ESPN が日常生活に潜むファンタジーフットボールを広告にした理由:「消費者はブランドに広告以上の価値を期待している」

DIGIDAY

ESPNは、長年のパートナーであるエージェンシーのバトラー、シャイン、スターン&パートナーズ(Butler, Shine, Stern & Partners:以下、BSSP)と共に、次シーズンにむけて、ファンタジーフットボール(実在する選手のデータを利用し、架空のチームを構成して競わせるシミュレーションゲーム)のプレイヤー利用登録を呼びかける、新たなキャンペーンを実施している。

BSSPとESPNの提携は2019年に始まったが、今回がライブアクションでの初のコラボレーションとなる。

「ESPNは常に、ユーモアを活かして人々を自社ブランドに引きつけるのに成功してきた。それがブランドの特徴のひとつになっており、難しくは考えていない」と、スウィフト(Swift)でエグゼクティブバイスプレジデント兼戦略担当責任者を務めるレスリー・ノース氏は語る。「その一方で、スポーツは真剣勝負であっても、楽しく、エンターテインメントであるべきだということを理解している」。

日常生活での役割や与える影響に焦点

ESPNによる3部構成のコミカルな広告では、ファンタジーフットボールがいかに日常生活で大きな役割を果たし、現実世界の人間関係に影響を及ぼしているかという点に焦点を当てている。

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「我々のビジネスの重要な一部だ。我々は、こうしたファンには大きな価値があることを知っており、そしてもっとも熱烈なファンもいる」と、ESPNのブランドマーケティング担当アソシエイトディレクター、ジョン・ロボ氏は言う。

このキャンペーンでは、スポット広告は、リニアTVとオンライン動画のほか、ラジオやポッドキャスト、デジタル広告、屋外広告など、さまざまなタイプのメディアで流される。今後数週間以内には、キャンペーンの一環として別のスポット広告も公開される予定だ。

あらゆるものを巻き込む

キャンペーンは、人とのつながりやコミュニティ意識、ファンタジーフットボールが人々に与える影響からインスピレーションを得たものだ。

「初期のアイデアでは、どういうタイプの人が集まってプレイするのかという点が、もっと限定的に考えられていたと思う。さまざまな人々や友人グループ、見知らぬ人たち、あり得ない組み合わせなど、あらゆるものを巻き込んでいくことが大切なのだ」と、BSSPのクリエイティブディレクター、ロビン・テネンバウム氏は語る。

ロボ氏が予算全体の詳細を明らかにしていないため、ESPNの広告予算のうち、どれくらいが動画のスポット広告やソーシャルメディア広告に充てられるのかは不明だ。

パスマティックス(Pathmatics)によると、ESPNは2022年に、広告に4500万ドル(約59億8500万円)近く費やしたという。ロボ氏は、これらのスポット広告への広告支出は、リニアTV、オンライン動画、ラジオ、ポッドキャスト、デジタル屋外ディスプレイ広告向けだったと述べている。また、スポット広告は、ESPNの番組でも流される。

消費者がブランド広告に期待すること

キャンペーンを通して、あり得ない関係の可能性を強調しているため、日常の問題が、ファンタジー・フットボールの問題によって覆い隠されている。そのために、BSSPは意図的に、あり得ない状況を組み込んでいる。

たとえば、カップルがセラピー中に、結婚後の姓をめぐってファンタジーフットボール論争をしたり、同僚がパートナーを、ファンタジーフットボール内で互いに呼び合っているチーム名で呼んだりという、ファンタジーフットボールでしか起こりえない状況だ。

「ブランドは、関係性を維持するだけでなく、突破口を開いてオーディエンスと共鳴するためにも、コミュニティの声とコミュニティを取り巻く会話に耳を傾けなければならない。消費者は、ブランドに広告以上の価値を期待している。そうした価値がエンターテインメントやユーモアであるとしたら(どうだろう)」とノース氏は言う。

ファンタジー・フットボールが特別である理由

ESPNは、2021年の記録的なシーズン後、ファンタジーフットボールが特別である理由を示そうと努め、コミュニティ意識や仲間意識、ファンタジー・フットボールにしか存在しない不変の要素など、このゲームを唯一無二にしているものを強調している。

「最優先課題として、前シーズンにプレイした人ができるだけ大勢、このゲームに戻ってくるようにしたい」と、ロボ氏が話すのは、リーグマネージャーやコミッショナーと呼ばれる、こうしたファンを引き留めることがリテンション戦略だからだ。

「これまでプレイすることを考えなかったようなタイプのプレイヤーやファンが、たくさん集まってくるような気がしている。キャンペーンを見てもらった今、フットボールを知り尽くしていなくても、誰もが参加できる場なのだ」と、テネンバウム氏は締めくくった。

[原文:Inside ESPN’s campaign to get fantasy football players to sign up for its upcoming season

Julian Cannon(翻訳:矢倉美登里/ガリレオ、編集:黒田千聖)

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