プラットフォーマー のレイオフが広告出稿に及ぼす影響:「一貫した担当者を維持するのに苦労している」

DIGIDAY

ハニカム・メディア(Honeycomb Media)のエグゼクティブ・ディレクターであるカット・ダンカン氏は、メタ(Meta)の担当者との連絡に苦労していると語った。

現在彼女は、Facebookやインスタグラムで展開する広告に問題があったとき、誰にも連絡が取れない状況だと言う。Facebook広告マネージャー(Facebook Ads Manager)ツールはバグが多いことで有名で、定期的に問題が発生している。「ビジネスアカウント担当者が割り当てられた広告アカウントでさえも、(メタの)カスタマーサービスに電話をかけることは事実上不可能だ」と同氏は言う。

それでもこれは、メタにおける大量のリストラが始まる前の状況だった。

メタと連絡がとれないマーケターたち

今、人員削減が本格的に進行しているなか、マーケターたちはメタ側とのコミュニケーションが悪化することを懸念している。1万人の雇用削減が終わった後、どのように改善されるのか見通しが立たない。さらに、これはメタにおける大量解雇としては2回目であり、昨年11月にも1万1000人が解雇されている。

「メタから広告関連のヘルプを受けることがさらに不可能になっている」と同氏はいい、「(人員が削減されたことで)引き継ぎに適切なトレーニングが行われているとは思えない。何か問題が発生した場合、広告管理の問い合わせをすることが大きな悩みの種になっている」と続ける。

とてつもない速さと規模で行われるリストラが、ダンカン氏のようなマーケターからの問い合わせが無視される状況をさらに悪化させている。

「Facebookの広告マネージャーはバグが多く、いつも壊れてばかりだ」と、とあるデジタル広告代理店のソーシャルメディア担当者は匿名を条件に取材に応じてくれた。「メタのチームは(ほとんどの場合)役に立たず、製品についてほとんど知識がない。リストラが起きたことで顧客(つまり広告を出稿している人たち)にサービスを提供する必要があることを、今一度ちゃんと認識してくれることを期待している」。

しかし、その認識が浸透するまでには、しばらく待たなければならないかもしれない。マーク・ザッカーバーグCEOによれば、2023年は「効率化の年」とされているが、広告顧客に対するカスタマーサポートはメタの優先事項のトップにはどこにもないようだ。

「以前連絡を取っていたチームと現在連絡先として繋げられたチームとのあいだの引き渡しが、わずかに上手くいっていないことがわかった」と、ウェイ・トゥ・ブルー(Way To Blue)のデジタルストラテジストであるテイラー・マクマナス氏は言う。「メタは、質問に答えたりサポートを提供してくれたりするチームメンバーと直接やり取りするのではなく、ポータル上で顧客が問題を報告する、という幅広いアプローチを取っている。ポータルは時々効果があることもあるが、問い合わせが時間を要するものや複雑なものの場合、必要な情報や反応を得るのが難しいこともある」。

全体に渡る懸念

しかし、これらの問題を抱えているのはメタだけでない。GoogleからTikTokまで、プラットフォーム業界全体でリストラが進行している。そして、マーケターたちは人員削減の影響を感じている。

一部の人々は広告キャンペーンの運営においてプラットフォーム側の担当者との連絡に依存しており、現在の人員削減の流れのなかで無防備さを感じているようだ。また、すでに非常にアクセスしにくいと感じていたプラットフォーム側からの専門知識の教示が、さらに困難になることにイライラしている人もいる。

ただし、多くのマーケターはリストラを受けて自分たちの広告支出を削減するわけではないことに同意している。リストラは、広告を購入する能力を損なわない。結局のところ、多くの活動はセルフサービスのプラットフォームを介して行われている。実際これは、これらの大手企業すべてにおいてカスタマーサービスがある程度減少してしまったことに関する問題だ。

