こちらは、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です
※モダンリテール[日本版]は、DIGIDAY[日本版]内のバーティカルサイトとなります
初期のデータによると、Amazonプライムデーには、米国の記録的な高インフレに対抗するため、割引を求める多くの買い物客が集まった。
アドビデジタルエコノミーインデックス(Adobe Digital Economy Index)の予測によると、Amazonプライムデー初日のオンライン売上は7.8%増加し、60億ドルを超えたという。しかし同時に、米国の消費者インフレ率は6月に9.1%増加し、過去40年間で最も急激なペースで増加した。アドビのバイスプレジデントであるパット・ブラウン氏は声明で、「プライムデーのイベント初日の勢いと力強い成長は、インフレの市場環境のなか、新しいレベルの成長を引き出そうとしている小売業者を支援するものです」と述べている。
Advertisement
Amazonによると、2022年のプライムデーでは3億点以上の商品が販売されたという。シアトルの巨人である同社にとって過去最大のイベントとなった。顧客は、Amazonで販売している1億の小規模事業者から商品を購入し、30億ドル(約4170億円)以上を費やしたことになる。
生活必需品は好調も、自社製品は低調
13日水曜日に終了した今夏のショッピングイベントは、6月21・22日で総額118億ドル(約1640億円)を売り上げた昨年の同イベントの成果を上回る見込みだ。プライムデーはこれまでも家電製品の売上に支えられてきたが、米モダンリテールが取材した専門家によると、今年は衣類や、家庭用品、ペット用品、その他の消費財のカテゴリーの販売が好調だったという。まとめると、プライムデーが年々大きくなる一方で、eコマースの巨人にとって売上の伸びは難しくなっている。また、今年は顧客がより安価な商品を買いだめしたため、Amazonの利益率に影響を与える可能性がある。
eコマースソフトウェアプロバイダ開発を手がけるプロフィテロ(Profitero)でインサイト担当バイスプレジデントを務めるアンドリュー・パール氏は、このインフレ時代に人々が価値を最大化するために大幅な割引を利用したため、スナックや、ペーパータオル、カミソリ、洗剤などの生活必需品のバルクでの取引がかなり人気だった、と述べている。パール氏は、Amazonが今回のプライムデーを「この48時間のあいだに、サムズクラブ(Sam’s Club)やコストコ(Costco)などの実店舗から財布のシェアを奪うと同時に、まだAmazonを頻繁に利用していない人を囲い込む」チャンスだと捉えたようだと述べている。
リテール・テクノロジー(Retail Technology)の取締役兼発行人のミヤ・ナイツ氏は、インフレが家計を圧迫するなか、プライム会員は、ほかの商品よりも食料品や日用品を優先的に購入していると強調した。同氏は、「家庭用品や食料品は消費者の買い物リストの上位にある。たとえば、家電製品の売上はカテゴリー別に見ると低くなっており、インフレや物価上昇が、プライム会員が購入する商品の種類に影響を与えていることを示唆している」と述べている。
Amazonは、米国の家庭で使用される日常的な定番商品を中心に、お買い得品や割引を幅広く販売した。たとえば、クエーカー(Quaker)のオートミールの朝食用シリアルは3個入りのは6.85ドル(約950円)だった。オーゲイン(Orgain)のオーガニック植物性たんぱく質のアーモンドミルクは6本で16.76ドル(約2300円)だ。Amazonでは、ゲータレードのボトル12本入りが60%以上、フリトレーのベイクドチップス40個入りは20%引きの18.63ドル(約2600円)で販売されていた。
Amazonはプライムデーの数字では昨年を上回ったものの、スマートスピーカーのアレクサ(Alexa)とエコー(Echo)の販売台数は、過去数年に比べてそれほど多くなかったかもしれないと、ナイツ氏は指摘する。「初期の指標によると、2021年の売上を上回る勢いだ。しかし、自社商品の売上が減少傾向にあるため、Amazonの利益率においては打撃を受けるのではないだろうか」と付け加えた。
販売業者たちが感じた「手応え」
