ひとり暮らしの孤独な老人向けに800台のロボットをニューヨーク州が導入

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アメリカ・ニューヨーク州で高齢者向けの住宅・交通機関・健康プログラムを管理する高齢化局(Office for the Aging)が、老人向けの介護用ロボットを800台以上購入したと発表しました。高齢化局が導入したのは、ロボット開発企業・Intuition Roboticsが65歳以上のひとり暮らし老人をターゲットに開発した「ElliQ」と呼ばれるロボットです。

NYSOFA Brings ElliQ Proactive Care Companion Technology to Older Adults, Reducing Social Isolation, Supporting Independence, Connection and Engagement | Office for the Aging
https://aging.ny.gov/news/nysofa-brings-elliq-proactive-care-companion-technology-older-adults-reducing-social-isolation

New York State Purchases Robot Companions for the Elderly | Smart News| Smithsonian Magazine
https://www.smithsonianmag.com/smart-news/new-york-state-purchases-robot-companions-for-the-elderly-180980181/

65歳以上のひとり暮らしをしている高齢者向けに開発されたロボット「ElliQ」は、AlexaやSiriといった音声アシスタントに似た卓上ロボット。ElliQはユーザーと簡単な会話をしたり、質問に答えたり、薬を服用するようユーザーに促したり、友人や家族と連絡を取ったり、ユーザーに会話を振ったり、その他の日常的な活動を手伝ったりすることができるというもの。Intuition Roboticsによると、ElliQを利用するユーザーは1日に平均20回以上ElliQと何かしらのアクションを行うそうです。

ElliQの見た目はこんな感じ。


高齢化局のディレクターであるグレッグ・オルセン氏はElliQの導入について、「ElliQの多彩な機能が我々をひきつけました。ElliQはプロアクティブなツールであり、個人とのやり取りを記録し、健康とウェルネス、ストレス軽減、睡眠、水分補給などの改善に重点を置いています」「重要なのは、記憶や人生、友人や家族との交流に焦点を当て、健康と幸福を促進することです」と語りました

高齢化局はElliQの導入を発表した声明の中で、「2017年にアメリカ医務総監は社会的孤立を『エピデミック』と宣言しました。その後の新型コロナウイルスのパンデミックにより、社会的孤立はより悪化することとなりました。AARP Public Policy Instituteによると、社会的孤立は年間67億ドル(約9000億円)の支出を生み出しています。孤独と隔離が健康に与える影響は、毎日1箱のタバコを吸うことに相当します。高齢者が孤独や社会的孤立のリスクが高い時期に、ElliQは別の形のコミュニケーションを提供することで、従来の対面型のサポートを補完する役割を担います」と記しました。

孤独はうつ病を引き起こすだけでなく、睡眠の質を低下させたり、認知機能の低下を加速させたり、心血管機能を低下させたり、生活のあらゆる段階での免疫力の低下につながったりと、健康への悪影響を引き起こすことで知られています。アメリカ心理学会によると、孤独は1日に15本のタバコを吸ったり、アルコール障害を患ったりするのと同じ程度の健康上の悪影響をおよぼすとのことです。

AARP Public Policy Instituteは社会的孤立に関する年間支出が「67億ドル」と算出していますが、これは多くの場合、犬のような孤独をケアするための動物を利用するために支払われる費用だそうです。動物を使ったケアの場合、「動物自身のケアも必要になるという問題がある」とスミソニアン協会が発行する雑誌のSmithsonian Magazineは記しています。なお、2018年に公開された研究論文では、ロボットが孤独によるストレスを軽減できることが示されています。


Intuition Roboticsのドア・スカラーCEOは、「ElliQの作成を開始したとき、私たちはひとつの目標を念頭に置いていました。それは、高齢者が家で健康で幸せに、そして自立して生活できるようにすることです」「高齢者が孤独や社会的孤立のリスクが高い時期に、ElliQは従来の対面でのサポートを補完するような、別の形のコミュニケーションを提供します」と記しています。

オルセン氏は「目標はElliQの効果を測定することです。ElliQがどのような効果を発揮するのかを見ていく予定です」「高齢化局はすでにストレスにさらされていたり、ひとり暮らしをしていたり、近くに家族や友人が住んでいなかったりする高齢者がたくさんいることを把握しています。こういった人々の多くはテクノロジーを利用できるため、彼らの健康にElliQがどのような影響をおよぼすのかを確認していきたいと思っています」と語りました。

なお、孤独と戦う高齢者をケアするためのロボットについて論争がないわけではありません。2020年に公開された論文では、ケアロボットを導入することで高齢者は既存の人間関係を無視してロボットとの関係を優先するようになるリスクがあると非難しています。

オルセン氏は「ElliQは人間の社会的相互作用を補完することを目的に設計されたものであり、人間に取って代わるようなものではありません」と語りました。

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