フレグランス の売上が回復へ。いま話題のブランドトップ5からみる復活の理由【Glossy x ローンチメトリックスリサーチ】

DIGIDAY

かつてココ・シャネル氏は「香水なしではエレガンスはありえない。それは、目に見えない、忘れがたい、究極のアクセサリーだ」と言った。世界はこれに同意しているようである。

NPDグループのデータによると、2020年第1四半期と第2四半期のフレグランスの売上はメイクアップやスキンケアと同様に減少した。しかし、フレグランスの売上は、メイクアップやスキンケアとは異なり、第3四半期までに回復し始めたのである。直近の2022年の第3四半期にはフレグランスの売上は前年比で11%増加し、13億ドル(約1746億円)に上っている。ローンチメトリックス(Launchmetrics)によると、MIVに基づく2022年10月のフレグランスのトップ5は、YSL(イヴ・サンローラン)のブラックオピウム オーデパルファム(Black Opium Eau de Parfum)、メゾン フランシス クルジャンのバカラルージュ540 オードパルファム(Maison Francis Kurkdjian Baccarat Rouge 540 Eau de Parfum)、グロシエ(Glossier)のユー オードパルファム(You Eau de Parfum)、アリアナグランデ(Ariana Grande)のクラウド オードパルファム(Cloud Eau de Parfum)、トムフォードのロストチェリー オードパルファム(Tom Ford’s Lost Cherry Eau de Parfum)である。MIVとはメディアインパクト値を表すローンチメトリックス独自の指標であり、インフルエンサー、プリントメディア、セレブ、公式サードパーティパートナー、ブランド自社メディアチャネルの影響を追跡するものだ。YSLのブラックオピウムが720万ドル(約10億円)のMIVでリストの1位に輝いた。

このリストが注目に値するのは、デザイナーフレグランス、メゾン フランシス クルジャンやグロシエのようなニッチなブランド、セレブが手がけたフラグランスのミックスである点だ。これは、かつてデザイナーやセレブだけに独占されていたフレグランスカテゴリーの変化を示している。しかし、フレグランスの歴史を振り返りそのパワーを考察してみると、それぞれがランク入りしたのは驚きではない。

YSL

たとえば、YSLのブラックオピウムは、女優のゾーイ・クラヴィッ氏をアンバサダーに迎えて2015年の発売以来人気を博している。ゾーイレポート(The Zoe Report)によると、ブラックオピウム オーデパルファムは2019年の時点で、1時間あたり36本、または1日あたり887本を売り上げたという。ブラックオピウムの小売価格は1オンス(約30ml)のボトルが83ドル(約1.2万円)で、ブラックコーヒー、ホワイトフラワー、バニラの香りが特徴である。

メゾン フランシス クルジャン

メゾン フランシス クルジャンは2009年に設立、2017年以降はLVMH モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン(LVMH)が過半数を所有している。同ブランドはその推進のために感覚的なストーリーテリングに注力しており、MIVで580万ドル(約8億円)を獲得した。創業以来、クルジャン氏と共同創業者兼CEOのマーク・シャヤ氏は、製品開発においてコマーシャルとマーケティングインタレストを避けている。バカラルージュ540の1.2オンス(約35ml)のボトルの価格は195ドル(約2.7万円)で、サフラン、ジャスミン、アンバーウッド、モミのレジン、シーダーが特徴だ。この製品は特にTikTokで高い人気を誇っており、「メゾン フランシス クルジャンの香水」の関連動画は累計で3930万回再生されている。11月の初めに限定版ゴールドフレックボディオイルのバージョンが販売され、この香水の人気がフォローアップされている。

動画コンテンツがフレグランス人気を推進

香水はTikTokでは大人気であり、#PerfumeTokは17億回、#PerfumeTikTokは41億回再生されている。

ローンチメトリックスによると、インフルエンサーは「私のいまのお気に入り(My Current Favorites)」や「TikTokでバイラルになっている製品(Viral TikTok products)」などの動画コンテンツ形式への関心とエンゲージメントを構築することで、セレブの40倍を超えるMIVを推進している。YouTubeはフレグランスのマーケティングに対するトップのプラットフォームであり、関連MIVとプレイスメントでほかのあらゆるソーシャルメディアチャネルを上回っている。

