NFT が先、実際の製品はその次:クリエイティブなメイクで著名なジョー・ベイカー氏の新たなビューティローンチモデル

DIGIDAY

最近、NFTをリリースしている美容ブランドのほとんどは、すでに物理的な製品を販売している。しかしいま、その逆のアプローチでブランド初となる製品をローンチしたのが、ジョー・ベイカー氏が手がける新たなメイクアップブランド、ベイクアップ(Bakeup)だ。

8月5日、ベイクアップによる未来的な製品、ディスコベイラーアイアドーンメント(Disco Veiler Eye Adornment)が、Snapchatやインスタグラムのフィルター、そしてNFTとしてバーチャルでリリースされた。NFTは、ソフトウェア会社Daz3Dのノンファンジブルピープル(Non-Fungible People, NFP)コレクションの一部である。8月末には、このアイベールは物理的な製品として販売される予定だ。NFTバージョンは無料で、NFPコミュニティのメンバーのうち、同ブランドと関わりの深さを優先して選ばれた500人に送られる。

デジタルとフィジカルの美のマルチバース

ベイクアップの共同創業者でチーフビューティオフィサーでもあるセレブリティのメイクアップアーティスト、ジョー・ベイカー氏は、現実世界においては著名人のレッドカーペットやエディトリアルルックのためにクリエイティブなメイクを手がけていることでよく知られている。彼女が担当した著名人は、ルーシー・ボイントン氏、ジェニファー・ローレンス氏、シャロン・ストーン氏、モード・アパトー氏、サルマ・ハエック氏など、枚挙にいとまがない。だが、この9カ月で、彼女はメタバースに夢中になったのだという。

「あらゆることが起きたロックダウン以降、あまりにも多くの探索すべき異なる領域やフォーラム、道が存在した」とベイカー氏。メタバースの熱狂に気づいた当初は、「自分がその方向に向かうという場所ではまったくなかった」と彼女は言う。だが、友人に勧められてオキュラス(Oculus)のヘッドセットを試したところ、はまってしまったのだ。「文字通り、ボタンをただ押すだけで未来にいけるような感じがする。ちょっと試しただけで、その可能性にもう夢中になった」。

7月22日にローンチされたベイクアップは、デジタルと物理的な美の「マルチバース」をコンセプトに、ベイカー氏とCEOのサラ・スーパーフォン氏が共同で設立した。また、フィロソフィー(Philosophy)の創業者クリスティーナ・カルリーノ氏と、彼女の娘でブランドの顔として活躍しているレコーディングアーティストのグレース・ガウスタッド氏も設立に関わっており、クリエイティブなプロセスに関与している。ベイカー氏は、アルバム『BLKBX: wht r u hding?』のアートでガウスタッド氏のルックを手がけており、ガウスタッド氏は、最新のミュージックビデオでアイアドーンメントのモデルを務めている。

今後はNFTを戦略的に製品と連動させる

Daz3Dの説明によると、ノンファンジブルピープルは「8888人の女性とノンバイナリーのハイパーリアルな3Dアバターのコレクション」である。クリニーク(Clinique)、ルイ・モネ(Louis Moinet)、チャンピオン(Champion)など、いくつかのブランドとコラボレーションを行っている。

NFTの価格が急落しているなかで、ベイクアップが今後NFTを販売するのか、あるいは無料配布モデルを維持するのかについては、まだ詳細は発表されていない。スーパーフォン氏いわく、同ブランドはNFTの価格変動を追跡しているという。

「アプローチにそれを取り入れている」と彼女は話す。「私たちがNFTを行う方法は、とても戦略的なものになるだろう」。ブランドがNFTを販売する予定かどうかという質問に対しては、「今後はメイクアップ製品と連動した戦略をとる」としながらも、現時点では具体的な話をする準備はできていない。

18歳から28歳の年齢層をターゲットにした同ブランドとともに、20歳のガウスタッド氏は、特にノンファンジブルピープル(NFP)を中心としたNFTコミュニティで積極的に活動している。12月にはアルバム『Black Box』のジャケットに使われている彼女のメイクアップをフィーチャーした、初のNFPのNFTをリリースした。『Black Box』のNFTの発表や、7月末にはベイクアップの発表のためにベイカー氏とトークを行うなど、いくつかのDiscordトークにも参加している。

ソーシャルプロモーションの計画では、インスタグラムのような従来の美容マーケティングの本拠地に加え、Twitterのスペース(Spaces)やDiscordなどの新たな機会も活用する。また、9月に発表される予定のゲーミングプラットフォームともパートナーシップを結んでいる。

メタバースに見出した可能性とチャンス

ベイカー氏は『ハーパーズバザー(Harper’s Bazaar)』や『Vogue』の表紙でも取り上げられたその芸術性で、メタバースに洗練された美学を加えたいと考えている。オキュラスを始めたとき、メタバースのスタイルに対する最初の反応は「服がださい」というものだったと彼女は率直に語っている。しかし彼女にとってそれは「現実世界の想像力とファンタジーを一緒にして、まさに未来的なこのプレイ空間を創造する本当の可能性とチャンスがある」ということだったのだ。

ディスコベイラーは幻惑的なメッシュのアイカバーで、複雑で創造するのが難しい魅惑的なアイルックの時代に、「顔の上でキラキラした輝きとともに遊ぶための簡単な方法」として生み出されたとベイカー氏は言う。その美学について彼女は「一瞬にしてファンタジーに浸りたいと願う、あなたの未来的宇宙の分身のための、銀河系にインスパイアされた光速の美の装飾品」と説明している。

今年ローンチ予定の物理的な製品には、アイカラーと「とても重要でシンプルで、実用的なスキンケア」があるとベイカー氏は述べた。

デジタルの面に関しては、「デジタルウェアラブルに大きなチャンスがある」とスーパーフォン氏は話す。「人々はいつでも物理的な製品をほしがるものだ」。しかし、このブランドは「それがゲームの中だろうが、Zoomのプロフィール写真だろうが、自分のアバターを通じて自分自身を表現する新たな方法を提供する」ことを目指している。

[原文:Makeup artist Jo Baker’s new beauty launch model: NFT first, physical product second]

LIZ FLORA(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)

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