ストリーミングサービス がオリジナル番組制作者と広告収益を分配したら?

DIGIDAY

大手の広告付きストリーミングサービスが、オリジナルコンテンツの制作者と広告収益を分け合うモデルを導入するとどうなるか。本稿では、このアイデアについて考察してみたい。

収益分配モデルに現実味はあるか

もしも、台頭するプレミアムな広告付きストリーミングが、緊縮経営の時代を迎えるエンターテインメント業界と出合うことで、オリジナル番組の新たなビジネスモデルが生まれるとしたらどうだろうか? そして、そのビジネスモデルが実はそれほど新しいものではなく、劇場用映画とYouTubeが出合って生まれたモデルの再現だとしたら?

その結果、Netflixのようなストリーミングサービスが、オリジナル番組や映画の制作に起用している企業と広告収益を分け合うことにしたら?

素直には歓迎できない話だろう。デジタル動画の制作者たちは、YouTubeやFacebook、Snapchatの広告収益分配プログラムが収入源として当てにならないこと、そのせいで動画制作にあまり予算をかけられないことに不満を抱いている。これらの制作者が、Netflix、Hulu、HBOマックス(HBO Max)など、多額の予算を前払いで負担してくれる大手ストリーミングサービスにプロジェクトを売り込もうとするのはそのためだ。

「潤沢な資金」は今や昔

しかし、その高額な前払い金が脅かされている。ワーナー・ブラザース・ディスカバリー(Warner Bros. Discovery)は30億ドル(約4160億円)のコスト削減を目指しており、それがHBOにおける開発の凍結レイオフにつながっている。ディズニー(Disney)の新しい物言う投資家サード・ポイント(Third Point)も、同社に同様のコスト削減を迫っている

さらには、より小規模なオリジナル番組配信企業でさえ、費用対効果を分析するようになっている。たとえばRoku(ロク)は、無料の広告付きストリーミングTVサービス「Rokuチャンネル(The Roku Channel)」の番組制作費に目を向け始め、チャーター(Charter)は、制作費の増加に伴いオリジナル番組事業から撤退することを選択した。

それに加えて、インフレ率の上昇、金利の上昇、サプライチェーンの制約、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)関連コストの継続などが制作費の増加につながっている。

これらの財務的要因から、すでにNetflixやCNNフィルムズ(CNN Films)などは共同出資のプロジェクトに前向きになっている。しかし共同出資モデルでは、プロジェクトの権利の一部が、当該プロジェクトの制作者に戻ることになり、ストリーミング事業者が知的財産権を活用して商品を販売したり、映画や番組をベースにしたテーマパークのアトラクションを制作したりする際の妨げとなりかねない。

あるエンターテインメント業界の幹部は、「コンテンツを360度の角度から見ている企業は、すべての権利を手に入れたがるので、基本的に共同出資には興味が薄いだろう」と話す。

リスクを抱える可能性

それなら、デジタル動画プラットフォームが行ったように、オリジナル番組に収益分配モデルを取り入れることで、ビジネスモデルをもう少し拡大するのはどうだろうか。ストリーミング事業者がプロジェクトの制作費として一定額を前払いし、残りを制作会社が負担し、番組や映画で流れる広告からの収益を分配することで、双方が資金を回収するのだ。

このモデルは、デジタル動画プラットフォームにヒントを得たものだが、それと同時に、制作会社が受け取る前払いを減らす代わりに、劇場チケット販売収益の一定割合を受け取ることができる映画のシステムも参考にしている。

「目指すべきは、入ってくる収益から、すべての制作費を回収し、かかった広告(費)もすべて回収し、残ったものを分け合うという、かつての映画館によく似たモデルだ」と、また別のエンターテインメント業界幹部は述べている。

このモデルのリスクは無論、制作者やストリーミング事業者が十分な広告収益を得られず、費用の回収どころでなくなることだ。広告付きのオリジナル番組がいかに脆弱なビジネスであるかは、FacebookYouTubeがすでに証明している。もうひとつのリスクは、収益分配モデルが間違ったインセンティブを与え、過剰な広告や、真の魅力に欠けるマスアピールのプロジェクトにつながることで、ストリーミング事業者の広告付き配信の視聴者数を減らし、さらには、広告なしで同じコンテンツを見せられる利用者も遠ざける可能性があることだ。

成功する見込みはゼロではない

それでも、Netflixのようなトップクラスのストリーミング事業者であれば、オリジナル番組に収益分配モデルを採用して成功する見込みがないわけではない。第一に、Huluやピーコック(Peacock)といった大手の広告付きストリーミング事業者は、すでに広告1000インプレッションあたりで、デジタル動画プラットフォームの少なくとも3倍の料金を請求しているため、広告ごとに分配できる収益もそれだけ多くなるはずだ。

しかしまた、広告から多くの収益が(プロダクトプレースメント契約からの収益も含めて)上がるのなら、そしてストリーミング事業者が利益を守るためにコストを削減しようとしているのなら、彼らがそのお金を自分たちで貯め込むというシナリオも、ありえない話ではないように思われる。

[原文:Future of TV Briefing: What if streamers adopted an ad revenue-sharing model for original programming?

Tim Peterson(翻訳:高橋朋子/ガリレオ、編集:黒田千聖)

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