玩具メーカーのメイクドゥ(Makedo)や家電メーカーのウノサウンズ(Uno Sounds)などを顧客に持つAmazonのマーケティングエージェンシーであるフォードベーカー(Fordebaker)によると、同社の顧客の平均売上は、「プライムデー初日に月商の14〜25%を記録した」という。
フォードベーカーの創業者兼CEOであるトーマス・ベーカー氏は、「米国の顧客は、通常の売上の割合として最大の売上高ピークを見た」と述べている。「従来からうまくいっているカテゴリーはうまくいっている。ペットのカテゴリーは間違いなく急成長している。自由裁量的購入の増加は成長率が低下しているが、これは経済状況を考慮すると予想できる」とベーカー氏は付け加えた。
フォードベーカー社は7月12日、同社の売り手が、「コンバージョン率が確実に10~18%増加した」と米モダンリテールに語った。
今年は、全体的に見て、衣料品や、アパレル、宝飾品に関連するものが特に好調だと、eコマースアクセラレータのパターン(Pattern)で最高ブランド責任者を務めるジョシュ・バロン氏は米モダンリテールに語った。
Amazonによると、プライムデー期間中に米国でもっとも売れた商品は、韓国のスキンケアブランドのラネージュ(Laneige)やニューフェイス(NuFACE)の美容製品、リーバイス(Levi’s)の衣料アイテム、Appleウォッチシリーズ7(Apple Watch Series 7)、クレスト(Crest)の歯のホワイトニングストリップ、オーラルB(Oral-B)の電動歯ブラシなどだったという。また、米国人が購入したサングラスや水着もそれぞれ100万点を超えたという。
「反響は大きかった。今回のプライムデーは、我々の歴史のなかで最高のものになりそうだ」と、ソレル(Sorel)やパナソニック(Panasonic)といったブランドを手がけるバロン氏は語った。
新規加盟するD2Cブランドも
プロフィテロはまた、ソーシャルメディアのインフルエンサーがプライムデーの特典として販売した商品が驚異的に増加したことも報告した。Amazonのインフルエンサープログラムは6月、家庭用品や、衣類、バッグ、化粧品などの厳選されたカテゴリーの特売コンテンツの制作に多くの時間を費やした。
「インフルエンサーが販売した案件をレビューしたところ、平均で938%の販売ランク上昇を記録した。しかし、Amazonライブ機能(購入機能付きのライブ配信)がプライムデー割引に追加されると、この平均アップ率はさらに2.5倍になり、商品の平均販売ランクアップ率は2300%となった」とパール氏は話した。
今年、調理器具ブランドのキャラウェイ(Caraway)といったD2C販売業者が、はじめてAmazonストアを立ち上げ、厳しい小売環境に対抗するためにプライムデーに参加したが、それには正当な理由があった。
「D2Cの販売業者は、プライムデーを、Amazonでの販売の導入機会として利用することが多くなっている。イベント期間中に達成された著しいトラフィックの急増は、マーケットプレイスの将来の成長性に対する大きな焦点と予測を与える」とプロフィテロのパール氏は付け加えた。
大型小売店への影響
大型小売店も、Amazonの2日間のショッピングフェスティバルに対抗するような露骨なマーケティングはしていないにせよ、夏の特売品を継続的に宣伝した。小売業のAI・価格分析企業であるデータウィーブ(DataWeave)によると、ターゲット(Target)は、余剰在庫を動かすために衣料品の値引き率をさらに高め、Amazonと激しく競合したという。
小売業界の専門家は、プライムデーの需要は初日にピークを迎え、翌13日には徐々に減少しているだろうと付け加えた。だが、2日目の数字はまだ少しずつ入ってきている。「どんな販売促進イベントでも、初日に最高のパフォーマンスを発揮する傾向がある」 とバロン氏は話した。
同氏は、「この要因の一つは、消費者がキャンペーン期間が短いことを知っていて、ほしい商品を見かけたらすぐに利用したいと思うからだ。もうひとつの要因は、Amazonのブランドは、初日にもっとも高い割引率を示し、2日目にはその割引率を低くする傾向があることだ」と付け加えた。
[原文:Amazon Briefing: Takeaways from this year’s Prime Day]
Melissa Daniels(翻訳・編集:戸田美子)
Image via Amazon