フレグランスブランドの動画コンテンツの力は以前から注目されていた。それは、(クリスマス)休暇時期のコマーシャルには、シャネル(Chanel)、ディオール(Dior)のようなデザイナーフレグランス向けの映画的で不可解な広告がつきものであることからもわかる。2016年のニューヨーク・タイムズ紙(New York Times)の記事で、ロレアルUSAの国際デザイナーコレクション担当プレジデントであるアレクサンドル・チュエイリ氏は、「オンラインで公開された香水の動画は確実にオンライン販売につながる」と述べている。同氏はYSLのブラックオピウムを総括したが、ブラックオピウムは2015年2月にハーモニー・コリーン氏による短編映画がYSLBeauty.comとSephora.comで公開された後、売上の急増を見せた。チュエイリ氏によると、30mlのボトルが(映画の)ローンチの最初の週にセフォラで売上ナンバー1になったという。

ローンチメトリックスのCMO、アリソン・ブリンゲ氏は次のように述べている。「業界でもっとも話題になっているフレグランス製品を見ると、かつてはどのフレグランスブランドにとっても頼れるマーケティング戦略だったセレブリティが(MIVサブカテゴリーでは)もっとも価値を推進していないことがわかったのは興味深い。個人的な表現の必要性が高まり、ピアツーピアのレコメンデーションに対する信頼が高まっているため、ブランドはインフルエンサーにフォーカスして特定の目的を持つ明確なオーディエンスをターゲットにして、最終的に売上につなげている」。

グロシエ

ストーリーテリングはフレグランスの販売において常に大きな役割を果たしてきた。香りのある製品の販売には特有の制限があるため、ストーリーテリングの役割は特にオンラインには当てはまる。なかでもフレグランスに対する意識は外見的なセクシーさよりも内面の美を重視する方向に進化している。グロシエはこの点を理解してうまく活用し成果を上げている。2021年のGlossyの記事によると、グロシエ ユーの売上は2017年の発売以来、毎年2桁の割合で成長しているという。2020年にはグロシエ ユーは収益ベースでグロシエのトップ5の1商品だった。グロシエ ユーは10月にMIVで400万ドル(約5.5億円)を獲得した。

2020年7月に顧客750人を対象に実施したフレグランスの調査では、グロシエ ユーの購入者の25%が試さずに購入したと回答している。また、昨年この製品を購入した顧客の40%近くは、それがグロシエ製品の初めての購入だったという。その時点ではグロシエはソーシャルメディアチャネルで頻繁にグロシエ ユーを表示して、有料広告を追加することでこの製品に再フォーカスしていた。主なフォーカスは広告に製品のレビューを取り入れることだった。レビューはグロシエ ユーの製品ページでも目立つように扱われている。レビューには製品の視覚的な描写や文学的な描写が多いが、フレグランスの軽さについてのコメントや、他人から褒められたという報告、時間が経つにつれて香りのプロファイルが変化するというコメントなどそれほど大げさではないレビューにも共通点が見られる。

アリアナグランデ

優れたセレブフラグランスとしてアリアナグランデのクラウドには何か特別なものがあるようだ。事実、ハーパーズ バザー(Harper’s Bazaar)の11月の記事では、アリアナグランデは「最後の大物セレブの香水」と呼ばれていた。クラウドはグランデ氏が手がけたフラグランスの5番目のものだ。クラウドのボトルデザインはほかの4製品のものとは大きく異なっており、雲の形をしたプラスチックの台のあるクリアブルーのボトルに入っている。MIVで290万ドル(約4億円)を獲得。前述のハーパーズバザーの記事では、「クラウドの特徴ははっきりした1つの香調ではなく、包み込むような心地良い品質だ」と述べられている。バカラルージュ540に似ていると言われることが多く、ゾーイレポートによると2021年には11秒ごとにクラウド1本が売れたという。1オンスの製品は45ドル(約6300円)。

トムフォード

トムフォードが240万ドル(約3億3400万円)のMIVで5位にランクインしたのにも納得できる。Glossyはエスティ ローダー カンパニーズ(The Estée Lauder Companies)によるトムフォード インターナショナルラベルの買収に関してレポートしたが、それによるとビューティはトムフォードの全事業の70~80%を占め、フレグランスはビューティの売上の約50%を占めているという。エスティ ローダー カンパニーズによると、トムフォードビューティの今年度の純売上高は前年比で約25%の増加だという。ロストチェリーは2018年にローンチ、ビターアーモンド、リキュール、ブラックチェリーのトップノートが特徴だ。トムフォード独特のスクエアボトルと魅惑的な赤色のロストチェリーの価格は1オンスで240ドル(約3.3万円)。冗談めかした少々スキャンダラスなネーミングは言うまでもなく、この人気のフレグランスは2021年の限定版メイクアップコレクションのインスピレーションにもなっている。

[原文:Glossy x Launchmetrics Research: The buzziest fragrances include YSL’s Black Opium and Glossier’s You

EMMA SANDLER(翻訳:ぬえよしこ、編集:山岸祐加子)

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