からあげ店 コロナ前から2割増 – 東京商工リサーチ(TSR)

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コロナ禍で、街に「からあげ屋さん」を見かけることが増えた。東京商工リサーチ(TSR)の保有する企業データベース(約390万社)で、「からあげ」専業及び関連事業(以下、「からあげ屋さん」)を営む企業は、2021年9月末で235社にのぼった。新型コロナ感染拡大前の2019年9月末は190社だったが、コロナ禍で45社(23.6%増)増えた。

 生活様式の変化でテイクアウト(持ち帰り)とデリバリー(宅配)需要を取り込んだ格好だ。
 「からあげ屋さん」は2017年から2018年にかけ、大手チェーン店の参入などで一度目のブームが起きた。その後、2019年は新規参入が鈍化したが、コロナ禍の2020年に再び「からあげ屋さん」業態への参入が目立ち始めた。

 地区別では「からあげ屋さん」235社のうち、九州が96社(構成比40.8%)で突出。次いで、関東47社(同20.0%)、近畿35社(同14.8%)と続く。資本金別では、個人企業他が118社(同50.2%)と半数以上を占め、小資本の企業が進出しやすい業態を反映している。
 緊急事態宣言やまん延防止等重点措置下で飲食店は苦境が続くが、「からあげ屋さん」の運営企業数は堅調に伸びている。酒類の提供停止や休業要請で打撃を受けた居酒屋が、「からあげ屋さん」に参入するケースも散見される。価格も比較的安価で、子供から大人までファン層が幅広い「からあげ屋さん」は、テイクアウトなどとの相性の良さも強みになっている。

 コロナ禍で客足が減った飲食店の起死回生策となるのか、あるいはブームが沈静化するのか、今後の動向が注目される。

  • ※本調査は、東京商工リサーチの企業データベース(対象約390万社)から、営業種目や業績変動要因(主要分)に「からあげ(表記ゆれ含む)」類の記載があるものを抽出、分析した。

「からあげ屋さん」運営企業がコロナ前から2割

 「からあげ屋さん」を運営する企業は、2021年9月末で235社にのぼる。コロナ前の2019年9月末から45社(23.6%増)増加した。また、「からあげ屋さん」がブームになる前の2017年3月末の109社からは、2.1倍と大幅に増えたことがわかった。
 大手チェーンの居酒屋やレストランはコロナ禍で客足が鈍り、退店が加速している。その一方、生活様式の変化に加え、テイクアウトやデリバリーなど新たな業態との相性が良い「からあげ屋さん」は、年々市場を広げている。

 街の「からあげ屋さん」は、比較的少ない人手と狭いスペースでも出店が可能で、初期投資の負担も軽く抑えられる。このため、他業種からの業態転換や、事業多角化の一環として本業外の事業に新規参入するケースも散見される。

「からあげ屋さん」、最多は九州が4割

 「からあげ屋さん」235社の本社所在地は、最多が九州の96社(構成比40.8%)だった。次いで、関東の47社(同20.0%)、近畿の35社(同14.8%)の順。
 養鶏が盛んで、鶏肉消費量も多い九州は、人口の多い関東や近畿の2倍以上の「からあげ屋さん」の運営企業がある。
 九州の県別では、福岡県がトップの44社。次いで、唐揚げのメッカとして知られる大分県が35社で続く。九州は、設立年の判明する「からあげ屋さん」法人33社中、2017年以前の設立が26社(構成比78.7%)を占める。九州は「からあげ屋さん」ブーム前から、事業者が多いのも特徴。

 資本金別では、「個人企業他」が118社と最多で、半数以上(構成比50.2%)を占めた。次いで、「100万円以上500万円未満」の51社(同21.7%)、「500万円以上1,000万円未満」の27社(同11.4%)の順。
 「からあげ屋さん」は、他の飲食店に比べ、少ない初期投資でも開業できるメリットのほか、FC方式で展開するケースも多い。
 FC店への加盟は比較的容易なため、個人企業や資本金500万円未満で開業する事業者も目立つ。

 設立年が判明した「からあげ屋さん」法人(個人企業他を除く)は117社。このうち、88社(構成比75.2%)が2016年以前に設立されている。2017年は新設法人は7社にとどまるが、業態転換などでFC参入が増え、全体の事業者数は大幅に増えた。
 2017年以降、「からあげ屋さん」の参入が新設法人を上回っており、これは他事業からの業態転換が多いことを示している。

 新型コロナ感染拡大で打撃を受けた飲食業界は、持続化給付金や時短営業協力金など、各種支援策に下支えされている。だが、居酒屋などを中心に、売上減少やコスト負担が大きい店舗では退店が続き、厳しい経営環境が続いている。
 こうしたなか、飲食店の業態転換として人気の高いテイクアウトやデリバリーと「からあげ屋さん」の相性は良く、新規参入する企業は増加をたどっている。
 ただ、「からあげ屋さん」の多くは過小資本で、少ない人員が従事する小・零細企業が占めている。ここまで成長をたどった「からあげ」ブームだが、長引くコロナ禍で同業他社の参入が増えると、そろそろ淘汰の波が起こる可能性もある。
 子供から大人まで「からあげ」の人気は幅広い。安価さも購入層の広がりに一役買っているが、コンビニなどとの競合もあり、これまでの成長をたどるか、淘汰の時代に入るか分岐点を迎えている。

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