謎の石像
シャトーとは、ワインをぶどうの栽培、醸造からビン詰めまですべての工程を行える場所の呼び名である。
茨城県は牛久市に、シャトーカミヤという場所がある。ここは現在、美しい庭園を見ながらワインと料理が楽しめる憩いのスポットだが、元は、ワイン黎明期にあたる明治時代に作られたシャトーである。
ここになぜか石像がある。
それも歴史上の偉大なる人物の石像が十数体も並べられているのだ。 一体、何の為に?
べつに迫らなくてもいいようなどうでもいい謎に猛然と迫ってみた。
※2005年1月に掲載された記事を、AIにより画像を拡大して加筆修正のうえ再掲載しました。
シャトーカミヤとは
石像の謎に迫る前に、まずは
シャトーカミヤとはどういう場所なのか?
簡単に説明したい。
明治36年(1903年)、本格的な国産ワインを作る工場としてシャトーカミヤは作られた。明治と言えば、まだワインそのものが珍しかった時代。まさに国産ワインの黎明期において、その発展に大いに貢献した場所である。
現在のシャトーカミヤは、レトロな建物と庭園を眺めながら、ワイン飲んだり肉食ったりできる憩いのスポットとなっている。
当時の建物をそのままレストランや喫茶店にしているので、雰囲気もバッチリ。デートにも最適。しかも入場は無料。
ワインがテーマの場所なんで昼間から気兼ねなく酒が飲めるのもいい。
バーベキュー施設もある。
桜の木がたくさんあり、4月には花見客でバーベキュー場はいっぱいとなる。
ワインと肉、桜。かなり最強の組み合わせと言えよう。
ワインセラーには、いろいろなワインが並んでいる。私は酒の種類とか詳しくないのでよくわからなかったが、好きな人が見ればいろいろ楽しめるに違いない。
ワインの博物館
かつての醸造場は、現在はワイン資料館になっている。
その1階部分はワイン貯蔵庫。(展示用だと思うが。)
ここは夏でも涼しく、カブトムシのような匂いが漂う。
薄暗い空間に巨大な樽が並ぶ。
2階が資料コーナーになっており、ワインの歴史とか製造法などがわかる。
資料館への入場も無料。良心的だ。
と、以上がシャトーカミヤの概要である。
さて、次ページから問題の石像の件に入っていきたい。
謎の石像
このシャトーカミヤの敷地内に、なぜか上の写真のような石像がいくつもある。それも、わりと最近(と言っても5年以上前だが)作られたものだ。
ところでこの石像、大隈重信だよね?
あれ、それとも伊藤博文かな?
石像に近づいて名前を確認した。
ソクラテスだった…。
自分が無知であるということを知る、「ムチムチ」もとい、「無知の知」を説いたソクラテス。
さすがは彼、一瞬にして私の無知を暴いてしまった。
しかし、なぜソクラテスの石像がここに…。
ソクラテスとシャトーカミヤに何か深い関係があるとでも言うのだろうか…。
クイズ形式でどうぞ
石像は全部で十数体ある。
ではこれより、各石像の名前当てクイズをしながら、なぜこれらの石像を作らねばならなかったのか、読者の皆様と一緒に考えていきたい。
先ほどのソクラテスの対面に設置されていた石像。
この人は誰?
↓
↓
答え:プラトン。
リンカーンだと思った…。
イデア論というものを唱えた哲学者。ソクラテスの弟子。
ソクラテス、プラトンと偉大な哲学者が二人並んだ。
哲学者とシャトーカミヤに何か関連があるというのだろうか?
これはわかった。
芥川龍之介だろう。
しかし、彼は哲学者ではないが…。
↓
↓
答え:板垣退助
あれれれ?芥川龍之介じゃないと?
「板垣死すとも自由は死せず」の名言を残した自由民権運動の指導者。
いずれにせよ、哲学者を並べているわけではないらしい。
共通しているものは何か?
うちのいとこに少し似てる…。
い、いや、うーん、誰だろう?
↓
↓
答え:大隈重信
早稲田大学の創始者・大隈重信。板垣退助と共に憲政党を作り、日本で最初の政党内閣の内閣総理大臣となった。
ソクラテス、プラトン、板垣退助、大隈重信と来た。何だろうこの繋がり、この流れ。
ん~… トニー?
(不正解が続き、私の思考力が低下している。)
↓
↓
答え:夏目漱石
…この石像群、ひょっとして似てなくないだろうか?
で、今度は文豪が登場。代表作は「我輩は猫である」「坊っちゃん」など。ますます共通性が見えなくなってきた。そしてシャトーカミヤとの関係は?
そ、孫文?
↓
↓
答え:森鴎外
OH!ガイ! 代表作は「舞姫」。医者でもあった。
文豪が二人続いた。シャトーカミヤを訪れたことがある人々?いや、まさか。森鴎外はまだしも、ソクラテスやプラトンは時代的におかしい。が、しかし三国志の関羽の墓が函館にあるなんて話もあるくらいだから、あながち全否定できないが…。
先ほどまでとはまた一段と変わった人物が登場。
仙人? 猿田彦?
