ポッドキャスト 広告は浸透も、バイヤーはDSPを通じた購入に消極的:より効率的、効果的な在庫の購入方法は

DIGIDAY

ポッドキャスト広告の改善が進み、プログラマティックチャネルを通じての広告購入が容易になった。しかし、米DIGIDAYが話を聞いたところ、バイヤーたちのあいだでは、ポッドキャスト広告に、DSPを通じた本格的なプログラマティックバイイングを取り入れる動きは進んでいないようだ。

これには様々な理由がある。ポッドキャストではホストリード広告(host-read ads:番組のホストが読み上げる広告)が依然として強く、プログラマティックで購入できるインベントリを持つポッドキャストネットワークや番組ばかりではない。またバイヤーは、複数のポッドキャストネットワークを横断して特定のオーディエンスセグメントやバーティカルカテゴリーをターゲットにする場合、コンテンツを吟味してコンテキストに合ったものを選びたいと考えることが多い。

プログラマティックバイイングの計画も

しかし、4人のバイヤーに話を聞いたところ、DSPを通じた広告購入にほとんど関心のないバイヤーがいる一方で、テクノロジーやターゲティングおよび測定機能が向上し、また、プログラマティックで購入できるインベントリーが増えるのにしたがって、2023年はプログラマティックでの広告購入をテストしたり、購入費を増やしたりすることを計画しているバイヤーもいるようだ。

ポッドキャストへの広告支出のうち、プログラマティックバイイングが占める割合は、依然としてごく小さい。IAB(インタラクティブ広告協議会)によると、2021年にプログラマティックがポッドキャストの広告支出全体に占める割合は2%だった。2024年には、米国のポッドキャスト広告支出の10%弱を占めるようになると、インサイダーインテリジェンス(Insider Intelligence)は予測する。

アズウィズ(AdsWizz)でプログラマティック担当バイスプレジデントを務めるロビン・マイヤーズ氏は、「オーディオ分野におけるプログラマティックは、他のメディアチャネルと比べて、まだどちらかといえば初期段階にある」と話す。

なぜプログラマティック広告の購入をためらうのか?

ポッドキャスト広告の一部のバイヤーは、なぜDSPを通じた広告の購入に消極的なのだろうか? 理由のひとつは、特定のインベントリーがまだプログラマティックで購入できないことだとバイヤーたちはいう。大口購入、スポンサーシップ、ホストリード広告、カスタムフォーマットは通常、Spotifyやパンドラ(Pandora)、アイハートメディア(iHeartMedia)などのプラットフォームから直接購入されると、彼らは米DIGIDAYに語っている。

ホライゾン・メディア(Horizon Media)のバイスプレジデントでアドバンストおよびデジタルオーディオ担当マネージングディレクターを務めるマリア・ターリン氏は、DSPを通してポッドキャスト広告のインベントリーを購入することは、「私のチームにとって魅力的ではない」と述べている。

オーシャンメディア(Ocean Media)でポッドキャストおよびデジタルオーディオ戦略担当ディレクターを務めるクリステン・コセオ氏は、ネットワークとの関係が構築されていることから、自身のチームでは彼らと直接仕事をすることを好むと話す。「相手先の担当者のほとんどは、もう何年も一緒に仕事をしている間柄だ。したがって、そこには信頼がある」。

DSPを通じたポッドキャスト広告の購入は、ある意味で、エージェンシーの仕事を増やすことになると、コセオ氏は話す。同氏のチームで、すべてが効率的に実行されていることを確認し、結果をモニタリングする必要が生じるからだ。一方、ポッドキャストネットワークと直接やり取りする場合、ネットワーク側が「我々の提示するパラメータに基づいてすべてを設定する。直接やり取りすることで、我々はパートナーを信頼し、正しいターゲティングパラメータを選択して、我々の要求どおりにキャンペーンを設定する作業を任せられる」とコセオ氏は話す。

また予算の少ないブランドの場合、DSPでは「好ましい配置」、すなわち人気ポッドキャスト番組に挿入される広告などに入札することも困難だと、CMIのイノベーション担当シニアバイスプレジデント、マーク・パパス氏は述べている。

あるバイヤー(エージェンシーがポッドキャスト広告のプログラマティックバイイングに乗り気でない現状について、名前を明かして話すことを望まなかった)は、「ポッドキャストのエコシステムには、他のメディアには存在しないプログラマティック反対派」が存在しており、それはプログラマティックディスプレイ広告の購入をめぐる問題で、DSPのやり方が「批判を受けている」ためではないかと語っている。

