インクルーシブマネキン が台頭する裏側:サヴェージ x フェンティ、オールドネイビーなどの最新事例

DIGIDAY

米国の典型的なアパレル店舗で目にする標準的なマネキン。それは白く、背が高く、信じられないほどスリムで細長い首に長い手足、つまり伝統的なスーパーモデルのようである。

しかし、ファッションショーに登場するモデルが消費者の多様性を反映するように変化するにつれ、同じことがマネキンにも起こっている。サヴェージ x フェンティ(Savage x Fenty)は最新店舗を5月初めにオープンしたが、同店には独自に開発した多様な体型のマネキンであふれている。小売ブランドは異なるサイズを提供するサイズインクルーシブな店舗体験を提供しようと試みているため、ターゲット(Target)ナイキ(Nike)オールドネイビー(Old Navy)ノードストローム(Nordstrom)でも多様な体型のマネキンが見られるようになっている。

多様なサイズとポーズに注力するサヴェージ x フェンティ

サヴェージ x フェンティのCMO、ナタリー・グズマン氏は、モールの典型的なマネキンは時代遅れであり、サヴェージ x フェンティの多様な顧客を体現するものではないと述べている。

「定番のマネキンには満足できなかったので、独自のマネキンを開発した」。

サヴェージ x フェンティのマネキンの基礎になったのは、デザインチームが服のフィットのために起用したモデルたちのさまざまな体型だった。グズマン氏によると、これらのカスタムマネキンによってサヴェージ x フェンティの個性をいっそう店舗体験に注入できるようになるという。

「適切なサイズ展開に加えて、適切なポーズも取り入れたかった」とグズマン氏。「我が社にとっては、これは展示のような体験を生み出す機会だった。店内を歩くとサヴェージ x フェンティがどんなブランドであるかというメッセージを体感できるだろう」。

1製品に3サイズのモデルを起用するオールドネイビー

マネキンに対するこの新しいフォーカスは、小売体験のあらゆる部分がインクルーシブであるべきだという理念を反映している。それは、オールドネイビーの2021年のボディクオリティ(Bodequality)プロジェクトの裏にあった推進力だった。同社のウィメンズ・マタニティ担当グローバルバイスプレジデントのアリソン・パートリッジ・スティックニー氏は、インクルーシブであるためにはショッピング体験のあらゆる部分を見直す必要があると述べている。

パートリッジ・スティックニー氏は次のように語っている。「我々の顧客はあらゆる場所で自分自身を見ることができる。オンラインでは、サイズ4、10、18と異なる3サイズのモデルによる全商品の画像が見られるし、同じ多様性は店舗のマネキンにも反映されている」。

カスタムマネキンの製造現場

しかし、新しいマネキンを製造するのは容易ではない。既製のマネキンならほとんどのメーカーから1体数百ドル(約12700円)ほどで購入できるのだが、カスタムマネキンはもっと高価になる。社歴約90年のマネキンメーカー、グレンカー(Greneker)のバイスプレジデント・クリエイティブディレクターであるデイヴィッド・ナランホ氏によると、カスタムマネキンのデザインとプロトタイプ制作には1.2万〜1.5万ドル(約154万〜192万円)の開発コストがかかる可能性があるという。しかも、これはマネキン購入以前の話である。

アンダーアーマー(Under Armour)、ディズニー(Disney)、トリッド(Torrid)など約50の小売店向けにマネキンを製造しているグレンカーは、(プラスサイズ向けブランドの)レーンブライアント(Lane Bryant)と協働した後、2004年からプラスサイズのマネキンを製造している。ナランホ氏によると、同社ではこの3年間でさまざまな小売業者からの依頼が増えたという。

「インクルーシブなマネキンについては、最初は女性ファッション用だった」とナランホ氏。「今ではプラスサイズの男性やプラスサイズの子ども、そしてもっとインクルーシブな肌の色への関心が高まっている。ディズニーからは『ダッドボッド(お父さん体型)』や子どものマネキンの依頼があった。なぜなら父親や子どもがディズニーストアに来る客だからだ」。

インクルーシブな肌の色のマネキン

異なる肌の色に対応するのは異なるペイントを使うだけなので、新しい体型よりも制作は簡単だとナラン氏は述べている。しかし、肌色に関しても微妙な点はあるようだ。同氏によると、一部の人々を除外していると思われないように、ブランドはあらゆる肌色を取り入れる必要があるという。現実には存在しないグレーのようなニュートラルな色調を選択するという手間のかからない修正手段を取るブランドもある。また、アンダーアーマーのように、店舗の色調に合わせて特定のグレーの色調を依頼するブランドもある。

ナランホ氏によると、この点においてディズニーは、黒人、ラテン系、アジア系の消費者を反映するためにいろいろな顔の特徴や肌色を備えた全範囲のマネキンを選んだそうである。

独立系ブランドにもチャンス

完全にカスタム化したマネキンのコストは高いかもしれないが、グレンカーのようなメーカーから既製のマネキンを購入できるようになれば、独立系ブランドもマネキンのインクルーシビティを追求できるようになるかもしれない。

ユニバーサルスタンダード(Universal Standard)の共同創設者、アレックス・ウォルドマン氏は、ブランドは、新しいマネキンへの出費を追加コストや負担としてではなく、自社のオーディエンスを反映するための基礎であると見なすべきだと述べている。ユニバーサルスタンダードはインクルーシブなファッションへの動向のリーダーの1社である。ショールームにはサイズ00から40までのマネキンがあり、同社が費やしたマネキン1体の価格は約300ドル(約3.8万円)。

「サイズが2だろうと32だろうと、誰にでも同じように購入する権利がある。したがって、我が社は財務上のあらゆる決定にサイズのインクルーシビティと品質を最優先にしている」とウォルドマン氏。「ニューヨークのソーホーにあるショールームのデザインに関してはどんなマネキンを使うかには迷いがなかった。マネキンはユニバーサルスタンダードの顧客、つまり米国の平均的な女性の姿を反映しているのだ」。

[原文:Inside the rise of inclusive mannequins

DANNY PARISI(翻訳:ぬえよしこ、編集:黒田千聖)

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