書き出し小説大賞第238回秀作発表

デイリーポータルZ

書き出し小説とは、書き出しだけで成立したきわめてミニマムな小説スタイルである。

書き出し小説大賞では、この新しい文学を広く世に普及させるべく、諸君からの作品を随時募集し、その秀作を紹介してゆく。(ロゴデザイン・外山真理子)

俺の中で、まだ誤送金問題は終わっていない。そして終わらせるつもりはない!
それでは今回もめくるめく書き出しの世界へご案内しましょう。

書き出し自由部門

紫陽花が燃えれば何色の炎を出すのか。

寂寥

たしかに、枯れた紫陽花は燃え殻のように見える。

神に予算はなかった。

suzukishika

夜の電車は中身が見えた。

みよおぶ

夜の電車の明かりって飼育ケースみたいな明かりだよね。

子供の頃、完璧な暗闇はいつでも布団の中にあった。

あの

ゆうべ君が撒き散らした言葉が、踵に刺さった。

タカタカコッタ

時間差で刺さる言葉ってあるよね。

抽象画から取り出した林檎は少し苦かった。

いずも

水族館から出てきた親父は、イルカよりも可愛い笑顔だった。

七寒六温

揚げていたイカが弾けて宇宙が誕生した。

ウチボリ

ポメラニアンは見た目より狂暴である。浴衣の君と同じ様に

S.虚無

旅館の浴衣ってなんで翌朝あんなに乱れてるんだろう。

俺をラクに死なせるなよ、神様。俺はあんたを少しは信用してるんだ。

葱山紫蘇子

深夜、ひとりで二酸化炭素を吸っている。

いそうろう

変態ですが星を見つけました。

正夢の3人目

ばしん、と音が響く。さて、どこのどいつがフラれたかと思ってバレーボール。

時雨屋皐月

現代短歌のような不思議なリズム。

聴いている音楽も、食べかけのミルフィーユも、雨が降る帰り道も、伊藤さんは全部分けてくれた。

南極行太郎

祖父母は孫の姿を見るなり合体して巨大な五角形となり、こちらに向かって転がってきた。

もんぜん

使徒っぽさ!

いったん広告です

つづいては規定部門。今回のテーマは「伊藤」でした。全国の伊藤さん、ごめんなさい。僕の中の伊藤がこんなに大きくなったよ……

書き出し規定部門・モチーフ『伊藤』

なんで。なんで俺が名簿の一番目なんだよッ。

caolie

 丸腰で先頭に立たされる伊藤

クラスメイトが伊藤の弁当に群がる。

人馬一体勘

伊藤は伊東を「簡単な方のいとう」と呼ぶ。

g-udon

こんもりとした伊藤さんの髪を見ると、梅雨の到来を実感する。

げたのにつけ

伊藤の転校が正式に決まり、私は学級委員長バッチを受け取った。

花惑

「いつも伊藤って間違えられるんだ」そう言った伊東は、今は伊藤として純白の衣装に身を包んでいる。

onebrack

なんでもそつなくこなす。だが誰の記憶にも残らない。幻の便利屋こと伊藤。

高田

僕は伊藤さんの白い小指をつかみ、甘く噛んだ。

ベル

伊藤の優しさは、のどに流れる鼻血のように生ぬるい。

あつ屋謹製

ハードボイルドな伊藤、かっこいい言い回し。

「花びらになったんやね」遺骨の欠片を拾いながら、伊藤の妻が呟いた。

はらけん

誰かが音楽室の木琴を叩いている。ピアノは伊藤さんだ。

井沢

伊藤が好きそうな薄い石ばかり拾ってしまう。

若葉猫

「伊藤」「名前で呼んでよ先生」

えむけい

妻が助手席に乗せていたのは伊藤だった。

suzukishika

NTR伊藤

誰もいないグラウンドに飛び出して行った伊藤が、青い傘を逆さまに持っている姿を今でも覚えている。

鯨谷いさな

巨乳好きの伊藤と巨乳の伊東がいた。

雷電坊や

伊藤&伊東さんには失礼だけど、なんだろう。すごくしっくりくる(笑)

伊藤は急須から直接お茶を飲む。

ウチボリ

伊藤は、パイ生地を無限に広げられた。

にら将軍ハルナ

正座した伊藤が氷上を滑る。

はらけん

カーリングの玉になる伊藤

「伊東にだったら勝てるとでも思ったのかい?」

みそぎ

全教科おなじのノート。表紙には太字のマジックで「伊藤」と書かれていた。

寂寥

「チミが伊藤クンかい。ボクは伊集院」

正夢の3人目

西田における西園寺

誰もいないバスで、伊藤は席を譲り続けた。

ちらし寿司半人前

魔王は卒業アルバムを取り出すと伊藤の写真を指差し、寂しそうに笑った。

ぐるりん

朝食ビュッフェに行く前に、伊藤さんに謝りたいことがある。

葱山紫蘇子

箱の中身は伊藤だった。

いそうろう

脳だけの存在になっても、伊藤は伊藤だった。

モンゴノグノム

伊藤は口角を下げて笑った。

いそうろう

スコープ越しに伊藤と目が合い、伊藤は少し笑った。

みよおぶ

予告編の伊藤は本編にいなかった。

住民パワー

あの弾帯を巻いて現れた伊藤が本編でカット?!

「病院で名前を呼ばれる伊藤さん」のフリー素材を探しています。

たこフェリー

イートインにいる伊藤の意図は、いったいいつになったら分かると?

七寒六温

いま分かった(笑)

伊藤に任せておけば、最適な経路のバスに乗ることができる。

もろみじょうゆ

「ナックルの軌道ってこんな感じなのかなー!?」伊藤はそう叫びながら急接近するモンシロチョウを眺めていた。

モリダイ

「ピータンの裏ワザなんか知らねーよ!」伊藤が食卓でキレた。

吉田髑髏

矢印に伊藤だけが従わない。

ろっさん

スワヒリ語をベンガル語に翻訳して、伊藤は次の町へ歩を進めた。

花惑

修学旅行初日。同じ部屋のイトケンが、敷き詰められた布団の上でバク宙を試み、和風照明に脚を取られた。

益田Don’t know

伊藤よ、あなたとはまた会うでしょう。今生かも知れないしもっと先かも知れないけど。そしてまたこの話をするのでしょう。

あの

生きねば。
前世の伊藤に恥じないように。
来世の伊藤が恥じないように。

はらけん

皆さん、今日はもう伊藤ということで。

ウウタルレロ

伊藤の汎用性!!

それでは次回のお題を発表します。

次回モチーフ
『80年代』

次回のテーマは80年代。リアルに青春時代だったひと、リバイバルブームとして知っている人、さまざまな視点から、日本がいちばんバカで華やかだった時代を書いてみてください。締め切りは6月24日、発表は26日予定です。下の投稿フォームから応募お願いします。力作待ってます!

最終選考通過者

もなど すなめり 殺戮ラジオ パチリパンダ キキ ミミズグチュグチュ まじいい アザ

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