「私のなかの パティシエ が蘇った」:ゴールドマンサックスとパティシエを経て美容業界へ参入したケイト・マクラウド氏

DIGIDAY

ココアバターを主成分としたボディソープ「ボディストーン」を販売するケイト・マクラウド氏だが、そのキャリアは変わっている。投資銀行からパティシエ、そして美容業界という異色の経歴の持ち主は、いかにしてQVCやセフォラで販売されるようなブランド創設に至ったのか。米GLOSSYがインタビューした。

投資銀行からパティシエ、そして美容業界という経歴は少し変わっているが、ケイト・マクラウド氏が自身の名を冠したスキンケアブランドをローンチするにいたるまでのキャリアは「大きく迂回してきた」と言える。

「私はゴールドマン・サックス(Goldman Sachs)でトレーダーをしていたが、ゴールドマンを退職して料理学校に通うことにした。オーダーメイドのパン屋を経営し、自分の仕事が大好きだった。しかし、人生には変化がつきものだ」と、マクラウド氏はGlossyビューティポッドキャストの最新エピソードで述べている。「当時は海外に住んでいたが、予期せぬ事態が起きて、2015年にニューヨークに戻ることになった」。

ニューヨークタイムズ(New York Times)のジャーナリストの力添えがあって、マクラウド氏はかつてのボーイフレンドだった、デーティングアプリのヒンジ(Hinge)の創業者およびCEOのジャスティン・マクラウド氏と再会し、その後すぐにふたりは結婚した。恋愛が軌道に乗ったことで、彼女は自身の情熱や個人的なリチュアルを再発見し始めた。義理の姉からたまたま固形のココアバターについて教えてもらったのをきっかけに、彼女はこの素材と向き合い、じっくりと実験をするようになった。これがマクラウド氏のブランドの看板商品である「ボディストーン」の主成分となっている。

「私の中のパティシエが蘇った」と彼女は言う。「本当に長い経験を積んでチョコレートを扱う訓練してきたこともあって、ココアバターをキッチンに持っていき、『上質のガナッシュをつくるつもりでこれと向き合ったとき、この素材の応用力を高めるには何ができるか』と考えた。これが他ブランドとの差別化を実現している。

マクラウド氏は当初は友人や家族のためにボディストーンを手作りしていたが、ナオミ・ワッツ氏から大きな支持を得たことで、ワッツ氏のオンダビューティ(Onda Beauty)で1日に20個、週末にはさらに40個のボディストーンを売るまでになった。このとき、マクラウド氏はそれまでストーンをクッキングシートで包んでいたのを、公式のブランドラベルを貼ったキャニスターにパッケージを変更している。それから3年経ち、このラインは現在QVCやセフォラ(Sephora)で販売されるようになった。

以下はポッドキャストで語られた内容を読みやすさのために要約し、編集を加えたものである。

自分自身を映し出す

「ブランドをケイト・マクラウドという名前にしたのは、まさに私の旅の一部だから。これまでの道のりで、多くの予測不可能な出来事があった。そしてこのブランドを実現させたのは私の突飛な行動だ。ロングアイランドシティにあるシリコン型のメーカーを見つけて、私はマイケルズ(Michael’s)で買った粘土の塊を持ってそこに行った。プロフェッショナルな3Dプリンティングはなかったし、彫刻家のように自分で成形ができるわけでもなかった。竹(註:製品を入れているキャニスターの素材)は、自分のキッチンにあったものだ。『あ、これってスパイスを入れるキャニスターだ!』って。当初は(このブランドを)何と呼べばいいのかわからなかった。現在ではいろいろな意味で、もはや私自身ではないし、特にチームが大きくなってからは、むしろ自分よりも大きな存在となっている。でも最初の創業の瞬間は『これは私だ』という存在だった」。

小売店のパートナーを見つけて獲得する

「パンデミックの前に最後にしたことのひとつが、ビューティカンファレンスに行ったことだ。QVCのチームが参加するのは知っていたので、QVCのチームとそのバイヤーを追いかけてつかまえようと思った。女性のグループが来たから、『この男性はいる?』と尋ねると、彼女たちが『いる』と答えたので、『彼の体にバターを塗ってあげたいから、ここに連れてきてほしい』と頼んだ。やってきた彼にエネルギッシュに自分を売り込んだ。かなり『熱く』力を入れたけど、彼はただ石のように無表情で聞いていた。最後に『そのようなわけで、私たちはQVCに驚くほどぴったりだと思う。私たちはほかとは違う。QVCのプラットフォームでは、こんなことまだ誰もやっていない。御社の顧客はこれに反応すると思う』と話したら、なんと彼は『そう思う』と返答し、私にメールアドレスを教えてくれた。そしてちょうどパンデミックが始まった頃、QVCから最初の注文が入った」。

自分の道にフォーカスする

「夫がヒンジでやっていることを見て学んだことのひとつは、ヒンジがティンダー(Tinder)の後を追うのをやめたときに成長し始めたということ。ヒンジは内側に目を向けて、『これは忘れよう。我々はスワイプするアプリではない。スワイプするアプリにはなりたくない。むしろ自分たちがなろうとしているものが好きですらない。我々はティンダーじゃないんだから、ティンダーになろうとするのはやめろ』と考えた。そうやってヒンジが内側に目を向けたときこそが、真の成長とアイデンティティが生まれたときだった。私はセフォラにいる多くの人々と競争することにはそれほど興味がない。私が好きなのは、みんながやっていることを見ること。学ぶことが好きだし、顧客の声に耳を傾け、チームをまとめて、『どうしたら顧客に最高のサービスを提供できるだろう? 私たちにできることは何か、どうすれば自分たちは挑戦し続けられるのか、そして、どうすればこのブランドを最高の形で成長させていくことができるのか?』とみずからに問いかけることが好きなのだ」。

[原文:Kate McLeod on bringing a baking background to beauty: ‘The pastry chef in me came alive’]

PRIYA RAO(翻訳:Maya Kishida 編集:猿渡さとみ)


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