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ファッショングループのカプリホールディングス(Capri Holdings)は、第1四半期に堅調な決算結果を報告し、インフレの期間においてもラグジュアリー市場に回復力があることを示した。
ヴェルサーチェ(Versace)、ジミーチュウ(Jimmy Choo)、マイケルコース(Michael Kors)などのブランドを傘下に持つカプリは、第1四半期の合計収益が前年同期比8.5%増の13億6000万ドル(約1840億円)に達した。個別のブランドを見ると、ヴェルサーチェの収益は昨対比14.6%増の2億7500万ドル(約371億円)、ジミーチュウは同21.1%増の1億7200万ドル(約232億円)、マイケルコースは同4.8%増の9億1300万ドル(約1230億円)だった。
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高所得者層の消費マインド
同社の成長は、おもに高所得の買い物客によるラグジュアリー商品への需要が継続していることによるものだ。小売アナリストは、ラグジュアリー商品の買い物客はインフレの圧力に簡単には左右されないと語る。その結果、同社は長期的な売れ行きについて楽観的な見通しを維持してきた。
カプリホールディングスのCEOを務めるジョン・D・アイドル氏は、投資家およびアナリストへの報告で次のように述べている。「短期的なマクロの不安定性があることは理解しているが、我々はカプリホールディングスが長期的な目標を達成できることを疑っていない。この自信は、ラグジュアリー業界の回復力が証明されたこと、当社のラグジュアリーポートフォリオの強さ、そして当社の戦略的イニシアチブを実行する有能な従業員グループに基づくものだ。結果として、当社は何年にもわたって収益と売上の成長を達成し、株主の価値も増やしていくことができる位置にある」。
同社は2023年度を通して、総収益が約58億5000万ドル(約7900億円)と見込んでいる。これは、前四半期における見通しの59億5000万ドル(約8030億円)から引き下げられたものだ。同社は、ジミーチュウの通年の収益見通しは約6億5000万ドル(約878億円)のままにしているが、ヴェルサーチェの収益は以前の12億3000万ドル(約1660億円)から11億8000万ドル(約1590億円)に修正した。マイケルコースの収益見通しも、40億8000万ドル(約5510億円)から40億3000万ドル(約5440億円)に引き下げられた。
サイズモアキャピタル(Sizemore Capital)の最高投資責任者を務めるチャールズ・ルイス・サイズモア氏は「ラグジュアリーの消費者はインフレの影響をそれほど受けないため、商品の選択に慎重になることもない」と語る。「彼らは、高級品の出費などを補うために、一部の分野の出費を切り詰める必要はない」。
値上げの恩恵
アパレルブランドのラルフローレン(Ralph Lauren)でも同様な力学が働いている。同社は第1四半期の収益が前年同期比8%増の15億ドル(約2020億円)に達し、アナリストの予測を上回ったことを報告した。一方、ラグジュアリー企業のLVMH モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン(LVMH Moët Hennessy Louis Vuitton)は、2022年上半期の収益が2021年に比べて28%増加したと発表した。
カプリも、新しいラグジュアリー顧客を獲得しつつあるようだ。同社は昨年1年間で、1200万人の新しい名前が自社データベースに追加されたという。同社は今年初め、値上げの計画を公式に表明したにもかかわらず、この結果を達成した。
カナダの多国籍投資銀行であるビーエムオー・キャピタル・マーケッツ(BMO Capital Markets)のマネージングディレクターを務めるシメオン・シーゲル氏は、「同社は、ほとんどのブランドがパンデミックのときに獲得したブランドエクイティを実際に維持することをめざしている、数少ないブランドのひとつだ。ほとんどのブランドは、これらのブランドエクイティをすぐに失ってしまった。このため、これは非常に強力な推進要素だと私は考えている」と述べている。「ヴェルサーチェとジミーチュウのブランドは、ラグジュアリー市場全体にわたってみられる広範な値上げの恩恵を受けているように見える」。
ヴェルサーチェやジミーチュウがどちらも2ケタの増収を示しているのに対して、マイケルコースの成長はこの両者よりも遅れているようだ。オムニコンコマースグループ(Omnicom Commerce Group)でコマース担当シニアバイスプレジデントを務めているブライアン・ギルデンバーグ氏は、マイケルコースにはほかの2つのブランドよりもはるかに広く流通しており、より大きなマス市場向けのラグジュアリーブランドとして位置付けられていると語る。そのため、成長は本質的に緩やかで、市場環境に多少影響を受けやすいと同氏は述べている。
前途は多難
カプリは、ラグジュアリー商品を提供することで、マクロ経済の逆風にもかかわらず成長してきたが、影響をまったく受けていないわけではない。
カプリの3つのブランドすべてについて、アジアでの収益は減少している。それは、中国でのCovidに関連したロックダウンが一因だ。経営陣は、中国におけるこれらの規制の影響が、会計年度の後半まで続くと予測している。
ギルデンバーグ氏は、「中国でのCovidによるロックダウン状況のやっかいな点は、予測が非常に困難だということだ。特に、上海のような市場でシャットダウンが起きればラグジュアリーブランドの業績に明確な影響を及ぼし、中国の国内旅行の緩和だけでも影響がある」と述べている。「売上高の伸びを中国に大きく依存しているブランドは、もう少し慎重になる必要があるだろう」。
さらに、同社の利ざやはこの四半期に多少削られた。第1四半期における粗利益率は前年の68.3%から66.3%に減少し、純利益は昨年の2億1900万ドル(約296億円)から2億100万ドル(約271億円)に減少した。サイズモア氏はこの原因を、サプライチェーンの制約や、ほかのインフレに関する圧力によるものとしている。
同氏は次のように述べている。「インフレの問題だけでも利ざやが多少減少し、すべての関係者に影響することを予測していた。それ以外の点については、カプリの語ったストーリーと、これまで我々が目撃してきたことは極めて一貫している。これは、ハイエンドの小売業界全体において、非常に普遍的なストーリーだ」。
[原文:Capri Holdings sales rise as luxury goods show signs of resilience]
Maria Monteros(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Capri Holdings