ディズニー、 アドレッサブル 広告強化のため幹部を補強:「データドリブンな広告の重要性が増している」

DIGIDAY

ターゲティング広告は、デジタルの世界ではすでに主流かもしれないが、拡大中のテレビ広告市場においてはまだこれからのアプローチだ。ただし、徐々にではあるが、状況は変化してきている。

その一例が、エンターテインメント複合企業ウォルト・ディズニー・カンパニー(The Walt Disney Company)だ。同社では、オーディエンスベースの広告ーー「ターゲティング広告」「データドリブン広告」「アドレッサブル広告」「アドバンス広告」などとも呼ばれるーーが広告事業全体に占める割合が拡大しているため、広告部門のデータ関連担当チームを強化している。

「データ活用による収益が当社の収益全体の中でどれほどの役割を果たしているかを、広告市場に示すことが重要だ」と、ディズニー・アドバタイジング(Disney Advertising)のクライアントソリューションおよびアドレッサブルイネーブルメント担当エグゼクティブ・バイスプレジデント、リサ・バレンティノ氏はいう。

進む幹部の採用と権限拡大

ウォルト・ディズニー・カンパニーは、アドレッサブルセールス担当シニア・バイスプレジデントとして、先進的テレビ広告会社ケイデント(Cadent)のチーフデータオフィサー兼プラットフォーム担当ヘッドだったジェイミー・パワー氏を採用した。また、ダナ・マグロー氏をオーディエンスモデリングおよびデータサイエンス担当シニア・バイスプレジデントに昇格させ、データイネーブルメント及びカテゴリーストラテジー担当シニア・バイスプレジデントのダニエル・ブラウン氏の職務範囲をメジャメントとアナリティクスにまで拡大した。

これらの人事に加え、ウォルト・ディズニー・カンパニーはブラウン氏の直属としてメジャメント専任のエグゼクティブを採用する方向で、パワー氏、マグロー氏、ブラウン氏の直属の上司にあたるバレンティノ氏によれば、「この役職は現在募集中」だそうだ。

誤解のないように言っておくが、オーディエンスベースの広告はすでにウォルト・ディズニー・カンパニーの広告事業のかなりの部分を占めている。同社によれば、2021年のアップフロント市場で契約した取引の40%がアドレッサブル広告に充てられたという。

ただし、同社は「アドレッサブル」の定義を広義にとらえている点に注意が必要だ。伝統的にこの言葉は、従来のテレビ上で流され、各家庭をターゲットにした広告を指すが、ディズニー社による定義では、同社のストリーミングやデジタルプロパティ内で流れるオーディエンスベースの広告も含まれる。

アドレッサブル広告の役割は増大

ちなみに、従来どおりのアドレッサブルの定義を採用しているテレビネットワークの役員によると、2022年に確保するアップフロント契約においてアドレッサブルが占める割合は「一桁台後半」を予想しているという。10%未満というと大したことはないように聞こえるかもしれないが、このテレビネットワークグループのアップフロント費に占めるアドレッサブルの割合は2021年から倍増しており、データドリブン広告の重要性が増していることを示す数字であるといえる。

歴史的にみれば、従来型のアドレッサブルは、アップフロントでは目立つ存在ですらなかったし、分野によっては今でもそうだ。別のテレビネットワークの幹部は、「アドレッサブルとプログラマティックはいつも話題に上るのだが、アップフロントに関する検討事項の中には入ってこない」と話している。

言い換えれば、ウォルト・ディズニー・カンパニーによるアドレッサブルの拡大定義は、その事業規模に対する見方を歪めてしまうが、一方で、広告バイヤーや売り手側から見た従来型ビデオやストリーミング、デジタルビデオの境界があいまいであるために、テレビにおけるデータドリブン広告の果たす役割が増大していることを反映した結果でもあるのだ。

「チャネルの融合には多くのチャンスがある。歴史をみれば、まずリニア広告、そしてデータドリブンのリニア広告、それからアドレッサブル、コネクテッドTVと続く。今、それらが重なり始めているところだ」と、あるエージェンシー幹部は語っている。

より「デジタル」型のアプローチへ

また、メジャーなテレビネットワークは、幅広いターゲット層を対象にした広告をもとにした事業から、デジタル式のデータドリブンなアプローチを指向した事業へと、シフトする動きを加速させようとしている。たとえばウォルト・ディズニー・カンパニーと、メディアグループのNBCユニバーサル(NBCUniversal)は、それぞれが持つデータを広告主のデータと照合し、より高度な広告およびメジャメントを促進するため、クリーンルーム設置している

また巨大マスメディア企業のパラマウント(Paramount)は、有料テレビのプロバイダーと協働し、これまでに5000万世帯分のアドレッサブルな足跡を集積した。同じくAMCネットワーク(AMC Networks)は、同社のオリジナル番組のリニア放送中にアドレッサブル広告の挿入を行っている。

「今後2年間で大きな変革が生じる分野だと我々は考えている」と、バレンティノ氏は語っている。

[原文:Disney taps executives to bolster audience-based advertising as a base of its business

Tim Peterson(翻訳:SI Japan、編集:猿渡さとみ)

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