ネットフリックス 、グッズ事業で収益源を多様化:「ストレンジャー・シングス」以外の作品にも拡大

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ストリーミング配信大手のネットフリックス(Netflix)は、グッズやブランドとのコラボレーションによる限定商品を通して、トップ番組をファンにとって身近なものにする取り組みを強化している。

同社は5月、ノンアルコールビールのブランドのアスレチックブリューイング(Athletic Brewing)と提携し、3種類の共同ブランドのノンアルコールビールを発売した。最初のビールは、ゲラルツゴールド(Geralt’s Gold)と呼ばれ、ネットフリックスのファンタジードラマ「ウィッチャー(The Witcher)」に登場するアンチヒーロー、ゲラルトオブリヴィア(Geralt of Rivia)にちなんだものだ。この商品は今後2カ月間、米国の一部小売店舗とアスレチックブリューイングのウェブサイトで購入できる。限定版の飲料を注文した先着750人の顧客には、コレクターズグラスを無料で配布した。アスレチックブリューイングとネットフリックスは、さらに2種類の限定版ノンアルコールビールを発売する計画で、詳細は後日発表すると語った。

ネットフリックスは、2016年にオリジナルSFドラマ「ストレンジャー・シングス」を公開してから、ブランド商品への参入に力を入れ始めたが、現在は、ほかのフランチャイズについてファンが期待するような商品コラボレーションを増やそうとしている。ファストカンパニー(Fast Company)によると、ネットフリックスはストレンジャー・シングスの第3シーズンを宣伝するため、特にコカコーラ(Coca-Cola)やバスキンロビンズ(Baskin Robbins)などビッグネームに焦点を当て、約75のブランドパートナーシップを締結した。こうした取り組みは現在、「ウィッチャー」「ブリジャートン家(Bridgerton)」「イカゲーム(Squid Games)」などほかの番組にも範囲が拡大した。たとえば、同社は4月ラコステ(Lacoste)とのパートナーシップによりファッションコレクションを発売した

加入者数の伸びが鈍化

同社がグッズ事業の拡大しようとしているのは、加入者数の伸びが鈍化していることを受けたもので、同社は主力事業以外の収益源を成長させることも試みている。最新の第1四半期(1~3月期)決算で、同社の収益は前年同期比で3.7%増加し、米国、カナダ、オーストラリア地域での収益は8%伸長した。

調査企業ガートナー(Gartner)のマーケティング実践ディレクターアナリストを務めるブラッド・ジャシンスキー氏によると、ストレンジャー・シングスはネットフリックスが商品、ライブ体験、小売店戦略を構築するための中核となるフランチャイズだった。このフランチャイズが成功したことを受けて、同社はNetflix.shopという独自のD2Cグッズショップを2021年にオープンした。「Netflix.shopでは、私たちの番組やブランドに関連した、厳選された高品質のアパレルやライフスタイル商品の独占限定版を定期的にドロップする」と、同社は当時プレスリリースで宣言した。

ガートナーのジャシンスキー氏により引用されたシミラーウェブ(Similar Web)のデータによると、2022年1〜3月のNetflix.shopの訪問者数は、月平均で約33万7000人だった。トラフィックのピークは2022年7月の月間90万人で、これはストレンジャー・シングスの第4シーズンの最終回が配信された月だった。2023年1〜3月の月間平均訪問者数は50万2325人だった。

また、ネットフリックスは2021年に、ウォルマート(Walmart)のウェブサイトで自社商品の販売を開始した。2022年10月にネットフリックスとウォルマートはそのパートナーシップを拡大し、ネットフリックスの商品を2400店舗以上のウォルマート店舗で販売することになった。

「このパートナーシップは、キャラクターやプロパティのプロモーションを行い、現在もそれを続けているが、ストリーミング配信の契約件数を増やすというネットフリックスの主要なビジネスの推進にも直結している素晴らしい取り組みだ」と、ジャシンスキー氏は付け加えた。

