Z世代、インフレ対策にBNPL(後払い)をこぞって利用:求められる透明性と予測可能性

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小売業者はアパレル、音楽、ポップカルチャーなどのトレンドのけん引役として、長年にわたり若い買い物客に依存してきた。しかし、インフレが続くなか、Z世代は後払い(BNPL)サービス普及の役目も果たしつつある。

可処分所得の低い若年層が多用している

消費者物価は6月末の時点で9.1%上昇しており、米国内で前年比としては40年ぶりの上昇率となっている。一般的にもっとも所得の低いとされる若い消費者層にとっては予算のさらに多くが食品、住居、燃料などの固定費に振り分けられることになる。

解決策として挙げられるのがBNPLだが、これには負債への入口になるという批判もある。アメリカ人の約4人にひとりは、買い物の予算を先にねん出するための方法としてBNPLを使用したことがあり、これらのサービスは期間内に支払えば利息がゼロ、または手数料が無料だ。一部のBNPL専門家は、インフレが続くにつれて、このプラットフォームの使用を継続し、若い消費者が無理な買い物をするリスクが増えることを予期している。

金融および投資アドバイス会社のモトリーフール(Motley Fool)によるパーソナルファイナンスサービスであるアセント(the Ascent)は6月、18〜24歳までの消費者の61%がBNPLサービスを使用したことがあると明らかにした。この調査を行った調査アナリストのジャック・カポラル氏は、この年齢層のグループは延滞料を払う可能性がもっとも高い層でもあり、ほとんどの場合に、毎月複数のBNPLの支払いを行っていると述べている。この層は可処分所得ももっとも低い。

「この年齢層はこのツールが好きで、通常の方法では予算に収まらないような買い物をするためにこのツールを多用する」と、同氏は述べている。同氏は、若いアメリカ人がBNPLを「可能な限り最大限に使用しており、予算でまかなえる金額を多少超えている可能性もある」ことを示すいくつかの証拠があるとも付け加えている。

Z世代がなぜBNPLを利用するのか

アセントの調査によれば、人々がBNPLをもっとも多く使うカテゴリーは電子機器と衣服のふたつだ。このふたつは、値上げの影響をもっとも強く受けた分野でもあり、商品価格が前年比で7%増加している。

企業戦略コンサルタントのボードオブイノベーション(Board of Innovation)でシニアイノベーションコンサルタントを務めるガヤスリ・ゴーパル氏は、Z世代の消費行動を調査した結果、これらの層にとってもっとも重要なことは、体裁、メンタルヘルス、そして「今を楽しんで、悩むのはあと回し」の姿勢だと語っている。Z世代はパンデミック、物価の高騰、社会的プレッシャーが顕著な時代に成人を迎えたため、負担の大きい社会経済的な文化のなかで、自分へのささやかなご褒美を求める傾向があると、同氏は述べている。

「この層は、1日のなかで自分たちを元気づける瞬間や、すぐに満足させてくれるようなものを探し求めている」と、同氏は述べる。

Z世代は、社会で働きはじめても、なお強い経済的なストレスにさらされている世代でもあると、ゴーパル氏は語る。ピューリサーチセンター(Pew Research Center)によれば、米国では過去数世代にわたって収入が減少し、中流階級とみなされる世帯はわずか半分程度にまで落ち込んでいる。

「この世代は消費も倹約する傾向がある。しかし、その一方で人生を楽しまなくてはならないというプレッシャーも受けている」と同氏は語る。

そのため、これらの世代の消費者は、「手の届くラグジュアリー」、たとえばハイエンドのスキンケア商品などを買い求めるため、BNPLのように今すぐ支払えないものに対して時間をかけて支払う方法を選ぶことになると、同氏は述べている。

景気後退時に有利

サーベイモンキー(SurveyMonkey)の最近のレポートによれば、18〜34歳のBNPL利用者の10人に6人は、より柔軟な支払いスケジュールにするために使用したと回答した。さらに54%は、ほかの方法では手の届かなかった何かを買い求めるために使用したと回答し、約3分の1は、クレジットカードに代わる決済方法を望んだと回答した。

