デ・インフルエシング とロイヤルティを、美容ブランドリーダーはもっとも懸念している:サステナビリティやWeb3への投資も話題に

DIGIDAY

2月28日ニューヨークにて、GlossyとGoogleは美容業界のリーダーを招いた夕食会を主催。ユニリーバ(Unilever)、コティ(Coty)、エスティローダー(Estée Lauder)などの企業のエグゼクティブらが一堂に会し、現在抱えている課題や機会について話し合った。今日のブランドロイヤルティとは何か、デ・インフルエシングにどう対処するか、サステナビリティ認証やWeb3への投資が意味するものについてなどが話題として挙がった。

以下は、3つの主要トピックのハイライトである。

デ・インフルエシングによって説明責任が生じる

参加したエグゼクティブらは、インフルエンサーがソーシャルメディアで製品の否定的なレビューを行う「デ・インフルエシング(De-influencing)」というトレンドについて話し合った。これに関するハッシュタグの付いた投稿が2140万ビューになるなど、デ・インフルエシングというコンセプトは1月にTikTokを席巻している。このトレンドによって顧客が特定のブランドの製品を敬遠するようになっており、ブランドの売上や人気に悪影響を及ぼしている。エグゼクティブのなかには、このトレンドのせいでさらに多くのインフルエンサーが自身の主張を補強するためにネガティブなレビューに力を入れるようになるのではないか、と懸念を示す者もいた。

あるエグゼクティブはオフレコで、このトレンドが意図的に活用されている方法を説明し、その力を指摘している。「当社では、意図的な妨害行為(によるデ・インフルエシング)やテロリストへの対応の経験があるエージェンシーと提携さえしている。ブランドに対するインフルエンサーのサイバー攻撃から自社を守る方法を特定できるよう、ソーシャルパターンをきちんと理解するために取り組んでいる」。

一部のブランドにとって問題なのは、デ・インフルエシングが予測不可能であり、そのほとんどに根拠がないことだ。「いつでも誰にでも起こりうることであり、事実がどうだろうが関係ない。人々が望んでいるストーリーというだけなのだ」と別のエグゼクティブは述べた。「インフルエンサーの間では、個人的な利益や露出のために話題になっているものに飛びつくという文化がある」。

「ブランドの観点からすると、非常に恐ろしい状況だ。インフルエンサーは当然ながらブランドのために多くのことをしてくれるが、同時にブランドを大いに傷つけることもできるからだ」。

だが、明るい面を強調するエグゼクティブもおり、デ・インフルエシングによって顧客に対するブランドの説明責任が促進され、製品の効能に関する透明性が強化されるという点を指摘している。

製品を超えたロイヤルティ

顧客が1年に購入する化粧品はわずか4点といわれているが、顧客が買い求めて継続して愛用してくれる美容アイテムをブランド側が売り出す能力には限界がある。「一流ブランド、大手3社でさえ(年間販売数は)1.2~1.4個にとどまるだろう」と、ある美容業界のエグゼクティブは述べた。

カラーメイクがロイヤルティを大いに高めることはほぼないだろうという点で、エグゼクティブらは同意している。しかしファンデーションのようにすばらしいロイヤルティを生むカテゴリーもいくつか存在すると、あるエグゼクティブは述べた。「自分の肌のタイプに合ったファンデーションを見つけて、それが自分のシェードであれば、別の製品に変えることを逡巡する。それがひとつのブランドに対するロイヤリティへと発展する」。

今日、美容の顧客のロイヤルティを競うことはまた、競争力のある戦略的なロイヤルティプログラムを運用することも意味している。

自社のロイヤルティプログラムについて説明したあるエグゼクティブは、「チャネルロイヤルティを考慮する時期だ。D2Cビジネスをブランドの購入に最適な場所にしようとしている」と述べた。そのプログラムでは、セフォラ(Sephora)でブランドを購入した買い物客に、ブランドのD2Cチャネルで使用できるポイントを付与している。「つまり、好みのチャネルに対するロイヤルティを高めるような、オムニチャネルのロイヤルティプログラムをどのように構築するか、ということだ」。

長期にわたる慎重な投資

経済状況を鑑みると、サステナビリティの認定に投資する時間や、イノベーションとWeb3のような新たな機会への資本投資など、ブランドは投資に対してますます思慮深くならざるをえなくなっている。

「Web3でのいくつかの初期のプロジェクトではブランドに大きな後光が差していた」と、ある大手美容ブランドのエグゼクティブは語った。「2021年夏にチームと一緒にローンチしたNFTプロジェクトについて、いまだに記事を書きたいという記者がいる。だが現在は関連する投資に対しては、どれもその価値があるかどうか真剣に検討している最中だ。こうしたプロジェクトは非常に多くの投資を必要とする。長期的なビジョンと長期的なロードマップの検討、さらには優先順位付けと予算が求められている」。

一方で、ロイヤルティツールとしてのNFTは投資に見合うだけの価値があると話すエグゼクティブもいる。「ロイヤルティの役割としてのNFTは非常に初期段階にある」とあるエグゼクティブは述べた。「ナイキ(Nike)がドットスウッシュ(Dot Swoosh)を立ち上げ、スターバックス(Starbucks)がオデッセイ(Odyssey)をローンチしたのは2022年の第4四半期だった。どちらのブランドも、コミュニティとロイヤルティに関連するブロックチェーンを活用している一流ブランドだ。だがコミュニティからの欲求があるのは、特にWeb3について話をするのをやめて、ただシームレスで豊かに感じられる体験を提供することに力を入れたときだ。何かしらの魔法が解き放たれるのはそこだ」。

また、参加したリーダーのなかには、ブランドがいち早くサステナビリティ認証に飛びついたことで予期せぬ影響があったと報告した者もいた。あるエグゼクティブは「当社はどの大企業よりも早く(サステナビリティ中心の協定に)サインをした」と語る。「いまそれが当社にとって想像を絶するほど大きな足かせとなっている。なぜならサプライヤーの8割が外されたからだ。当社はラグジュアリーブランドではないし、いまではあらゆる技術革新が認定されなくてはならなくなったので、特定の部品や素材を使用することができない。だが、2023年という時期に、この協定から手を引くかといえば、答えはノーだ。そんなことをすれば反感を買うからだ。ほとんどの消費者は、当社がこの協定を結んでいることをいまだに知らないか、あるいは単にいいことだと思っているだけだ」。

しかしブランドによっては、特に2023年からEUでの消費者製品の製造に影響を与えることになる法律を考慮するなら、その投資に見合うだけの価値がある。「B Corp認証について決断を迫られた。そのために900時間もの時間を費やして作業する必要があるのか? 我々は、ブランドにいちばん忠実で購入のリピート率がもっとも高い顧客にとっては重要なことだと決断した。そうした顧客は『なぜそんなに時間がかかったのか』という反応だった。顧客からはB Corpであることを期待されている。コアな消費者を惹きつけ、ブランドに対する愛情を深めるのに役に立つのだ」。

[原文:De-influencing and loyalty top concerns for beauty brand leaders]

ZOFIA ZWIEGLINSKA(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)

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