ファッションブランドはいかに 森林再生計画 を成功させようとしているのか?:植林方法を考慮する必要性も

DIGIDAY

山火事、干ばつ、森林再生計画の挫折などが世界中で増えているなか、ファッションブランドは森林再生プロジェクトへの関与にいっそう配慮するようになっている。ファッションブランドのカリウマ(Cariuma)とテンツリー(Tentree)は現地のコミュニティと提携して、関連リスクの軽減と計画を支援している。

ファッション業界ではブランドが二酸化炭素排出量を相殺するための取り組みとして森林再生や植林プロジェクトが多数進められているが、結果にはばらつきがある。樹木は完全に成長するまでは炭素を多く吸収できないので、「植林した」というコミュニケーションは消費者に誤解される可能性がある。植林の効果が目に見えるまでに20年かかるかもしれないからだ。しかし、森林破壊や山火事の影響を受けた地域において地元コミュニティと協力してバイオダイバーシティ(生物多様性)の改善にフォーカスするプロジェクトに参加することは有益である。

製品が売れるごとに植林を行うブランド

創業4年になるカリウマは、シューズを1足売るたびに木を2本植えている。創業10年のアウターウェアブランド、テンツリーは社名からもわかるように製品が1点売れるごとに10本を植林している。テンツリーは植林活動を取り入れた最初のブランドの1社であり、現在までに8000万本の木を植えている。一方、カリウマは110万本。また、パンガイア(Pangaia)やガニー(Ganni)のようなファッションブランドも森林再生プログラムに貢献している。

カリウマのブラジルでの取り組み

カリウマは、2020年以降、生態系の回復にフォーカスしたブラジルのNGO、CEPANと協力し、現地チームとともにブラジルの森林再生プロジェクトを実施している。同社は、ブラジルの絶滅危惧種の60%が生息する熱帯雨林に植林しているが、森林伐採によってその地域の森林の87%以上が失われている。

デイヴィッド・パイソン氏はカリウマの共同創業者兼CEOだ。同氏は、カリウマがまず時間をかけて地元の先住民コミュニティに耳を傾け、同社の取り組みを最大限にするには何が必要かを理解することに努めた。「インパクトを与える樹木の数を増やすだけではなく、地域社会との関係向上にも努めている。当社のモットーは『まず行動、あとから報告』。なので、植林活動を開始してからそれを公表したのは約1年後だった」。

NGOと協働して入念な植林を行うテンツリー

一方、テンツリーはエデン・リフォレステーション(Eden Reforestation)やプラント・ウィズ・パーパス(Plant with Purpose)、ツリーズ・フォー・ザ・フューチャー(Trees for the Future)といったNGOと提携して世界14カ国以上で植林を行っている。テンツリーがフォーカスしている植林には2種類ある。1つ目は、セネガルやマラウイのような国々の農家に自分たちの土地に森庭園を植えることを奨励するアグロフォレストリー。2つ目は米国とマダガスカルでの森林再生である。

テンツリーは2020年10月、インパクトウォレット(Impact Wallet)という植林追跡アプリを発表した。これにより、消費者は自分の木が植栽されたバーチャルの島を見ることができる。樹木の種類は衣服コレクションによって異なる。また、今年4月にはベリツリー(Veritree)という名の植林・追跡のためのブロックチェーンベースのB2Bソリューションを導入している。

テンツリーの共同創業者兼CEOのデリック・エムズリー氏は次のように述べている。「興味深いマーケティング要素と消費者にアピールするストーリーがあるため、(森林再生に)進出した企業は多い。それは間違ってはいない。植林は気候変動に対して取り組める具体的で影響力のある解決策のひとつだ。特効薬ではないが、我々にあるツールキットのなかの重要なものだ。だが、透明性と永続性やコミュニティ主導の真のインパクト、インセンティブ構造の適切な構築を保証する方法で適切に実施された場合のみ影響をおよぼすことができる」。

土壌や種の組み合わせを考慮した植林の必要性

植樹アプリ、スギ(SUGi)の創設者であるエリーゼ・ヴァン・ミデレム氏は、植林を行うブランドにとってバイオダイバーシティへの関与と自立的な森林の形成が優先事項であるべきだと述べている。「単一栽培の植林はその土地の生態系にとって利益よりも害をおよぼす可能性がある。追跡をせず、土壌評価や適切な種の選択を行わなければ、植林はバイオダイバーシティを築いて生命の連鎖を回復させるための解決策にはならない」。スギは人の介入なしに森が成長する様子を模倣するために、土壌の準備と小さなエリアでの密な植栽を組み合わせた宮脇方式を用いている。「その地域で自然に発生する在来種のみを使って、ポケット型森林を作った場所が正常に定着して、2~3年で自立した成長ができるようにしている」。

パイソン氏いわく、ブランドは、植栽のタイミングや種子のコレクション、コミュニティの関与を可能にするプロジェクトにフォーカスすべきだという。カリウマの森林再生の取り組みでは直接播種法を用いている。これは樹木の存続の可能性を最大化するために特定の土壌に30以上の種を組み合わせるプロセスで、時間がかかる可能性がある。

エムズリー氏は次のように述べている。「ビジネスの未来は持続可能ではない。回復的な持続可能性は環境に害のあることを減らすわけだが、将来のビジネスは(有害なことをなくして)環境に良いことをもっと行わなければならない」。

[原文:How fashion brands are getting reforestation projects right

ZOFIA ZWIEGLINSKA(翻訳:ぬえよしこ、編集:黒田千聖)

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