ゲームメディア 「Dexerto」は、いかにブランドとつながっているのか

DIGIDAY

eスポーツおよびゲーム情報メディアの「Dexerto(デクセルト)」はここ数年、読者数とソーシャルのフォロワー数の両面でめざましい成長を遂げてきた。現在は、ブランドとゲーマーの橋渡し役となり、忠実なオーディエンスを利用しようと試みている。

Dexertoは2015年に、ジョシュア・ニーノ氏、マイク・ケント氏、ニコラス・ハルスマンズ氏、クリス・マーシュ氏の4人によって創設された。2016年のシードラウンド以来ずっと黒字で、ニーノ氏によると、そうした栄誉を手にしている数少ないeスポーツにエンデミックなサイトのひとつだという。Dexertoのオーディエンスは、創設後の数年で急増しており、ゲームそのものではなく、有名なゲームインフルエンサーと、それを取り巻くコミュニティの会話に焦点を当てたソーシャルコンテンツに注力して、eスポーツファンの読者を引き込んだ。

「ソーシャルメディア上の人々を獲得しようとしているだけで、偶然にもソーシャルメディア上で人々がエンゲージしている多くのコンテンツがゲーム関係なだけだと言ってもいい。私の考えでは、逆に、従来型の大手ゲームサイトは、ゲームの質やレビューの角度から攻めがちだと思う。我々は、ゲームの出来よりもむしろ、ゲームについて人々が話していることにより関心がある」とニーノ氏は語る。

非営利団体との提携も

Dexertoのトラフィック数は、パンデミック前からすでに上昇傾向にあったが、2020年以降に激増している。ニーノ氏が提供したデータによると、2020~2021年のあいだに、Dexertoの合計ビュー数は約15億から23億に急増し、売上高も同様に、50%増加して数千万ドル規模に達したというが、同氏は具体的な数字を明らかにするのを避けた。Dexertoは、この1年間に従業員も倍増し、オーストラリアやインド、アルゼンチン、米国など、様々なタイムゾーンの市場で約100人を雇用している。「言語圏ごとのサブドメインを提供し、フランス語話者とスペイン語話者のライターがいる」とニーノ氏は語る。

こうした成長により、Dexertoは、ゲーマーにエンデミックにリーチしたいと考えるブランドやマーケターにとって、魅力的なパートナー候補になったが、広告収入は、創設当初からDexertoのモデルの一部だった。ほかの多くのエンデミックなeスポーツサイトと同様に、Dexertoには有料会員がいない。

現在および以前のパートナーには、レイザー(Razer)やチポトレ(Chipotle)、コカ・コーラ(Coca-Cola)、バッファロー・ワイルド・ウィングス(Buffalo Wild Wings)のような(ゲームに)エンデミックおよび非エンデミックな有力ブランドが含まれている。短編および長編動画や記事でのスポンサードコンテンツなど、メディア制作とクリエイティブ戦略両方のサービスをパートナーに提供している。「Dexerto Originals」ドキュメンタリーシリーズのような既存の知的財産にブランドを統合することも可能だ。

こうしたサービスがきっかけで、HIV/AIDS関連の慈善団体である(RED)で最高コミュニケーションおよびキャンペーン責任者を務めるヒュー・デイヴィス氏は、Dexertoと提携し、2021年12月に、(RED)初の資金集めイベント「クリエイター・カップ(Creator Cup)」を主催した。Dexertoは、クリエイター・カップ関連のスポンサードコンテンツを制作したほか、戦略や企画、制作の面で(RED)と緊密に協力した。これにより、(RED)は、デジタルクリエイターとともに、クリエイター・カップを宣伝するカスタムの「マインクラフト(Minecraft)」ワールドを構築し、最終的に12万7000ドル(約1600万円)の寄付を集めた。

「最初から最後まで、プロセス管理の助けになった。Dexertoのチームが、(RED)を主要なゲーム組織やクリエイターマネージャーと結びつけてくれたことにも感謝している。おかげで、今後も育みたいと願う関係を築けた」とデイヴィス氏は語る。

物議を醸すメディアの側面も

有益なアクティベーションにもかかわらず、Dexertoとその従業員は、時々物議を醸すことで知られてきた。たとえば、Dexertoの編集主幹であるリチャード・ルイス氏は、様々なeスポーツコミュニティとそのメンバーを過小評価して苛立たせるコメントをソーシャルメディアで出すことで悪名高い。そのほか、eスポーツ業界をこき下ろす報道を行い、最近では、「リーグ・オブ・レジェンド(League of Legends)」のコーチ、ピーター・チャン氏をTSMが解雇した件について、衝撃的なレポートも行っている。

ニーノ氏らDexertoの創業者にとって、こうした物議を醸す可能性は、「欠点」ではなく「特徴」と位置付けられている。

「実際、目の前に多くのビジネスが開けた。リチャード・ルイス氏だけでなく、ほかのジャーナリストも、大胆で強気なレポートをすることを公言してきた。それで、Dexertoにいい意味で多くの注目が集まり、多様な意見やレポーティングのスタイルを持つことで、誠実であり続けられる」とニーノ氏はいう。

いずれにしても、Dexertoの従業員が醸す物議は、おおむねeスポーツコミュニティに限られており、ブランドはDexertoをゲーム分野に進出するための安全で友好的なパイプ役と見なしている。

「コンテンツとコンテンツに関する話の仕方により、Dexertoが安全なプラットフォームと見なされているのは確かだ」と指摘するのは、マインドシェア(Mindshare)で投資担当マネージングディレクターを務めるフランク・プーマ氏だ。

新しい文化にいかにフォーカスするか

結局のところ、Dexertoがブランドとの提携で成功し続けているのは、ゲームが文化や社会のほかの分野に進出していることを示すさらなる証拠となっている。ゲームインフルエンサーとそれを取り巻くコミュニティに関するコンテンツに焦点を合わせることで、自ずと守備範囲が広がり、ゲーマーが至るところで持っている多様な関心や情熱を傾ける対象を扱うようになった。

「ゲームというと、くだらない物扱いされることが往々にしてあるが、実際はそうではない。比較的新しい文化だ」と、ブランドとの多くの提携でDexertoと協力してきたプーマ氏は語る。

「ゲームファンには映画ファンや音楽好きがいて、そうしたすべての文化的なものを好んでいる。Dexertoでは、ボルボのような(マインドシェアの)顧客が、そうした環境や会話の中に独特なかたちでとどまれるのだ」。

[原文:How endemic esports publication Dexerto is making a bigger play for brand partnerships

Alexander Lee(翻訳:矢倉 美登里/ガリレオ、編集:分島翔平)

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