最近の調査を率いたモメンティブ(Momentive)で調査ディレクターを務めるローラ・ブロンスキー氏は、若い人々が自分たちの予算を拡大するためにこのサービスを使用していると、この結果が示していると語る。

同氏は次のように述べている。「人々がBNPLを好む主な理由のひとつは、支払いを柔軟に行えるためだということが示されている。そして、そこから示唆されるのは、これらの人々がその時点では全額を保有していないかもしれないということだ」。

20万以上の小売業者で使用可能な大手BNPL業者のアファーム(Affirm)は4月、買い物客の23%が、価格の上昇を理由に、翌月中にBNPLオプションを使用するだろうと回答したことを明らかにした。しかし、ミレニアル世代やZ世代については、この割合が41%に達した。

創設者でCEOを務めるマックス・レブチン氏は、5月に行われた第3四半期の決算発表で次のように語った。「責任ある融資に取り組むという当社の構造的インセンティブ、強力なネットワークがあるユニットエコノミクスへの深いコミットメント、およびリスク管理の高度化を考慮すると、当社は景気後退時の成功に向けて有利な立場にあると強く確信している。2020年の非常に短い不況のあいだに、我々の加盟店の多くで申し込みが4倍近くに増加した。延滞金やトラブルなしで長期間に分けて支払いを行えることは、景気後退の局面で需要が大きくなると、当社は確信している」。

変わりゆく景色

BNPLには直接的な利点があるが、負債の危険性は重くのしかかっている。一部のBNPLサービスは利息を徴収せず、延滞金さえないが、借り手は支払金を用意する必要がある。アセントの調査では、後払い利用者の33%が支払遅延を引き起こしたり、延滞金が発生したりしている。

カポラル氏によると、Z世代はクレジットカードよりもBNPLを使用する可能性が高く、多くのBNPL業者は個人信用調査機関に報告しないため、この世代は信用を構築する機会を失うことになる。財務の観点から、これらの人々はクレジットカードを使用すればほかの利点を受けることが可能だ。

「BNPLできちんと支払える確信があるなら、クレジットカードを持った方がいい。クレジットカードで支払うなら、どのみち利息はゼロだからだ」と同氏は述べている。

このような懸念はあるものの、大手金融機関がBNPLに参入しているのを見れば、BNPLがすぐには衰退しないことは明らかだ。ガウラブ・セチ氏は、シチズンズ・バンク(Citizens Bank)が提供するBNPLサービスのシチズンズペイ(Citizens Pay)の最高戦略および商品責任者を務めている。同社は一部のブランドとともに、高額の購入について6、12、24カ月の長期分割支払いのようなカスタムのBNPLサービスを作り上げている。例として、エックスボックスオールアクセス(Xbox All Access)のセット商品には、ゲーム機械と、毎月24.99ドル(約3400円)のゲームソフトのサブスクリプションサービスが含まれている。同社のFAQによると、支払いが遅れると、延滞金はないが、個人信用調査機関に報告される。

より透明で予測可能な方法を提供する

セチ氏は、自分たちが何に手を出しているか、消費者が理解しているかを知ることが、重要なポイントになると語る。

同氏は次のように述べている。「結局のところ、それは、お金を借りることであり、買い物に対して支払い能力があることを確認するということだ。当社はその部分を極めて重視している。自社の成長のために、利用者に無理をさせることは望んでいない」。

同氏はBNPLの普及が続くことを予測しているが、一方でクレジットカードも消え去ることはないだろうとも予測している。また、この分野が進化し続けるなか、従来型の銀行と、新興のフィンテック企業との公正な競争を保証するため、この領域におけるさらなる規制の強化を歓迎すると語っている。

同氏は次のように述べている。「消費者は、意図しない突然の借金に陥らずに物を買うための、より透明で予測可能な方法を求めている。この予測可能性は、消費者、特に若い世代の消費者がますます強く求めているものだ」。

[原文:Gen Z is flocking to buy now, pay later to beat inflation]

MELISSA DANIELS(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:黒田千聖)
Illustrated by Ivy Liu

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