1Pbpsの伝送実験に成功、標準外径4コア光ファイバーでNICTが世界初 

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実験に使われた伝送システム

 国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)は5月19日、4コア光ファイバーを使用し、毎秒1ペタビット(1Pbps)を超える大容量伝送速度実験に、世界で初めて成功したと発表した。

 この実験は、増大し続ける通信量に対応する新型光ファイバーの研究の一環。現在広く普及しているシングルコア(光を通す「コア」と呼ばれる部分が1本)・シングルモード(コアの中の光の経路が1本)の光ファイバーでは、毎秒250テラビット(250Tbps)程度が伝送容量の限界と考えられている。そのため、コアを増やしたマルチコアや、モードを増やしたマルチモード・マルチコアファイバーの研究が進められてきた。

伝送システムの概略図

 今回使用されたのは、4コアでシングルモード、かつ、標準外径(国際規格で定められている、被膜層の外径0.235~2.265mm)の光ファイバー。

 NICTでは2020年12月に15モードの光ファイバーで1Pbpsの伝送実験に成功しているが、マルチモードの伝送においては受信側に複雑なモード分離処理が必要となり、実用化のためには、長期にわたる大規模な専用集積回路の開発が求められるという。また、標準外径の光ファイバーは、ケーブルを敷設する際に既存設備を利用できるメリットがある。

これまでNICTが伝送実験を実施した主な標準外径光ファイバーと実験結果

 2020年3月にNICTが標準外径の4コア光ファイバーを使って行った実験では、610Tbpsの伝送速度を達成していた。今回の実験では、波長多重技術と複数の光増幅方式を駆使した伝送システムを構築し、51.7kmの距離で、1.02Pbpsの伝送に成功した。

 従来から商用として使用されている波長帯域の「C帯」と「L帯」、これまでNICTが実験に使用していた「S帯」の一部に加えて、従来使用していなかったS帯の短い波長(1460~1490nm)も使用。長距離伝送において減衰する信号を増幅する技術「ラマン増幅」を広帯域化することで、全体で20THzの周波数帯域を利用可能とし、計801波長を利用可能にしたという。さらに、全周波数帯域で情報密度の高い「256QAM変調方式」を使用した。

 なお、C帯は光ファイバーにおいて最も伝送損失が小さい波長帯域。L帯、S帯はそれぞれC帯に隣接する波長帯域。

光通信における波長帯域

今回の実験成果と過去の実験成果との比較

 NICTでは、標準外径光ファイバーでの今回の成果により、既存送受信技術をベースにして大容量伝送が可能になり、情報通信サービスの進化を支える基幹系通信システム実現に向け前進したとした。また、今後も継続的な光通信システムの向上を実現すべく、引き続き早期、長期両面で実用可能な標準外径光ファイバーの研究開発を推進していくとしている。

 この実験の結果の論文は、光デバイス関係で最大級の国際会議の1つで、5月15~20日にオンラインで開催された「CLEO2022」(レーザー・エレクトロオプティクスに関する国際会議)において、最優秀ホットトピック論文(Postdeadline Paper)として採択されたという。

今回の実験結果の図

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