会社に残った人へのプレッシャー

例としてスナップチャット(Snapchat)を挙げる。2022年の収益成長が停滞したとの報道を受けて、同社のビジネスを再構築して広告収益を拡大するため、CEOのエヴァン・シュピーゲル氏は昨年8月にビジネス全体で20%の労働力(約1300人の従業員)を削減した。その影響は、その後の数カ月で明らかになっている。

「大量のリストラがあると私たちは返答をもらえないため、2、3週間非常にフラストレーションを溜めることになる」と、ウィー・アー・ベリファイド(We Are Verified)のCOOであるフィル・ランタ氏は語った。

さらに、リストラ後に残った人々も以前はより広いチームに分散されていた仕事量が集まってしまうため、圧倒されている可能性が高い。同氏はその点について詳しく述べている。「デジタルの専門家として、私たちはそれを理解しているから(リストラ後も社に残っている人々に)少しの猶予を与えたいと思っている。残った人々はすべてスター社員だ。リストラを行ったほかのすべてのプラットフォームがそうだとは言えないが、残った人たちは皆、パフォーマンスを発揮するプレッシャーを感じていると思う」。

必然だった軌道修正

マンモス・メディア(Mammoth Media)の創設者でCEOのベノワ・ヴァテール氏はスナップチャットで以前働いていたが、当時の同僚の多くはもういない。実際、彼は新しい人材がスナップチャットにとって有利に働くかもしれないと彼は信じている。そのうえで、彼が自らのクライアントである広告主たちに伝える内容に影響はないものの、彼のチームがスナップチャットをどれだけプッシュするかには影響が出ていると言う。会社全体での人員削減があったことで、すでに競合他社と比較して後手に回っているように見えるスナップチャットの製品革新に、影響を与えるのは自然だろう。

同氏は「(スナップチャットでは)何もうまくいかず、広告主を興奮させるものは何もない。パイプライン内の新しいものについて誰からもコミュニケーションを受け取らない。一方でTikTokからは週に1回、あるいはそれ以上の頻度で広告主に提案する新しい機会に関するメールを受け取っている」という。

これに対し、スナップ(Snap)の広報担当者はDIGIDAYに、「私たちは代理店パートナーを非常に重要視しており、スナップチャットでビジネス成果を上げるさまざまな方法について、迅速に情報提供するために努力している」と語った。

どこかで軌道修正が必要だったことは確かだ。その結果がスナップチャット、メタ、Googleなどが現在行っている大規模な方針修正となっている。リストラが最も手っ取り早いアプローチ候補だったのだ。とくにこれらのプラットフォームは、パンデミックによって引き起こされた需要の急増に対応するために急速に拡大していた。

しかし需要の急増は、これらの企業が直面する予定だった先の市場も引き出した。彼らは以前よりも早くエンドマーケットを消費し始めたのだ。その結果、成長が停滞し、投資家たちは次のステップが何か知りたがった。これらの問いへの答えはプラットフォームの経営陣にとって困難だ。そして、マーケターはその影響を受けている。

強固なGoogleと不安定なソーシャルメディア企業

「主要な広告プラットフォームがエージェンシーに対して提供するサポートが既にさまざまな変化を見せているなか、1月のリストラ後に顕著なギャップがある」と、パフォーマンス・エージェンシーのロースト(ROAST)でペイドメディア部門責任者を務めるウィル・ジェニングス氏は述べた。

同氏と彼のチームは、「特定の企業(複数)」とのあいだでメディア契約の交渉中に連絡先の社員が消えてしまった状況を経験している。同氏によれば、それらの連絡先に送られた連絡内容も、先方で内部での後任を見つけることができないことがほとんどで、稀に連絡がついた場合でも、以前よりもはるかに上級の職に就いているメンバーになっていたと言う。「リストラ後のまとまりの欠如を示すとともに、それによって生じた役職内容にギャップがある」とという。

