SEO対策に ジェネレーティブAI 活用を試みるパブリッシャー:「この先、何らかの形でSEOの最適化に役立つツールになるだろう」

DIGIDAY

チャットボットがウェブサイトの検索トラフィックを集約することになれば、ChatGPTやBingのようなジェネレーティブAIチャットボットは、一部のパブリッシャーにとって脅威となる可能性がある。しかし、すべてのパブリッシャーがSEO主導のコンテンツを手放す準備ができているわけではない。これに対処する戦略はさまざまだ。

「2023年のNCAA女子バスケットボールトーナメントで優勝したのはどこのチームか?」といった、特定の検索クエリに答えるために公開されたSEO主導の記事ページは、読者を購読者に変えられず、長期にわたってブランドロイヤリティを築くことができなかったため、Web記事としての価値は低くなっている。

バッスル・デジタル・グループ(Bustle Digital Group)のような企業はSEO主導のコンテンツからの脱却を加速させ、よりオリジナルなストーリーやビジュアル、ユニークでパーソナルな切り口のコンテンツを制作している。

コストとリターン

一方、インジェニオ(Ingenio)、チームホイッスル(Team Whistle)、BuzzFeed、ガネット(Gannett)といったほかのパブリッシャーは、ジェネレーティブAI技術がSEO戦略をどのようにサポートできるかを実験している。見出しやキーワードを検索用に最適化したり、新たな話題を見つけ、トラフィックを増やすコンテンツづくりに活かしたりなど、AI技術を活用している。

これらの戦術がどの程度成功するかは不明だ。インジェニオは2021年末にSEOのためにジェネレーティブAIの実験を開始したが、指数関数的にトラフィックが伸びているわけではない。しかし、メディア担当プレジデントのジョシュ・ジャッフ氏は3月27日から29日にかけてコロラド州ベイルで開催されたDIGIDAY PUBLISHING SUMMITで、「トラフィックは増えている」と自信を見せた

また同氏は、人気の検索クエリを中心にAIを使って制作した夢分析のページの一部が、Googleの検索データベースで調査、分析、掲載されるのを「まだ待っている」としたうえで、同じくAIを使って制作した有名人の出生図が、「検索エンジンで上位表示されるまでに時間がかかっている」と話し、「このようなことが起きるには時間がかかるのだ」とまとめた。

インジェニオはバックエンドでこういったテクノロジーを使って見出しの作成、キーワードの調査、メタタグや商品説明の生成を行なっている。また、2022年初頭からジェネレーティブAIを使って、運営するHoroscope.comとAstrology.comで人気の検索クエリを中心に1000件以上の記事を公開してきた。同社は、Horoscope.comで12星座それぞれの相性に関する100以上の記事を、Astrology.comでさまざまなタロットカードの組み合わせに関する数千の記事を制作中であると、ジャッフ氏は述べている。

「コンテンツの作成にコストはかかるが、そのコンテンツから得られるリターンがある」と同氏は言い、「人気のある星座占いや占星術のトピックスほどの毎月頻繁には検索されないロングテールクエリ用のページを制作するために、アーティストやライター、編集者などに費用を投じるのは正しいことではない」と指摘する。「このようなジェネレーティブAIツールを使ってコンテンツを作成し、そのギャップを埋めることでプロセスを大幅に自動化することを正当化できる」。

動画作成にも用いる

チームホイッスルは、TikTokやYouTubeなどのソーシャルプラットフォーム上で動画のメタデータを生成するためにAIを使用しており、これらの動画がより多くバイラル化したと主張している。コンテンツ担当EVPのノア・ワイズマン氏は、「これはテクノロジーによってもたらされたものだ」と述べる。チームホイッスルがAIを使ってリサーチし、メタデータやスクリプトを作成したあるTikTok動画は17万6000回以上再生されている。

同じくAIツールの助けを借りたYouTubeの動画は42万5000回以上再生され、インスタグラムの投稿と動画は5万9000以上の「いいね」を獲得している。

同社は1日に30~50本のTikTok動画を作成しているが、AIがTikTokを公開する際に含めるべきトップキーワードを決定している。「プラットフォームのアルゴリズムにあわせた形でキーワードを浮上させるのに役立つ」とワイズマン氏は言う。

ジェネレーティブAIは、チームホイッスルがソーシャルメディアで最も検索されているトピックや最もパフォーマンスの高いトピックを見つけ、そのトピックに関する動画を作成するのにも役立っているとも同氏は述べている。「この技術は、TikTokの動画からメタタグを生成し、YouTubeに動画をアップロードする際に利用することもできる」。

さらに、「Glasp」という拡張ツールを使って、YouTube動画の要約コンテンツを数秒で生成し、SEOに最適化できるようにしているという。

続々と活用が始まる

ほかのパブリッシャーも、ジェネレーティブAIによるSEOランキングの向上を模索する初期段階に入っている。ブリッジタワーメディア(BridgeTower Media)のタスクフォースには、SEOとウェブ開発の責任者が含まれていると、B2Bメディア企業のデジタル製品管理担当AVPであるデヴィッド・サーベ氏は指摘する。ジェネレーティブAIがどのようにSEOをサポートできるかは、「どんなチャンスがあるのかを見定めるプロセスの一部」だと考えているようだ。

BuzzFeedの広報担当者は、SEOを目的としたジェネレーティブAIの実験を行なっていると話す。またガネットは、キーワード調査やデータ分析などのプロセスでSEO用のAI技術をテストする初期段階にあるが、「まだ何も実装されていない」と広報担当者は言う。

フォーブス(Forbes)はSEOのためにジェネレーティブAIを使用していないが、「この先、何らかの形でSEOの最適化に役立つツールになるだろう」と、最高デジタル・情報責任者のヴァディム・スピツキー氏は電子メールで断言した。

[原文:Publishers test generative AI tools to boost SEO

Sara Guaglione(翻訳:SI Japan、編集:島田涼平)

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