それでも一部のバイヤーがプログラマティックを好む理由

DSPを通じて取引しているバイヤーにとって、最大の利点は、レポーティングが優れていることだ。バイヤーは、広告がどの番組やエピソードに挿入されたかを確認でき、またフリークエンシー管理、すなわち特定の世帯に広告が何回配信されたかをコントロールできる。これは直接購入では(今のところ)できないことだと、2人のバイヤーは述べている。とはいえ、アイハートメディアのCEO、コーナル・バーン氏によると、同社は直接販売したインベントリーについて、同等のレポーティングを提供しているという。

UMで統合投資担当シニアバイスプレジデントを務めるモリー・シュルツ氏は、同氏のチームがDSPを通じた購入を好むのは、複数のネットワークにまたがって特定のオーディエンスセグメントをターゲットにできるからだと述べている。それゆえ、DSPを通じて広告を購入することは、予算が少なく「大規模な支出を投入できない」クライアントにも適していると、CMIのパパス氏はいう。DSPを利用することで、クライアントは少ない予算でポッドキャスト広告を試し、「オーディオ分野に足を踏み入れる」ことができるというわけだ。

同時にそれは、価格戦略でもある。プログラマティックバイイングは「市場の需要に見合った金額を支払うことを可能に」するものであり、「リアルタイムのレート」を示してくれるとシュルツ氏はいう。

シュルツ氏自身は、ポッドキャスト広告をプログラマティックで購入することを好むが、それでも同氏のチームは、ネットワークと直接話をすることで、ポッドキャストシリーズのホストや内容を吟味する必要があると指摘する。「我々が(他のメディアチャネルで)使っているようなサードパーティの検証ツールは、ポッドキャストでは使えない。そのため、安全性を確保するためには、多くのファーストパーティの情報に頼らざるを得ない」として、シュルツ氏は「オーディエンスを購入したり、コンテンツバーティカルを購入したりするだけでは、十分な安全策とはいえない。もう少し深く掘り下げる必要がある」と述べている。

ポッドキャストでもプログラマティック購入が増える見込み

IABのリポートでは、広告主のポッドキャストへの支出に占めるプログラマティックチャネルの割合は2%だったが、オムニコム・メディアグループ(Omnicom Media Group)傘下のハーツ&サイエンス(Hearts & Science)のオーディオ担当シニアディレクター、ボブ・ハント氏によると、同エージェンシーの支出は、2%をやや上回っているという。同氏のチームは、DSPでの購入額をさらに増やしたい考えだ。

「ぜひ割合を増やしたい」とハント氏はいう。具体的にプログラマティックチャネルの割合をどの程度増やすつもりかについては言及を避けたが、ポッドキャスト分野を試してみる広告主が増えるのにしたがって、DSPでの購入額も今後増えていくとの見通しを示した。

「我々は、クライアントだけでなく、パートナーサイドとも、プログラマティックでの取引について話し合うことが増えている。1年~1年半ほど前まで、それは単なるアイデアという側面が大きく、あくまで可能性はあるという話だった。しかし2023年現在、我々はそれを現実にするべく取り組んでいる」とハント氏は述べている。

ハント氏によると、プログラマティックバイイングが広がらない主な理由は、ポッドキャストのインベントリーの大部分がネットワークから直接購入するしかなく、人気ポッドキャスト番組の多くはインベントリーを直接販売で売り切ってしまうため、SSP(サプライサイドプラットフォーム)に回すインベントリーが残らないことだという。それでも、SSPで販売されるインベントリーを増やすネットワークが増えつつあると、ハント氏とシュルツ氏はいう。それに加え、DSPが番組およびエピソードレベルのレポーティングを提供できるように分析を強化していることもあって、DSPを通じたポッドキャスト広告の購入は「以前よりはるかに魅力的な提案」になっていると、ハント氏は述べている。

コセオ氏は、オーシャンメディアが今年、DSPを通じた広告購入に「少しずつ乗り出すかもしれない」と述べ、プログラマティックバイイングが、クライアントにとってより効率的または効果的なインベントリーの購入方法かどうかを確めたいとしている。

DSPを通じた広告購入は、「ポッドキャストの世界ではかなり新しい」ことだと、アイハートメディアCEOのバーン氏はいう。「(エージェンシーの持株会社が)乗り出してきて、そのような購入を増やすようになれば、今後12~24カ月後に、我々のメディアは率直に言って、新たな転換点のようなものを迎える可能性がある」と同氏は語った。

[原文:Why podcast ad buyers are hesitant to spend through demand-side platforms

Sara Guaglione(翻訳:高橋朋子/ガリレオ、編集:分島翔平)

Source

タイトルとURLをコピーしました