「私の声は、多くの人々の声と共鳴している」美容における表現の重要性を語る:リブティンテッド創業者ディーピカ・マティヤラ氏

DIGIDAY

2015年、濃い肌の色の色素過剰を補正する方法を紹介してバイラルになったYouTubeのチュートリアルで広く注目されたインフルエンサー、ディーピカ・マティヤラ氏は、2017年に美容ブランドのリブティンテッド(Live Tinted)を創業した。

オーディエンスからのフィードバックを取り入れ、マティヤラ氏は非白人を意識して作られたアイ、リップ、チークのマルチスティックとともにブランドを立ち上げた。それ以降、このブランドはチュートリアルを提供し、幅広いシェードのファンデーションとクルーエルティフリー製品を販売することで、インクルーシブで文化的であることを優先している。同ブランドは2021年にモンタージュベンチャーズ(Montage Ventures)が主導して300万ドル(約3億9000万円)のシード資金を調達した。

AAPI(アジア・太平洋諸島系アメリカ人)ヘリテージ月間を記念して、リブティンテッドは5月1日にAAPIビューティボックスをリリースしている。またこの5月には、美容におけるレプリゼンテーションを強調した継続的な努力が評価され、マティヤラ氏はタイム誌の「次世代リーダー」のひとりに選ばれた。

メイクアップに興味があった若い南アジアの少女が、自身のビューティーブランドを運営するCEOになるまでの道のりについて、マティヤラ氏がGlossyに語った。

ーーリブティンテッドをローンチしようと思った、なにか特別なきっかけはあったか?

「私は10年以上前に美容業界に入り、企業側で仕事をしていた。だが自分のYoutubeチャンネルで、目の下の色を補正するハックを紹介する動画をリリースして、それがバイラルになったことで状況が一変した。その動画から、私はフルタイムのビューティインフルエンサーになった。

でもこのジャーニーに乗り出すにあたり、私のように物語から取り残されていると感じたことがある人が、この業界の中で自分自身が表現されているのを必ず目にすることができるよう、美容カテゴリーでもっと大きくポジティブなムーブメントに火をつけたいとも思った。

最初は単なるデジタルプラットフォームとして2018年にリブティンテッドを創業し、現在はあらゆる肌の色をした美容の消費者が共通の経験をもとにひとつになるための、本格的なブランドとして成長している。この業界において有色人種の人たちが、自分たちを見てくれている、自分たちの声が聞かれていると感じられるような空間と製品を作るために、私たちはイノベーションを行っており、コミュニティのフィードバックを活用して、このコミュニティを今日も構築し続けていることは幸運だと思っている」。

ーーリブティンテッドとのジャーニーは、全体として美容に対する見方や美容業界における考えを変えたか?

「リブティンテッドを作ったことで、美容のレンズから見たコミュニティや団結力についての理解が深まり、視野が広がった。私たちはみな、自分が思う以上に美容に関する悩みや経験を共有している。

リブティンテッドをコミュニティのプラットフォームとしてスタートさせたことによって、目に見える変化やカテゴリー全体の変化をまさしく引き起こしており、よりインクルーシブなだけでなく、より直感的で思慮深い、新たな美容の未来を創造していると信じている。リブティンテッドは、毎日使う女性や男性が真に求めているものを見据えて製品を作っている。

このブランドを始めたことで、私が私であることについて、そして自分が達成すべきことについて自信が持てるようになった。私の中の小さな女の子は、自分にまったく自信がなかった。自分の居場所はないと感じていたし、自分がかわいいとも思えなかった。いまでは、私の肌は自分が気に入っている特徴だ。そして私の声が、多くの人々の声と共鳴していることも知っている。私は目的を見つけたし、それが私を前進させ続ける原動力となっている」。

ーーリブティンテッドのコミュニティへの注力は、販売する製品にどのような影響を与えているか?

「(コミュニティでの)会話が、最初の製品のローンチに役立った。ヒュースティック(Huestick)というその製品は、目元、口元、頬に使えるスティックタイプで、色素過剰のバランスを整えることができるというもの。私たちのコミュニティがもっとも懸念しているのは目の下のクマと色素過剰であり、それに役立つ製品を求めているという、クラウドソーシングのフィードバックに基づいてこの製品が誕生した。いつもこのような形で、コミュニティから直接インサイトを引き出しながら、革新し続けている」。

ーーリブティンテッドのAAPIビューティボックスの背景にあるアイデアは何か?

