BNPL のセズル、物理カードで実店舗でのプレゼンス拡大へ:「eコマースはまだパイの小さな一片にすぎない」

DIGIDAY

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BNPL(後払い)サービス企業のセズル(Sezzle)は、実店舗でのプレゼンス拡大をめざしており、そのために物理的なカードに賭けている。

同社のプレゼンス拡大戦略は、新しいサービスと決済オプションの導入を組み合わせたものだ。同社は今年中にセズルフレックス(Sezzle Flex)という物理的なカードの運用を開始する計画だ。またこのカードを通じて、即時支払いや4回の分割払いなど、さまざまな決済オプションを提供する予定だ。

セズルのCEOを務めるチャーリー・ユアキム氏は次のように述べている。「当社の顧客が実店舗でショッピングを行い、決済サービスを使用していることから、当社も実店舗に進出する必要があると判断した。そのような消費者にもっとも使用されるサービスになるには、我々のサービスがそこ(実店舗)で機能することを保証する必要がある」。

「実店舗での決済が依然として主流だ」

同社は2016年に創設され、当初は消費者に特典を提供するデビット決済オプションとしてスタートしたが、1年余りが過ぎてから後払いモデルに転向した。それ以来同社は、オンラインで無利息の分割払いオプションを消費者に提供することを主なサービスとしており、12月31日に終了した2021年会計年度では4万7000社近いアクティブな加盟店、340万人のアクティブな顧客、1億1480万ドル(約147億円)の収益を実現した。同社はビジネス成長のため、物理的なカードを使用して、より多くの実店舗の買い物客に同社のサービスを利用してもらうことを期待している。

実店舗重視の拡大は、同社にとって極めて重要な成長ポイントにおいて起きたものだ。オーストラリアの企業であるジップ(Zip)は2月、セズルを4億9100万オーストラリアドル(約466億円)に評価した全額株式交換により、セズルを買収したことを発表した。セズルはその後の3月、北米の全従業員を20%削減することを発表した。その際同社は、このレイオフは同社の長期的な成長のための布石であると述べていた。同社はレイオフについて、それ以上のコメントを避けている。

セズルは現在、消費者がGoogle PayやApple Payなどのバーチャルウォレットに追加できる仮想カードを提供している。しかし、これはターゲット(Target)など一部の小売店でしか使用できない。さらにユアキム氏は、物理的なカードのほうが顧客体験に適しているという。

同氏によると、同社は店舗カードにより、長期分割払いの金融オプションなど、分割払いオプションを消費者に提供する計画だ。セズルフレックスはデビットカードのように使うことができ、ユーザーの銀行口座と直結しているという。しかし同時に、その購入代金を分割で支払うというオプションも提供する。一方で、クレジットカードと同様、消費者は特典を得ることができ、クレジットスコアを向上させることができる可能性もある。このような取り組みがセズルの差別化ポイントになることを、ユアキム氏は期待している。

ユアキム氏は次のように述べている。「eコマースはまだ、まだパイ全体の中の小さな一片だ。決済方法としてもっとも多いわけではなく、依然として実店舗での決済が主流だ。それはつまり、当社は消費者の要求をあらゆる場所で満たしているわけではないことを意味している」。

消費者が物理的なカードを使用できるようにすれば、モバイルデバイスを操作しなくてはならない状態に比べてはるかに取引が便利になると、ピュブリシスサピエント(Publicis Sapient)で北米の小売戦略責任者を務めるヒルディング・アンダーソン氏は語る。

「米国において、今日の取引の大半は物理的なカードで行われている」と同氏は述べる。物理的なカードを使用するプロセスは、「消費者が簡単に理解できるものだ。そして、BNPLプロバイダは、後払い分野の中核である、デジタルに精通した若者層だけでなく、新しい顧客層にもアプローチできるようになる」。

競合他社との差別化

ほかのBNPL企業も、独自の物理的なカードの発行を計画している。クラーナ(Klarna)は2月、同社の物理的なVisaカードであるクラーナカード(Klarna Card)用のウェイティングリストを開設することを発表した。クラーナカードを使えば、店舗内またはオンラインでの購入について、利用可能な4種類のサービスにより支払いを行うもので、すべての米国の消費者が使用できる。ジップも同様に、昨年11月に物理的なBNPLカードを発行した。

実店舗での販売に力を入れるようになったのは、BNPL企業が全般的にサービスの拡充をめざしているためである。たとえばアファーム(Affirm)は、小売業者の返品管理を支援するソフトウェア新興企業リターンリー(Returnly)の買収を5月に完了した。一方、クラーナは、ライブのショッピングイベントを主催することでライブストリーミングを採用した

さらに、消費者による出費の多くは実店舗で行われていると、アンダーソン氏は語る。その結果、BNPLプロバイダはeコマースのみに特化していると大きな機会を逃すことになると、同氏は指摘する。「ほとんど実店舗でしか買い物を行わない消費者の層が存在し、BNPLプロバイダはおそらく現在、このような層とのつながりがない」と同氏は語る。

実店舗への参入とは別に、セズルはより多種多様なカテゴリーの小売業者とのパートナーシップも締結してきた。同社は2月、ウェルナウアージェントケア(WellNow Urgent Care)と提携し、100以上のクリニックに自社の分割払いソリューションを導入した。ターゲットは昨年、Target.comやターゲットアプリに加えて、店舗でも、Apple PayやGoogle Payによる決済オプションとしてセズルが利用可能になったことを発表した。さらにセズルは、旅行用決済プラットフォームのヤップストーン(Yapstone)とも独占パートナーシップを結び、バケーション用レンタルでもBNPLオプションを提供することも発表した。

新たに提携する企業を探す際には、同社が現在保有しているのと同じ消費者ベースを持つ企業を探すとユアキム氏は答えている。セズルの顧客ベースの70%から75%は36歳未満だという。「当社は決済の分野で影響力のある会社であり続け、アクティブな顧客数を350万から数千万に拡大していき、さらに認知されるブランドであり続けると思っている」。

[原文:‘E-commerce is still a small sliver’: Sezzle banks on physical cards to grow its brick-and-mortar presence]

Maria Monteros(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Sezzle

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