バッスル・デジタル・グループ(Bustle Digital Group:以下、BDG)はここ数年、ライフスタイル部門のブランド刷新に取り組んでいる。具体的には、イベント事業の独占性を高め、高級志向のファッションブランドを新たに獲得し、コンテンツにショッパブル要素を加えてきた。
しかし、編集に関しては、BDGの看板ブランドであるバッスル(Bustle)とバッスルUK(Bustle UK)において、編集長のシャーロット・オーウェン氏を中心に、コンテンツの変革が進められている。オーウェン氏のチームは雑誌の成功事例を参考に、毎月のデジタル巻頭特集という形で、より質の高いセレブリティインタビューを追求するようになった。ただし、インタビューの戦略は、ほかの出版物でよく見られるやり方とは異なる。
2018年5月のバッスルUKの立ち上げに携わったオーウェン氏は、2020年1月から米国版と英国版の両方を率いることになり、およそ2年後の2022年4月、Z世代向けメディアブランドであるエリート・デイリー(Elite Daily)の編集長の兼任をスタートした。
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エリート・デイリーは2016年末、かつての親会社デイリー・メール・アンド・ジェネラル・トラスト(Daily Mail and General Trust:以下、DMGT)に無価値と判断され、2017年4月、BDGに買収された。以来、かつて18~24歳に対して持っていた影響力を回復するため、懸命に努力している。エリート・デイリーは2012年のサイト開設からわずか1年で黒字化を達成し、2015年1月、DMGTに4000万ドル(約54億5000万円)超で買収されたが、間もなく、多くのデジタル出版物とともに、Facebookのアルゴリズム変更の犠牲になった。
しかし、この1年はトラフィックが伸びている。コムスコア(Comscore)によれば、2021年5月のユニークビジター数は910万人だったが、2022年5月には2070万人に増加した。一方、バッスルのトラフィックは同時期、前年比約23%減少し、2130万人から1730万人になったとコムスコアは報告している。
オーウェン氏はDIGIDAYのポッドキャストで、大学生などの若年層で再びエリート・デイリーの影響力を回復するため、これまでリーダーを務めてきた経験とバッスルで成功した編集戦略をどのように生かしているかを語ってくれた。
それでは、ポッドキャストのハイライトをお届けしよう。なお、読みやすさを考慮し、内容に若干の編集を加えている。
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TikTokのスペースを競うのではなく、物語に広がりを持たせる
あの世代はすべてのニュースをソーシャルメディアで入手していることがわかっている。すべてのデータがそう物語っている。そして、私はいつもチームに対し、さまざまなレーンについて考え、自分たちがどのレーンにいるかを意識するよう促している。彼らがTikTokで見ているものとそっくりのコンテンツをつくることが私たちの仕事だとは思っていない。何か違うものを提供することが私たちの仕事だと思う。
バッスルの読者もTikTokのアカウントを持っているが、何も投稿しない。彼らはよくわからない奇妙なトレンドをひたすら見ている。そこで、私たちはこれ(トレンド)が何を意味するかを取り上げることにした。それらの記事はとても好調で、私たちの成長カテゴリーになった。
エリート・デイリーの場合、(読者は)それらのプラットフォームをよく利用している。(しかし、私たちは)すべてを同じ場所に集めるのではなく、彼らがプラットフォームを離れたとき、興味を持ちそうなスレッドについて考えている。また、何か違うものを提供したいとも強く思っている。エリート・デイリーのDNAとメンタルヘルス、テレビ、エンターテインメントなど、私たちが大切にしているものを受け継ぎながら、彼らがTikTokで見ている人の魅力を引き出し、TikTokでは見られないもの、つまり、より深い内容を提供することだ。ひとつの情報源の情報を伝えるのではなく、ジャーナリストが複数の専門家にインタビューしている。
思いも寄らない人をプロファイリング
