「第4四半期を無事に乗り切るのが、目下の夢だ」:景気後退に怯える パフォーマンスマーケティング エージェンシー幹部の告白

DIGIDAY

不透明な経済の展望がいま、マーケターおよびエージェンシー幹部の目の前に大きな壁として立ちはだかっている。起こりうる景気後退の恐怖に怯え、急激な物価高騰にどう対応したら良いのかと、頭を悩ませている者は少なくない。

匿名を保障する代わりに本音で語ってもらうDIGIDAYの告白シリーズ。今回は、とあるパフォーマンスマーケティングエージェンシー幹部が、経済的不安定と逆風の可能性がクライアントの期待値にどう影響しているのか、率直に語ってくれた。

なお、読みやすさを考慮し、発言には多少編集を加えてある。

◆ ◆ ◆

――世間は迫り来る景気後退を恐れているが、あなたのクライアントもそのような話をしたり、広告へのアプローチを変えているのか?

一部のクライアントの場合、2022年前半からもう売上減が起きている、2019年や2020年と比べてもそう。うちの事業はeコマースコンシューマーブランドが95%を占めていて、どのクライアントも投入資金を以前よりも少々シビアに、それこそ1ドル単位で細かく注視している。たとえば、あるクライアントには先日、「1ドルも無駄にしたくない、少しでも多くの見返りを得るにはどうしたらいい?」と、はっきりと訊かれた。実際、どこも支出に対して少しでも多くの現金を回収したがってる。

特に、9月にピークを迎えるブランドにしてみれば、いまは試練の時で、プロダクトに多くの資金を投じている最中だから、銀行に現金が大して残ってない。それもあってみんな、通常より少々多くの収益を上げようと必死だ。どのブランドも支出を広告だけでなく全体として見ている。どこに金をかけているのか? 支出が抑えられるところはどこか? という姿勢が顕著だと感じる。

――影響が出てきているところはほかにもあるのか?

クライアントのなかには、これまで以上にアテンションを要求するものもいる。彼らは、物事をよりよく進めるためには、より速く行動し、より多くのミーティングを行う必要があると考えている。たとえば、競合他社に取られたクライアントによると、別のエージェンシーを選んだのは、毎週ミーティングを開いてもらえるからだと。つまり、そうすればするだけ、戦略を練る機会も増えるはずだと、そのクライアントは思い込んでいるのだ。

しかし、良い戦略というのは、そうそう出てくるものではない。毎週ミーティングを開くからといって、有料広告の効果増という結果が必ずしも付いてくるわけではない。それに、投じる資金の額にはもちろん違いがあるが、大半は、わざわざ毎週顔を合わせて有意義な議論を交わすに値するほどの額は投じていない。たいていは、電話かeメールで済ませられる。

――クライアントは景気後退に積極的に備えているのか、それともまだその可能性を口にしているだけなのか?

景気後退が起きるのではないか、という恐れは確実に大きくなっている。クライアントはeメールマーケティングをますます重視しつつある。当社としても、eメールマーケティングを軽く見ているクライアントにその姿勢を改めさせるよう努めている、理由はもちろん、ファーストパーティデータを得られる機会だ。一部のブランドにしてみれば、そこはまだ手を付けていないためだ。ただ、クライアントから聞こえてくる声の大半は、不景気に対する恐怖だ。

どうしたらいいのか、誰にもわからない。来年とは言わないが、せめてもう何カ月か先の話だと良いのだが。第4四半期を景気後退もなく、無事に乗り切るのが、目下の夢だ。

――一部のeコマースブランドは2020年と2021年、大きな成功を収めた。それによって、現在の経済状況を踏まえたクライアントの期待値の設定に、さらに多くの時間が割かれているのか?

例年よりも多くの時間を割いていることのひとつが、まさにクライアントの期待値の設定だ。実際、かなりの労力を費やしている。2021年はeコマースのいわば黄金時代だった。それはつまり、2022年は2021年より良い結果は出ない、ということであるとクライアントには気づいて欲しい。2021年は2020年よりもはるかに良い年だったわけで、だから2021年を超える2022年にするのは、かなり厳しくなる。

この2年間、オンライン売上があまりにも急増したせいで、一部クライアントの2022年の期待値は、現実からかけ離れてしまっている。どんな期待値にするべきか、なぜ売上が落ちているのか、くり返し説明してる。売上が落ちている理由がわからないクライアントもいるためだ。答えは単純で、景気後退への不安が消費者の財布の紐を堅くしているし、そうでなくても、金の使い途に対してより意識的になっている。だからこそ2022年はおそらくそれほど大きな成長の年にはならないし、少なくとも2020年に対する2021年の成長と比べれば、そう言える。その点が2022年最後の3、4カ月の大きな焦点になると考える。

――具体的にはどのような話をしているのか。クライアントは現状を理解しているのか?

大半のクライアントは理解してる。でもなかには、いま起きていることを信じようとしないところもある。目の前の売上減に広告とは別の経済的要因がある、という事実を受け入れようとしない。不景気の風が吹く気配が見えていない国のクライアントは、特にそうだ。北米全土で、そして欧州のいくつかの国で売上減が起きている現状を、目の当たりにしている。

ただ、この先起きるかもしれない景気後退の影響を感じていない国々もある。だからこそクライアントには、もしも複数の国で広告を展開しているなら、自国で起きていることが他国でも起きているとは限らないと、理解させることが必要となる。売上を把握するには少々ローカライズしなければならない。

[原文:‘Getting through Q4 is my dream right now’: Confessions of a performance marketing agency exec fearful of a recession

Kristina Monllos(翻訳:SI Japan、編集:黒田千聖)

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