ブランドの説明責任を促進。 サステナビリティ レポートを公開したビューティ・ウェルネスブランドのザ・ニュウコーの事例

DIGIDAY

8月1日、英国を拠点とするビューティ・ウェルネスブランドのザ・ニュウコー(The Nue Co.)は、初のサステナビリティレポートを公式ウェブサイトで公開、若いブランドがどのようにして将来的にも有効なサステナビリティプロファイルを導入し、ブランドの説明責任を促進しているかを紹介している。

2017年に設立されたザ・ニュウコーは、人間と環境や地球との健康に基づく関係性に焦点を当てたブランドだ。バイビー(Bybi)、ユニリーバ(Unilever)傘下のレン(Ren)、ヴァースド(Versed)、ロレアル(L’Oréal)傘下のユース・トゥ・ザ・ピープル(Youth To The People)といった美容ブランドがサステナビリティの目標に関する情報を開示しているのと同様に、ザ・ニュウコーもそのレポートで業界の意識を改革したいと考えている。

最近、英国EUは、消費者製品に関するグリーンウォッシングの法案を提出した。そのため美容業界では、eコマースやソーシャルメディア上でのコミュニケーションやサステナビリティレポートに通常示されている主張を正確にしなくてはならなくなっている。チェンジングマーケッツファウンデーション(Changing Markets Foundation、CMF)の調査によると、ちょうど7月にグリーンウォッシングで告発された消費者製品メーカーの中には、ロレアル、P&G、ロクシタン(L’Occitane)の名前があった。

以下では、美容ブランドの実施可能な目標に着目しつつ、ブランドがレポートを通じて推進している業界の目標について解説する。

ブランドの目標:透明性と説明責任のためのデータ開示

CMFでキャンペーンマネージャーを務めるジョージ・ハーディング=ロールス氏は、美容企業には自社のサステナビリティのデータを開示する責任があると述べている。彼は7月にCMFが主導した美容業界のグリーンウォッシングの調査に関わっており、サステナビリティレポートによる情報開示やデータは、ブランドに責任を課す上で非常に有効だと話す。「どこまで掘り下げて報告するかにもよるし、誰がブランドの責任を負っているのかにもよる。ユニリーバをみると、非常に詳細な報告があり、昨年より何パーセント改善したというような傾向も示している。透明性と(それに対応する)データを提供することはサステナビリティの基本的な柱だ。評価できないものは知り得ないからだ」。

ザ・ニュウコーのプロダクト・アンド・サステナビリティ・バイスプレジデントのフロー・グレンデニング氏は、美容ブランドにとって次のステップとなるのは、ビジネスの意思決定における気候変動に関する説明責任だと言う。サステナビリティレポートは、企業が毎年の進捗状況を把握していくためのひとつの手段だ。ザ・ニュウコーは、B Corp認証と5年以内にネットゼロビジネスへの移行を目標に設定し、それに向けて行動を起こしている。

「ブランドが手にすることができるもので一番価値があるのは、B Corp認証だ。説明責任の観点からして、もっとも公式な採点システムであり、事業内の運営書類を更新し、すべてのステークホルダーに対する法的な責任を示す義務が伴う」と語ったのは、スキンケアブランドのバイビーの共同創業者ドミニカ・ミナロヴィッチ氏だ。B Corp認証を得るには半年から2年かかる。この認証を取得している美容ブランドは、ヴェレダ(Weleda)、サンデーライリー(Sunday Riley)、ドクターハウシュカ(Dr. Hauschka)などほんのわずかである。

ブランドの目標:サステナビリティの報告によってグリーンウォッシングを回避する

サステナビリティアドバイザリー企業ポジティブラグジュアリー(Positive Luxury)の共同CEOエイミー・ネルソン=ベネット氏は、美容ブランドにとってグリーンウォッシングを避けることが重要だと述べている。ポジティブラグジュアリーは、ラグジュアリー市場のサステナビリティ認証であるバタフライマークを運営している企業で、111スキン(111 Skin)やドクターバーバラシュトルム(Dr. Barbara Sturm)と美容分野で協働している。「美容業界はファッションやジュエリーのように製品レベルでトレーサビリティを提供するという大きなプレッシャーにはまださらされていないが、その需要は急速に高まっている」と、彼女は述べている。

ヴァースドのプレジデント、メラニー・ベンダー氏いわく、他の業界と比較すると、美容業界はサステナビリティへの取り組みがまだ始まったばかりの段階にある。「私たちの意図は本物だが、私たちの影響は不足している。サステナビリティに関する報告は、そのギャップを埋める上で重要な役割を果たすことができる」。

ベンダー氏によれば、サステナビリティ・レポートは主に3つの事項を達成すべきだ。第一に、気候、廃棄物、生態系といった分野でブランドが及ぼしている深刻な影響について透明性を提供すること、第二に、それらの影響を軽減するための時間軸に沿った測定可能な目標を定めること、そして第三に、それらの目標達成に向けた進捗状況を報告することである。

ヴァースドでは、国連の持続可能な開発目標(SDGs)に自社のサステナビリティの目標を合わせることに注力し、各製品ごとの環境への影響に関する透明性を確立して、意図的か否かにかかわらずグリーンウォッシングとは一線を画すということを重視している。同社は4月に反グリーンウォッシングの5つの原則を発表した。

