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オフラインに移行するD2C企業が増えるにつれ、店舗内でのマーチャンダイジングはより重要性を増してきている。ブレンドジェット(BlendJet)によれば、小売店頭のディスプレイを個別化することが、店舗内で売上を伸ばすのに役立ったという。
個人用ブレンダーメーカーのブレンドジェットは2017年、オンライン専売のブランドとして創設され、最初の数年間に専門小売店での販売を始めた。同社は創設以来、オンラインで根強い支持者を増やすことを重視してきた。同社はインスタグラムでもっともフォローされているブレンダーのブランドを自称しており、64万5000人のフォロワーを抱えている。また、Facebookに作られた同社のレシピグループには10万人のメンバーが存在する。
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同社は2020年までに、ベッド・バス・アンド・ビヨンド(Bed Bath & Beyond)、ベストバイ(Best Buy)、コールズ(Kohl’s)、シーブイエス(CVS)、ウォルマート(Walmart)、ターゲット(Target)などの大手小売業者と販売パートナーシップを締結。ブレンドジェットはさまざまな色、パターン、および独占コラボレーションの製品を販売していることで知られている。最近ではリサ・フランク氏とコラボレーションのブレンダーを発売した。合計すると、同ブランドは米国の1万を超える店舗に加えて、キューブイシー(QVC)やほかのデジタルマーケットプレイスでも販売されている。現在のところ、同社の年間営業売上高の約半分は小売業者により得られたものだ。
このように小売店に広く展開していることから、同社は独自の小さな店舗内ストアの什器を作り上げ、それぞれの小売業者で厳選された商品を扱うための社内チームを発足させた。同社は現在、店舗内マーチャンダイジングの什器により、店舗内キャンペーンを行っていない店舗よりも売り上げが増加したと語っている。
「当社は、自社をコンビニエンス食品企業と考えているため、自社SKUのマーチャンダイジングの方法は重要だ」と、同社の共同創設者でCEOを務めるライアン・パンプリン氏は語る。
小売業者ごとに差別化
同社のデジタル戦略は、階層化された売上を生み出すことを重点としていると、パンプリン氏は述べる。消費者は、より多くの商品を購入するほど大きな割引を受けられるようになる。商品セットのようなアップセルのオプションを提供することで、同社がほかの実績のある競合他社と売上を争っていることが多い実店舗にも、この戦略を拡大する構想だ。
ブレンドジェットが最初に発売したのは、定番商品である携帯ブレンダーだが、同社はそれ以後にアクセサリやプロテインスムージーパックなどの新しいカテゴリーの商品を発売した。これらのSKUは次第に同社の小売ディスプレイに組み入れられるようになっている。たとえばブレンダーの断熱スリーブはオンラインで25%のアドオン率を持ち、小売のディスプレイでも人気のあるアイテムだ。
「当社は、これらのカスタムディスプレイすべてによって、小売のマーチャンダイジングを最適化し、セルスルーを最大化することを目標にしている」と、パンプリン氏は述べる。同氏は、厳選されたブレンドジェット商品を展示している店舗では、同じように同社商品を扱っていても厳選されたディスプレイがない店舗と比べて、50%から100%も売上が増大していると語る。
パンプリン氏によれば、同社は「それぞれの小売業者ごとに、差別化を行えるような何か」を、それが異なる色、限定の商品バンドル、競合他社より多くの商品の選択肢など、何であっても提供しようと試みている。商品セットは多くの場合、特定の小売業者向けに作られる。たとえばクローガー(Kroger)の什器は、ブレンダーよりも「ジェットパック・スムージー(JetPack Smoothie)」に焦点をあてている。「クローガーは、すぐに開いて展示できるジェットパック・スムージーのシッパーを希望したため、当社はカスタムでクローガー用のものを作成した」と、パンプリン氏は述べている。
「まずは取っ掛かりをつかむ」
2020年前半に「当社がディスプレイを設置した最初の小売業者はウォルマートだ」と、同氏は述べる。ウォルマートの展示のため、ブレンドジェットは自社の「ブレンドジェット2」と20オンス(約591ml)のジャーをセットにした独占SKUバンドルを作成し、ブレンドジェット2ブレンダーモデルと同価格で販売した。ウォルマートのマーチャンダイズは色が限られていたにもかかわらず、価値を求める同社の買い物客のあいだで売れ行きは良好だったと、同氏は語っている。
同じブランドから複数の商品をひとつのアセットで展示するよう、小売業者を説得するのは簡単ではない。一部の小売業者の場合、まず注文のセルスルーを行ってからでなくては、什器を引き受けてくれないと、パンプリン氏は語っている。「まずは取っ掛かりをつかむ」と同氏は述べる。「バイヤーは、当社の商品がどれだけ売れているかを知るため、数四半期分のデータを必要とし、それから当社の商品をどこに展示するかを計画する」。そして、小売業者がさらに在庫を増やそうとしたとき、「当社は購入価格を増やすため、それらの商品を1カ所に展示することを求める」と同氏は述べている。
デザイン戦略も小売業者ごとに異なると、同氏は説明している。「一部の小売業者は利用可能な面積が異なり、特定の寸法を必要とするため、それに合わせてデザインを変更することもある」。
消費者に必要とされるコツ
カーニー・コンシューマー・インスティテュート(Kearney Consumer Institute)を率いるケイティ・トーマス氏は、デジタルネイティブなブランドにとって、小売店の棚に展示されるだけでは大きな売上を期待できないと語る。
トーマス氏は、ブレンドジェットのようにオンラインで話題のブランドの場合、店舗内ストアとして機能する明るいディスプレイを作るのが、顧客の目を引き店舗内でのバンドル販売を促進するため優れた方法だと語る。「すでに多くの支持者が存在するなら、強いマーチャンダイジングを活かして売上を伸ばすことができる」と、同氏は述べている。
「消費者が混雑した店内で買い物に夢中になっているときに、自社ブランドがどのようなものかを見せられること」が現在必要とされるコツだと、トーマス氏は説明している。厳選されたエンドキャップやパレットはそのための創造的な方法だと、同氏は述べている。
トーマス氏は、ネイティブデオドラント(Native deodorant)のような、小売業者での単一ブランドディスプレイを推進してきた、ほかのデジタルファーストのブランドについて言及している。小売店のディスプレイを活用した新興企業として、最近の例にはグローブ・コラボレーティブ(Grove Collaborative)があり、同社はターゲットの店舗向けにワンストップショップのエンドキャップを作成した。CPG企業のシュワンズ(Schwan’s)は昨年、冷凍食品の棚で同様の戦略の展開をはじめた。「広範なSKUを保有しているなら、このような種類の設備を要請しやすくなる」と、トーマス氏は述べている。
ブレンドジェットにとって、より多彩な品ぞろえを用意することが、小売での成長を続けるための鍵となる。「人々の注目を集めるには、美しいディスプレイが必要だ」と、パンプリン氏は述べている。
Gabriela Barkho(翻訳:ジェスコーポレーション 編集:猿渡さとみ)
Image: BlendJet