Amazon アグリゲーター のバブルは、ついに崩壊したのか?

DIGIDAY

Amazonのアグリゲーターは、ほんの数カ月前には莫大な額の資金を調達していたが、現在では状況が沈静化しており、完全に崩壊した可能性すら考えられている。

多くの企業が、最良のAmazonブランドを見つけ出して買い取り、自社ポートフォリオに加えるという約束で、途方もない額の資金を調達して注目を浴びてから、まだ1年も経っていない。一部の企業は、プロクター・アンド・ギャンブル(Procter & Gamble)のあとに続くと宣言し、どのブランドを拾い上げて成長させるのが最良かを評価する方法として、洗練されたデータ分析を宣伝していた。しかし、最近数カ月に事態は一変した。

たとえばセラシオ(Thrasio)は、過去数年間に30億ドル(約3900億円)を超える資金を調達してきたが、最近になって取引のフローが鈍化し、一連のレイオフを行ったと、ビジネスインサイダー(Business Insider)は報告している。同社はわずか12カ月前に、毎週約3件の契約を結んでいると主張していた。

ほかのアグリゲーターも、同様な問題に直面してきた。たとえばマーケットプレイスパルス(Marketplace Pulse)は3月に、「いくつかのAmazonアグリゲーターは、出品者の評価額の増大、サプライチェーンの中断、および買収したブランドの成長の難しさが、業界の再調整を引き起こしたことから、買収を中断するに至った」と、コンサルタントがアグリゲーターと行った対話を引用して書き記した

資金の問題を抱えている?

アグリゲーターの成長が最近になって妨げられたと考えられる理由のひとつは、資金へのアクセスだ。これらのロールアップ企業の多くはベンチャーの支援によって資金を調達していたが、ほかの企業は借入に頼っていた。現在では、パンデミックの初期と比べて利息が増加し、eコマースの成長が鈍化しており、一部のアグリゲーターは企業を買い取るため必要な現金の調達が困難になってきていると、インサイダーは述べている。

たとえば、中国のAmazonの出品者と、それらの出品者の買い取りを望んでいる企業との仲介を行う企業である、エフビーエーフリッパー(FBAFlipper)の共同創設者ジェイソン・リー氏は最近、預託に資金を調達する予定の、ニューヨークを拠点とするアグリゲーターと契約を交渉していた。しかし契約の締結段階になって、「そのアグリゲーターは貸主に資金拠出を求め、貸主は資金を持ち合わせていなかった」。数カ月前にも同じことが起きている。リー氏は同氏のビジネスのひとつについて、別のアグリゲーターと2カ月の交渉を行ってきたが、結局資金がなかった。

同氏によれば、問題は買収側が資金を獲得できないというだけではなく、Amazonエコシステムのほとんどの部分が困難になってきていることだ。2020年以後に、eコマースビジネスは巨大な利益と、過去最高の需要を獲得したが、サプライチェーンの寸断により在庫切れが発生し、その一方でAmazonなどのプラットフォームは料金を引き上げた。「出品者は利益を手にしていない」と同氏は述べており、その結果として「積極性が弱まり、入札が減少した」。

リー氏は次のように述べている。「買い手側は資金の問題を抱えている。売り手側にとっては、金額が十分ではない」。

持続可能なモデルではない?

全体として、これは多少の異様な条件が付いた、悪い契約を招く。昨年に多くのAmazonブランドは自社の実利益の5倍の、さらに数倍のオファーを受けていたと、リー氏は語る。現在ではこれが3倍に近づいている。あるアグリゲーターは、自宅を、提案された契約の担保物件とすることさえもリー氏に求めた。

コンサルティング企業のポディーン(Podean)のCEOを務めるマーク・パワー氏によれば、アグリゲーターと買収分野の見かけ上の落ち込みが起こることは、前々からわかりきっていたという。同氏は次のように述べている。「当社はこれまでも非常に弱気だった。当社は、このモデルが長期的に持続可能だとは信じていない」。

これにはいくつかの理由がある。まず、多くのAmazonアグリゲーターはAmazon専業のブランドを買収し、そこから拡大していくことを主眼としている。「しかし、消費者はAmazonだけで買い物をするわけではない」と、パワー氏は述べる。「ビジネスで成功するには、ブランドの構築が必要だ」。

同氏は、最近自身がLinkedInに投稿した記事で、セラシオが保有するブランドをひとつでも挙げるようフォロワーに求めたことに言及している。「セラシオを深く熟知していない人たちは、この問いになかなか答えられなかった」。

同氏の推定では、昨年のバブルはビジネス上の幻想で、再現が困難ないくつもの要因の重なった結果だった。同氏は次のように述べている。「内情を見れば、Amazonは複雑すぎる。我々は運用面、そして容量の観点から考えて、アグリゲーターが6つから10のブランドを保有するのは非常に難しく、100以上は論外だといえる」。

いまは規模拡大のプロセス?

しかし、最近注目されたニュースがバブル崩壊の兆候だと誰もが考えているわけではない。M&A企業のフォーティアグループ(Fortia Group)の共同創設者でCEOを務めるエメット・キルダフ氏は、買収の沈静化は自然で、予測されたものだとしている。セラシオのように過去2年間にわたり200以上のブランドを獲得した会社について、「M&Aの歴史上、これほど多くのブランドを獲得した会社があっただろうか?」と同氏は問いかけている。

キルダフ氏は、最近になって業界の状況が困難になったことは認めている。「過去6カ月から9カ月は、ブランドとアグリゲーターの双方にとって困難な時期だった」と同氏は、インフレの加速やPPCコストの上昇に言及して述べている。しかしこの分野のリーダーたちについて、「現在は明らかに消化中だ」と同氏は述べている。すなわち、これらの企業は数カ月で数十ないし数百のブランドを買い取っており、現在はそれらのブランドの規模を拡大するプロセスを行っているということだ。

この消化という現象は、ほとんどがセラシオやパーチ(Perch)のような大手業者に委託されていると、同氏は語る。「新しいブランドを求めている小規模から中規模のアグリゲーターは数多く存在する」と同氏は述べている。また同氏はグラビティック(Gravitiq)のような、Amazonのヘルスケアブランドのみに特化したロールアップについて言及している。

キルダフ氏は、熱気のいくぶんかは消失したことを認めている。1年前の契約条件が4倍から6倍のあいだだったのに対して、現在は3倍から6倍の範囲に低下している。同氏は次のように述べている。「利率は上昇していくだろう。それにより、アグリゲーターに対する評価は間違いなく影響を受けるだろう。そして、クレジット企業からアグリゲーターへの契約も厳しくなるかもしれないことはたしかだ」。

だが、悪い点よりも良い点の方が多いと同氏は述べており、同氏は主要なアグリゲーター企業からの基本統計を組み合わせ、この分野の健全性を示す作業に取り組んでいる。「これは、我々が業界として称賛する必要があることだ」と同氏は語っている。

パワー氏は異なる見方をしている。「私は、コンソリデーターの統合が行われると確信している」と同氏は述べている。しかし、それによってこの分野のほかの企業にとって、潜在的に良いニュースがもたらされるだろう。昨年、多くのAmazon関係者が、潤沢な資金を持つアグリゲーターによって、業界の水準より高い魅力的な給料で引き抜かれたと、同氏は述べている。「現在は、このような多くの優れた人材が新しい機会を探している状況だ」。

[原文:Amazon Briefing: Has the aggregator bubble finally burst?]

Cale Guthrie Weissman(翻訳:ジェスコーポレーション 編集:長田真)

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