ネルソン=ベネット氏は、ブランドは自社のレポートにおける特定の分野を理解し、対策をより深く検討すべきだと述べている。そこには、処方と調達、生物多様性、輸送と物流、生産量、包装や輸送材料などが含まれる。

最後に、グリーンウォッシングの観点では、美容が最悪の違反者である可能性があることをネルソン=ベネット氏は指摘した。「消費者と立法者の両方から、信頼性が再定義されている。いまブランドに期待されているのは、検証可能で事実に反しない主張をすること、そしてサステナビリティのパフォーマンスを公表することだ。ターゲットやそれを達成するための期限を含め、改善すべき点や強みのある分野を示すこと(が目標だ)」。

ブランドの目標:航空輸送と二酸化炭素排出量の削減

ザ・ニュウコーでは、今年の事業の説明責任でもっとも重要な目標として、航空輸送における炭素排出のホットスポットの削減、より軽い輸送のための製品の再設計、有機栽培やコミュニティ所有の生産者からの原料調達への注力が含まれている。

炭素排出は、すべてのブランドにとって特に注目すべき話題となっている。たとえばザ・ニュウコーは、同社のバリューチェーンにおける間接的な排出に由来するスコープ3の排出量の82%が航空貨物によるものであると測定している。その結果、同社は来年、航空機による輸送をできるだけ少なくするよう、方向転換を図っている。

「過去1年間、よりよい予測を行い、在庫を分割することを徹底するため、私たちはシニアプランニングチームと密接に連携してきた」とグレンデニング氏は述べた。「海上輸送やはるかに環境にやさしい方法へとさらに移行している。航空輸送はなるべくなら避けたいので、本当に必要な場合に限って、ごく少量だけにするという方向に動いている」。ザ・ニュウコーの5カ年計画は、影響を与えるすべての人のウェルビーイングを向上させる企業であるという定義のもと、ネットゼロを超えてネットプラスに移行することを目標としている。

企業のカーボンフットプリントの70%を占めるとされるスコープ3排出量については、具体的な数値がなかなか出てこない。ユース・トゥ・ザ・ピープルは、2025年までに排出量を25%削減することを約束しているが、これがスコープ3の領域なのかどうかについては明確ではない。一方、ザ・ニュウコーは、2022年までにスコープ3排出量を50%削減する目標を発表している。

2017年にローンチしたバイビーは、生産における輸送に伴う過剰な炭素排出を避けるため、すべての生産を英国に移す決定を下した。「この業界に入ったばかりの頃、化石燃料の使用、使い捨てプラスチック、サプライチェーン全体での不必要な流通などへの依存に関する悪習慣がかなり多いと実感した」と話すのは、同ブランドの共同創業者エルシー・ラターフォード氏だ。同ブランドは、現在もターゲット(Target)やセフォラ(Sephora)を含むグローバルな小売店舗への流通に関連する二酸化炭素排出量の削減に取り組んでいる。

ブランドの目標:パッケージングサプライチェーンの短縮とパッケージの再設計

グレンデニング氏はサプライチェーンのすべての段階で製品に関するブランドの説明責任を保証するため、ザ・ニュウコーのパッケージングおよび原料調達チームと直接連携している。リピートオーダーでは、同ブランドのバイオプラスチックのリフィルパウチのおかげで平均包装重量が75%削減され、輸送時の二酸化炭素排出量も大幅に削減されている。

同社では、印刷、ラベル付け、シール貼りを1社で行うことで、パッケージングのサプライチェーンを短縮した。また、サプライチェーンからリサイクル不可能なプラスチックを取り除くことにも注力している。「サステナビリティをあらゆる意思決定に確実に反映させるために、仕入れ、包装、調達、物流の各チームと密接に連携している」とグレンデニング氏は述べている。

よりサステナブルになるという意味で、パッケージングは美容ブランドがしばしば注目する分野のひとつだ。たとえばヴァースド、レン、ユース・トゥ・ザ・ピープルはみな、サステナビリティに関するコミュニケーションにおいてパッケージについて言及している。とはいえ、製品の完全なライフサイクル分析を提供してはいない。

ザ・ニュウコーは現在、95%のパッケージが無限にリサイクル可能だと報告している。ユース・トゥ・ザ・ピープルは、ガラスのパッケージの製品を17品目しか提供しておらず、コミットメントが限られた製品であることを示している。レンでは、スキンケアカテゴリーだけで36製品あり、そのうちのいくつかはガラスと再生PET樹脂のパッケージになっている。レンもユース・トゥ・ザ・ピープルも昨年、2025年までに廃棄物をゼロにすることを約束するコンソーシアムに参加している。

「グリーンウォッシングの多くは、パッケージングそのものだと思われる」とハーディング=ロールズ氏は指摘した。「私たちの調査結果でわかったのは、ロレアルのシャンプーのボトルの表面には100%リサイクル包装というラベルが貼られていたが、裏面には『ラベルとキャップを除く』と書かれていた。つまり正確ではなく、誤解を招くものだったのだ」。

[原文:Better brand accountability is coming to beauty]

ZOFIA ZWIEGLINSKA(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)

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