↓
↓
答え:レオナルド・ダ・ヴィンチ
難しい。難しいよ、この問題。美術、科学、発明、医学…。さまざまな分野で才能を発揮した天才・レオナルド・ダ・ヴィンチ。代表作は「モナリザ」「最後の晩餐」。
これまでの傾向を見ると、歴史上の偉大な人物がジャンルに関係なく登場しているが、ナポレオンとか織田信長など戦争で名を残した人物は登場していない。そういうセレクションか?
ピッカー!!
頭ツルツル。
(すいません、そろそろ思考回路がダメです)
↓
↓
答え:シェークスピア
あ、これは言われてみればシェークスピアかも。
イギリスの劇作家。代表作はロミオとジュリエット、オセロ、ハムレット、マクベス、スパ王(リア王)。
ところでこの石像たち、ひょっとして何の意味も持たないなんてことはないだろうか?
シャトーカミヤの関係者の知り合いに石屋がいて、「最近商売上がったりだから何か注文してよ」とか言われて発注したものとか…。(で、1コ頼んだだけのつもりが大量に納品されてビックリみたいな。)
これは…布っぽい服だから、ミケランジェロ?
↓
↓
答え:ミケランジェロ
やっと当たった。ポイントは服だな。
ルネサンス期の芸術家。代表作はダビデ像。
ところでこの石像たち、制作費は幾らぐらいしたのだろうか?安い値段でないことだけはたしかだろう。そしてここシャトーカミヤは税金で作られた施設ではない。ということは、高いお金を払って意味の無いものを作ったりはしないはずだ。つまり、この石像たちは何かしらの意味を持って作られたと考えられる。
…が、しかし、一体どんな意味が!?
切羽詰った表情。
たくさんあった石造群も、そろそろ終わりに近づいた。
しかし、相変わらず意味は見えてこない…。
↓
↓
答え:ヘーゲル
終盤に来て、再び哲学者が現れた。さまざまな分野に影響を与えたと言われるドイツの哲学者ヘーゲル。代表作は「精神現象学」「法の哲学」。
もうどこまで深読みすればいいのか分からないくらい難解になってきたシャトーカミヤの石像群の謎。
次でいよいよラストです。
最後の一体
最後の一体は、
「これまでのやつとは格が違うんだよ!」
と言わんばかりに、庭園内の中央奥にひときわ厳かにたたずんでいた。
物語で言えば、これが最後に待ち受ける敵のボスだろうか。
ソクラテス、プラトン、レオナルド・ダ・ヴィンチ…
これら歴史上の超有名人よりもさらにワンランク上に位置されている最後のボスとは、はたしてどんな歴史上の有名人なのか?
飛び石を渡って石像の前に進む。
と、そこには和服姿の石像が。
日本人?
さて一体だれだろう?
キリリと引き締まった威厳に満ちた表情。
これまで登場した石像たちのことも考慮に入れながら、さまざまな歴史上の人物を思い出してみたが、これだと思う人物が思い当たらない。
が…!
ハッ!もしや…
そこで私は石像の下のネームプレートに目をやった。
「神谷伝兵衛 (1856~1922)
日本に於ける洋酒の黎明期を築いた一人であり、浅草の『神谷バー』と、牛久シャトーの前身である『神谷シャトー』の創設者である。」
なんと!
最後の一体は、このシャトーカミヤの創設者・神谷伝兵衛氏の石像だった。
これですべての謎が解けた。
ここシャトーカミヤでは単に創設者の像を作るだけにはとどまらず、周りに歴史上の偉大なる人物の像も同様に並べることにより、それらと肩を並べ得る偉大なる人物・神谷伝兵衛ということを言いたかったのだ!!
なんと素晴らしい発想ではないか。
人類が滅亡した後、たまたまここを訪れた宇宙からの訪問者が、自分達の星にこれら石像群を持ち帰る。
そして彼らの地球人研究の書には「神谷伝兵衛」の名が堂々と記されるのである!
同時に、私の胸にも強烈なインパクトで「神谷伝兵衛」の名が刻まれたのであった。
「人類史上の偉大なる人物の名を10名挙げよ」
なんて質問されたら、必ず入れてしまいそうだ。
えっと(汗)、石像群はシャトーカミヤの中のほんの一部で、それ以外の大部分は大変おしゃれな、カップルでも家族でも楽しめる私イチオシの行楽スポットです。
シャトーカミヤ
茨城県牛久市中央3-20-1
TEL: 029-873-3151
東京・上野駅から電車で約1時間。
常磐線牛久駅から歩いて10分ほどのところにある。
編集部注:「シャトーカミヤ」は2017年に「牛久シャトー」と改称されました