ネットフリックスとブランド、両者の思惑

ネットフリックスは現在、ストレンジャー・シングスのような影響力のあるフランチャイズを構築すること、または「どのようなプロパティであれ、スターウォーズ(Star Wars)やアナと雪の女王(Frozen)相当のものを構築する」のが困難になってきたことから、コラボレーションを強化しているようだと、ジャシンスキー氏は述べた。「映画やTV側のコンテンツの数が増え続けるなか、それはますます困難になるだろう」と、同氏は付け加えた。

そのため、ネットフリックスは、すでに実績のあるブランドや新興企業にリーチして、商品に関するコラボレーションを進めている。

アスレチックブリューイングカンパニー(Athletic Brewing Company)の最高マーケティング責任者を務めるアンドリュー・カッツ氏は、ネットフリックスが最初に同氏の会社にLinkedInを通じて接触してきたという。同氏は、このところ「ブランド間のロマンス」はLinkedInからはじまることが多いと述べた。

「ネットフリックスはブランドに興味があった。そして、我々の動向に見ていて、さまざまな商品とのパートナーシップによって、自社独自のリーチをどのように広げられるのかに興味を持ったのだと思う」と、カッツ氏は述べた。「彼らが本当に追い求めているのは、自社の人気番組をいかにしてオーディエンスに近づけるかということだ。つまり、どのようにして、番組を超えたファンダムの構想を作りあげるのかということだ。同社は、それを実現するために、さまざまな商品のメーカーに目を向けているのだ」。

カッツ氏の見解では、ライフスタイルブランドであるアスレチックブリューイングにとって、新しい分野であるエンターテイメントに進出するのは、その巨大なオーディエンス数からみても重要なことだった。ネットフリックスの有料会員数は米国とカナダで約7300万人にのぼる。

「ネットフリックスが当社にとって非常に魅力的だったのは、極めて多くの観客が存在することだった。また、ブランドが新しいオーディエンスにリーチしようとしていたことも重要だ。同じことを繰り返していれば、同じ人々にしかリーチできない。そのため、我々はアピールする対象を広げるとともに、リーチする対象範囲も広げる必要があると考えた」と、カッツ氏は述べた。

売上よりも顧客との関係を優先

アスレチックブリューイングは6月29日、英国で開かれるウィッチャーのプレミア上映会のレッドカーペットで、対面でのアクティベーションも行う。それとは別に同社は、ほかの多くの映画やストリーミング番組に商品を統合する取り組みを行っている。たとえば、同社の商品は5月、プラットフォームのマックス(Max)で配信されたドラマシリーズ「ウォーカー(Walker)」の最終シーンに登場した。

同社にとって、ネットフリックスとのコラボレーションによる初期の成果は上々だった。「当社は最初の日に、ビールとともに限定版のグラスを販売した。この商品は5時間ほどで完売した。しかし、当社にとってもっとも重要だったのは、ゲラルツゴールドを買いに来た人々の20%は、当社にとってまったくはじめての顧客だったことだ」と、カッツ氏は述べた。

目標について、カッツ氏は次のように話した。「売上はもちろん目標のひとつだが、それが最優先の目標ではない。本当に重要なのは、まだ我々のことを知らない人々に対して、我々のブランドと価値提案を紹介することだ」。

ネットフリックスのマーチャンダイジングや商品のコラボレーションへの取り組みは最終的に、「人々の目に触れることがもっとも重要だ。もちろん収益も得られればそれに越したことはないだろうが、人々の目に触れ、ネットフリックスのブランド、そしてオリジナル作品との密接なつながりを作りあげることがもっとも重要なだろう」と、ジャシンスキー氏は述べた。

[原文:Netflix’s merchandise strategy grows beyond ‘Stranger Things’ as it partners with brands like Athletic Brewing and Lacoste]

Vidhi Choudhary(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Athletic Brewing Co.

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