「今年のAAPIヘリテージ月間を祝うにあたっては、リブティンテッドだけでなく、献身的な方法でコミュニティを強調し続け、特に美容業界に変化をもたらしているすばらしい他のAAPIブランドと協働してプロモーションを行っている。私たちは社会では全員が勝つことはできないと教育されてきたが、現実には、私たちは一緒により強くなっている。

今回ちょうどリリースしたカスタムビューティーボックスには、ココカインド(Cocokind)、タワー28(Tower28)、フェイブルアンドメイン(Fable & Mane)、グロウレシピ(Glow Recipe)、ヒーローコスメティックス(Hero Cosmetics)、ジンスーン(Jinsoon)、マウントライ(Mount Lai)といった8つのAAPI創業ブランドが含まれている。皆、自分たちのブランドをユニークに表現するものを提案しており、その組み合わせはこのコミュニティの中で私たちがいかに多様であるかを美しく象徴するものとなった。これは真にアジア文化を称賛するものだ。1箱につき10ドル(約1300円)がAAPIコミュニティを支援する団体に寄付される」。

ーーリブティンテッドの製品やその背景にある物語には、あなたの文化的な美容習慣がどの程度浸透しているか?

「ブランドの新製品やキャンペーンを開発する際、つねに自分のルーツである南アジアについて考えている。あらゆる肌の色の女性を受け入れたいと考えているが、特に多くのアジア系を含む有色人種の女性にとって有効な選択肢を生み出すことを専門としている。

たとえば、1月に発売したスープヒュー・ハイパーピグメンテーション・スティック(SUPEHUE Hyperpigmentation Stick)は、多様性とインクルージョンに根ざしたキャンペーンとともに発表された。このローンチのキャンペーンで特に重要だったのは、レタッチされていない本物の画像をフィーチャーすること。私自身と一緒に、アチエン・アグトゥ氏(インスタグラムのフォロワー数40万8000人)、アイシャ・ハルン氏(インスタグラムのフォロワー数30万4000人)といった南アジアやBIPOC(黒人、先住民、有色人種)の流行を作り出している人々が登場している」。

ーーブランド全体を通して行ってきたあらゆる仕事や、カラリズムを解体するための取り組みについて、若い頃のあなたはどう思うだろうか?

「若い私はとても誇りに思うはず。最初の製品の発売から、今日のような美容とスキンケアのラインアップを提供するブランドに成長し、南アジア系初のメイクアップブランドとしてアルタ(Ulta)に参入、さらについ数週間前には同社の今年台頭したブランド(Emerging Brand of the Year)を受賞するなど、信じられないような重要な節目を通過してきた。これらの努力すべてを通じて、より多くの若いPOC(有色人種)の少女や未来の女性リーダーが、美の物語に含まれること、そしてそこからインスピレーションを受けていると感じてほしいと願っている」。

ーー南アジア女性として、またCEOとして直面した障害は何か?

「美容業界において軽視されていると感じている人々が世界中にいることが、ますます明白になっている。これは、私が真正面から取り組もうとしている障害であり、自分も成長する過程で経験したことで、また美容のルーチンに関して未来の世代が対処しなくなるようにと願うスティグマである。

ポジティブな点は、現在、美容業界の基準がよりインクルーシブで多様なものへと転換しつつある最中だということ。レプリゼンテーションがもはやバズワードではなく、ブランドのDNAの一部として当たり前になるところまで到達することが重要だ。

最後に、有色人種の女性にとって資金を確保することはまだ本当に難しい。有色人種の女性に投資すること、それが形だけのものになっていることについて、まだ多くの教育が必要であると認識している。しかし、ほかのBIPOCの創業者やブランドとのパートナーシップの成功を通じて、私たちはともに勝利することができることを証明している」。

ーーあなたの生い立ちを念頭に置くと、アジア系と非アジア系の消費者に対するマーケティングや広告のアプローチは異なるか?

「私たちのブランドとマーケティング活動は、BIPOCコミュニティ全体を対象としている。それは有色人種として、私たちは自分が思っている以上に多くの共通点を持っているという、シンプルな真実からきている。私たちは経験、懸念、挑戦、勝利を共有しており、したがって、マーケティングメッセージと広告はこの単純な真実を反映している。

私たちの製品は、すべての肌の色の人たちのためにつくられている。それが差別化の重要なポイントであり、その上でさらに、パワフルな文化的ストーリーテリングとビジュアルを通じて、誰もが自分のルーツやアイデンティティ、文化を受け入れることができるようインスピレーションを与えることを目指している。

ーーインクルーシビティや、アジア人が創業して率いるブランドがさらに台頭しているということに関して、起業家や消費者の視点から、この業界はどのように変化していくと思うか?

「すべてのブランドにとって、より多様なグローバルな消費者を中心にキャンペーンやメッセージ、製品イノベーションを行うことは、引き続き当たり前のこととなっていくだろう。私自身、有色人女性の創業者として、美に関する悩みに関しては、私たちを取り巻くすべてのコミュニティと、私たち全員が共有する経験から目をそむけないことが重要だと考えている。互いの意見に耳を傾け、その結果として、これらのニーズを真に反映した製品を作ることが美容カテゴリーにおける成功のカギであり、今後数年間でイノベーションが少しずつ変化していくのを目にするだろう」。

[原文:‘My voice echoes the voices of many’: Live Tinted founder Deepica Mutyala on the importance of representation in beauty]

GABRIELA GARCÍA-ASTOLFI(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)

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