これまでのところ、Googleからはそのような不満は生まれていない。ジェニングス氏によると、Googleとの関係は「以前と変わらず強固」だという。それ以外のプラットフォームは、混乱のなかで彼の会社との関係を維持するのに苦労している。

また同氏は、「2人の連絡先がいて、そのうちの1人がある日突然メールに返信しなくなり、後任の話もなくフォローアップする相手もいなかった。代理店アカウントと技術サポートに関して、広告ネットワークは常に一貫した担当者を維持するのに苦労している」と説明した。

担当者がいなくなったTwitter

この点で、とくにTwitterへのフラストレーションは大きいようだ。Twitterは億万長者であるイーロン・マスク氏によって買収され、スタッフが削減される前までは、マーケターたちを支援するのが非常に上手だったからだ。マスク氏が就任して以来、同社が10月段階で抱えていた強固な7500人のチームが、先月には2000人以下に削減された。

「Twitterでは、リストラが非常に急に発表されたため、引き継ぎがほとんどないか全くない状況で広告主が手探り状態になっている。情報を得るのが非常に困難だ」とウェイ・トゥ・ブルーのマクマナス氏は言った。

さらに、無数の広告主がマスク氏の買収以降、(連絡を取ろうとしても)ほとんどブラックホールにメールを送るようなものであり、以前はエージェンシーと広告主が持っていた連絡チャネルはなくなってしまったとDIGIDAYに語っている。

取材の応じた匿名希望のマーケターのひとりは、現在のクライアントのうち1つがTwitterでの請求プロセスで問題に直面し、その問題の解決をサポートしてくれる相手がプラットフォーム側にいないため、Twitterでの広告を断念せざるを得なくなったと指摘した。

成長痛と捉えられるTikTok

しかしながら、リストラを受けてすべてのプラットフォームとマーケターとの関係が悪化しているわけではない。

たとえば、TikTokを見てみよう。親会社のバイトダンス(ByteDance)は今年最低1万人の削減を計画している。それにもかかわらず、マーケターたちはまだ同プラットフォームに満足しているようだ。同社から得られるサービスやコミュニケーションが、急速に成長していることを考えると、彼らが常に変化するという事実をマーケター側も受け入れていると言えるだろう。

別の言い方をすれば、TikTokはその成長に伴う成長痛のようなものとして、今後のリストラとそれによる課題や不満を広告主が受け入れているため、ある程度は大目に見ているのだ。

「TikTokの進め方はもっと粗くスピードが速い。ビジョンが実現しないためにリストラが必要になり、さまざまな方向性をサポートできなくなるといったケースではない」とティヌイティ(Tinuiti)のペイド・ソーシャル担当副社長であるアビ・ベン・ツヴィ氏は言う。「むしろ、TikTokは非常に速いペースで成長しているため、途中で犠牲者が出る、ということの方が実態に合っている」。

なお、TikTokはこれに関して取材にコメントをしなかった。

リストラが広告出稿に及ぼす影響は?

現時点では、リストラとそれに伴うサービスへの影響はマーケターが広告費をどこに投資するかを再考させるほどのものではない。ただし、問題が長引くほどマーケターがその不満を行動に移す可能性が高まる。

「クライアントに最高のサービスを提供するプラットフォームを優先していくだろう」とローストのジェニングス氏は言う。「メタは市場支配の地位に甘んじてはならず、注意を怠ると、ほかのプラットフォームに広告費が流れるだろう」。

ほかのマーケターも同様だ。「もっと熱心でサービス指向の競合他社と取引するチャンスがあれば飛びつくだろう」と、デジタル広告代理店のソーシャルメディア担当責任者(匿名希望)は言う。「(メタは)それほど製品に不具合があり、サポートが誤った方向に行っていてひどい状況だ」。なお、メタはこれに関したDIGIDAYからのコメント要請に返答していない。

[原文:Meta, Snapchat, Twitter layoffs spell trouble for agency relationships

Seb Joseph and Krystal Scanlon(翻訳:塚本 紺、編集:島田涼平)

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