私たちはどのようなタレントと仕事をすべきかを学んでいるところだ。立ち上げ当初は、タレントに仕事を依頼するとき、可能な限り最高レベルのタレントを狙う傾向があったと感じている。そして、今はまだその傾向が残っている。本当に有名な人は、明らかに多くのエンゲージメントをもたらす。しかし、これはエリート・デイリーでも推し進めたいことだが、私はバッスルのチームに、誰をプロファイリングするかについては、どこまでも戦略的に考えるよう促してきた。
あなたが友人たちと話題にしているのは誰か? その名前がTwitterでトレンドになっているのを見たことがあるか? 雑誌の表紙やプロフィールインタビューに登場するのは思いも寄らない人々だ。2022年のバッスルはその好例だ。私たちはかつてポーンハブ(Pornhub)で最も視聴されていたパフォーマー、ミア・ハリファ氏のプロフィールインタビューを行った。そのトラフィックは彼女にとって、とてつもなく大きなものだった。
なぜなら、多くのミレニアル世代にとって、彼女はとても身近な存在であり、彼女が何者かを知っていて、彼女の物語もいくらか知っているかもしれないが、よく考えられたインタビューは受けたことがなかったためだ。実際、今回のインタビューでは、彼女の内面が驚くほど明らかにされている。そのようなタレントを見つけることが本当に重要だ。
エリート・デイリーでは、Z世代のオーディエンスに合う人々を見つける必要がある。2~3年前からTikTokで見ているが、誰もそのような扱いをしてこなかった人々だ。
退屈を打ち破る
私たちはプレスツアーを尊重しており、喜んで参加し、可能な限りタレントと一緒に過ごしているが、プレスツアーには限界がある。部屋に座り、15分刻みでインタビューを受けていると、彼らはすぐ同じ言葉を繰り返すようになる。そこで、エリート・デイリーでは、あらゆるレベルの編集者とともに、セレブリティへの質問について考え、他社と質問が重ならないように努力している。そうしなければ、他社と同じ情報を伝えることになるためだ。特にインターネットでは、それ以上のものを提供する必要がある。
そしてこれは、私がインターンのときとバニティ・フェア(Vanity Fair)にいたときに教わった最も重要な事柄に行き着く。それは、「退屈であってはならない」ということだ。視線を逸らし、携帯電話を手に取ったり、メールに返信したりしたら、それは退屈ということだ。
できるだけ下品なテーマを選べばいいと考える人もいるが、そういうわけではない。たとえば、私の愛読誌ロンドン・レビュー・オブ・ブックス(London Review of Books)には、鳥の渡りをテーマにした1万ワードの記事があるが、見事にまとめられていて、とても面白い。そして、すべてのコンテンツに「退屈」という基準があることを思い出させてくれる。
オーウェン氏が受け継ぐインタビュー戦略
ここで最大の基本(的な問い)に立ち返る。その問いとは、何に関心があるかだ。広報担当者からのメールに書いてある推奨の話題ではなく、自分が本当に興味があることだ。私がライターたちにいつも伝えていることがもうひとつある。その人物の名前をインターネットで検索し、最新のニュースを確認することだ。人々はその人物について何を知りたがっているのだろう? また、最近起きたことについて質問すると、まだ誰にもその質問をされていないという結果になることがある。つまり、独占的な言葉を手に入れられる可能性が高いということだ。
しかし、私は11歳のときから知っている同級生たちとワッツアップ(WhatsApp)のグループをつくっていて、それが調査グループのようなものになっている。彼らはさまざまな人生を歩んでおり、ある人物について何に興味があるかを尋ねると、現実の人々は何を知りたがっているのかについての、実にいいバロメーターになる。月並みな表現だが、人々が何を気に掛けているかについては、ニューヨーク(やロサンゼルス)のバブルから抜け出す必要がある。バッスルもエリート・デイリーも、米国の両岸に暮らす人々のための出版物ではない。大学生であれ、新米の母親であれ、私たちは全米の女性に語り掛けたいと心から思っている。
[原文:Bustle’s Charlotte Owen is on a mission to turn around Elite Daily]
Kayleigh Barber(翻訳:米井香織/ガリレオ、編集:黒田千聖)