ・ベックナー氏を、ライブアクション開発、映画、テレビ部門のグローバル責任者として採用した。(ライアットゲームズの担当者は、この人事の詳細について説明を避けた)。

リスク削減

簡単に言えば、ゲームの文化的影響力は増大しており、ストリーミングプラットフォームは、ゲームのオーディエンスが注目に値する規模に達していることに気づいただけなのかもしれない。

今年初めにアクティビジョン・ブリザード・メディア(Activision Blizzard Media)が発表した、ゲームがメディア消費に与える影響に関するレポートによると、ゲームの消費は常にTVの生放送視聴を上回っており、プライムタイムと深夜の時間帯で、ストリーミングTVがゲームを上回るのは、57%対43%と比較的わずかな差に過ぎず、それ以外の時間帯ではゲームがストリーミングTVに勝っているという。若い年齢層では、当然ながら、ゲームがさらに優勢だ。

既存のIPの映画化はエンターテインメントの世界では目新しいことではないが、ゲームの台頭により、ゲームのIPは、潜在的なリスクから確実な賭けへと変貌を遂げつつある。

オーストラリアのブリスベンにあるクイーンズランド工科大学で、メディア研究の教授を務めるアマンダ・ロッツ氏は次のように話す。「メディア産業は一般的に、『リスクの多いビジネス』と言われる。消費者が欲求するもの、さらには成功やROIを予測することが通常では難しいからだ。また、サンクコスト(埋没費用)やファーストコピーコストが非常に高い産業であり、何かを得る前にほとんどすべての費用を費やさねばならない。こうした状況への対応として、既知のもの、既知の人材、特に既知のIPに頼ることでリスクを低減しようとする。だからこそ、以前よりIPがリスク削減のために使われてきたのだ」

ゲームのIPのもうひとつの側面

ストリーミングサービスが、ゲームのIPにインスパイアされたコンテンツの制作に慣れてくると、次のステップとして、ゲームライブストリーミングのインフルエンサーやコンテンツクリエイターに食い込んでくる可能性がある。

ゲームやeスポーツでは、消費者の注目や嗜好が著名なインフルエンサー個人に左右されることが多くなっており、ストリーマーはすでにTwitch(ツイッチ)やYouTubeなどのプラットフォームと有利な独占契約を結んでいる。Netflixのようなストリーミングサービスがクリエイターと同様の契約を結び、この急速に成長しつつある全く異質のゲームのIPの側面を探求し始めるのは時間の問題だろう。

ゲーム動画コンテンツネットワーク、G4の最高売上責任者(CRO)、ジョシュ・セラ氏はこう語る。「オーディエンスは文字通り、我々の目の前でリアルタイムに進化しており、1年前に彼らが好んだものは、すでに変わっていると思う。我々は、Twitchのスターたちに実際に関わってもらうことで、その最前線に立っている」

[原文:Why Netflix, Paramount+ and other streaming services are borrowing from gaming IP as the media wars heat up

Alexander Lee(翻訳:藤原聡美/ガリレオ、編集:分島翔平)

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