TikTok が「ファッショントレンドの温床」となった理由

DIGIDAY

2010年代半ばから後半にかけて、ファッションのトレンドを見つけるのに最適の場はインスタグラムだった。2000年代後半はスタイルブログで、さらにそれ以前は写真の豊富な紙の雑誌だった。そしていま、ユーザーが何が流行なのかを知るために行く場としてその役割を担っているのは、TikTokだ。

スタイリングサービスのスティッチフィックス(Stitch Fix)が12月21日に発表した2022年末のスタイルレポートでは、トレンドやスタイルのインスピレーションや指針としてTikTokを参考にする顧客が、過去2年間で85%増加したと報告している。同時に、インスタグラムへの言及は減少している。

トレンドを支配するTikTok

TikTokは、スキニージーンズからの脱却といったスタイルにおける幅広いトレンドと、GAPのロゴのパーカーやスキムス(Skims)のワンピースのような特定の製品の普及の両方を牽引する要因となっている。マーケティング会社パワーデジタル(Power Digital)のファッションアカウントディレクター、ジャラー・バーク氏によれば、TikTokのリーチ(11月時点のアクティブユーザー数は10億人)はトレンドを支配するひとつの方法だが、ユーザーが自分たちがやることを何であれ「バイブス」に変えてしまおうという動機付ける方法でもある。

TikTokがスキーウェアのトレンドを煽っていることに関して、バーク氏は「TikTokでは、人々は趣味の美的な側面を演出している」とGlossyに語っている。「活動の『バイブス化』は、ブランドが新しい人々を意欲的に迎え入れるための、ひとつの方法となり得る」。

年間を通してのほかの大きなTikTokトレンドは、#TikTokMadeMeBuyItのハッシュタグから生まれたもので、ビルケンシュトック(Birkenstock)のクロッグのバイラル、L.L.ビーン(L.L. Bean)のトートバッグのほか、イチゴの模様のドレス、ノットシャツ、コンバットブーツなど同プラットフォーム上ですばやく話題になり消え去っていった無数のマイクロトレンドがある。

TikTokの費用対効果と影響力の強さ

サイモン・プロパティ・グループ(Simon Property Group)とオーセンティック・ブランズ・グループ(Authentic Brands Group)の合弁会社であるスパーク・グループ(SPARC Group)のCEOナタリー・レヴィ氏は、スパークが所有するブランドのひとつであるエアロポステール(Aeropostale)の活性化にTikTokが役立ったと評価している。2021年にウィメンズのデニムがTikTok上でスキニージーンズからルーズフィットへと移行し始めたとき、エアロポステールの「マムジーンズ」がこのプラットフォームでバイラルとなり、デニムの売上が急増、エアロポステールのデニム戦略にも変化が起きた。ルーズデニムが2020年のエアロポステールのデニムの売上に占める割合はわずか7%に過ぎなかったが、現在は40%になっている。同ブランドの利益は今年、約15%伸びた。

「TikTokのROIがいかに高いがわかったので、それ以降、TikTokを倍増させている」とレヴィ氏は語ったが、広告費の詳細な額については同社は公表していない。エアロポステールは現在、レクシー・ヒダルゴ氏(フォロワー数210万人)を含む数十人のTikTokインフルエンサーと有料投稿で提携しており、さらに製品もプレゼントしている。「TikTokでは多くのバイラルな瞬間があった」。

さらにその影響力を証明するのが、TikTokから始まったトレンドのアグリゲーションが人気となっていることだ。『フーホワットウェア(Who What Wear)』や『リファイナリー29(Refinery29)』、『ポップシュガー(Popsugar)』などの出版物は、「TikTokで拡大中の秋8つのトレンド」、「いまTikTokでバイラルになっているファッションブランド」、「現在TikTokでトレンドになっている7つのバイラルファッションアイテム」といった見出しで、定期的にリストを投稿している。

TikTokに追随する他のプラットフォーム

インスタグラムは、TikTokがファッション界を勝ち取った方法に明らかに気づいており、リール(Reels)のような模倣機能を導入した。それに対して、キム・カーダシアン氏のような著名なユーザーたちは、「TikTokになろうとするのはやめて」とインスタグラムに要請している。YouTube、Amazon、Etsy(エッツィー)といった他のプラットフォームもすべて、今年、TikTokのようなショート形式の動画フィードを独自に導入している。しかしTikTokは、9月にローンチしたビーリアル(BeReal)を模倣した機能で行ったように、必要であれば躊躇せずに成功している競合他社を模倣する。

消費者やファッションメディアが、ファッショントレンドの指針を求めてTikTokに向かうようになっているため、ファッションブランドがそれに追随するのは理にかなっている。バーバリー(Burberry)のような老舗ブランドが成長を続けバナナ・リパブリック(Banana Republic)のような苦境にあるブランドが新たなオーディエンスを見つけるのにTikTokは役立っているのだ。

[原文:Why TikTok became the breeding ground for fashion trends]

DANNY PARISI(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)

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