福岡県北九州市といえば、超ド派手な成人式を思い浮かべる方が多い……かもしれないが、教科書的には「鉄の町」だ。1901年に操業を開始した「官営八幡製鐡所」は日本の近代化や高度経済成長に貢献したことで知られ、2015年には世界文化遺産にも認定されている。
そんな鉄の町で生まれたのが「鐡平糖(てっぺいとう)」。簡単に言うと「鉄の味をした金平糖」で、鉄の味とはつまり「血の味」らしく……口に入れたら歯が抜けて血が噴き出したような感覚になるのだとか。1ミリも食べたいと思わないが、気になったので買ってみた。
・鐡平糖
鐡平糖を販売しているのは、北九州市の千草ホテル。千草といえば大正3年(1914年)、工業都市として発展する小倉のまちに料亭として誕生した老舗中の老舗だ。
聞くところによると、官営八幡製鐡所関連施設が世界文化遺産に登録された当時から、地元名物を新たに生み出すべく構想を練りまくっていたという。ほほー、世界遺産登録を盛大に祝うために地元企業がひと肌脱いだわけか。それで鉄の味のする金平糖を……なるほどなるほど。
たしかに「鉄の町」であり「修羅の国」でもある北九州市にふさわしい味かもしれない。血が噴き出す感覚になる修羅の味……うむ、怖すぎるぞ。
それはさておき、金平糖を開発するにあたって千草ホテルがタッグを組んだのは、昭和9年(1934年)創業の入江製菓。職人手作りの金平糖は、もともと地元労働者たちが「働きながら口にできる嗜好品」として大ブレイクしたらしい。優しい甘さが疲れを癒したのだろう。
そんな歴史ある金平糖を、少し錆びた風合いの「鉄の味」にアレンジ。1箱40グラム入りで432円である。実際に食べてみると……
あ……
じわじわ「鉄」を感じる。
そこまで絶望的にマズイわけではないが……鉄と言われれば鉄だ。カリッと噛んだら「製鉄所の味」がした。なんというか、地元労働者が働きながら口にしていた時代そのものを味わったような感覚。また、歯ぐきから血が出た時の味でもある。全然血が止まらない時のようだ。
・みんなで食べました
さて、このまま1人で楽しむのはもったいないというか、完食は無理というか、とにかくレアな味なので編集部のメンバーにも食べてもらった。もしかすると1人くらいは「歯を抜いた後の出血味」にハマるかもしれない。どうだったかと言うと……
…………
「無理無理無理ィィ」
皆口をそろえて「血の味しかしない」とのことだった。聞けば、金平糖本来の糖分はほとんど感じられず、鉄分の存在感に圧倒されたようだ。ただ、かすかに梅のような酸味も感じたという中澤記者だけは……「ばあちゃんの家で出されたら食べ続けますね」と答えていた。強い。
ともあれ、北九州市を感じることのできる「鐡平糖」は、地元土産のエースになる可能性を秘めている。千草ホテルだけでなく「小倉井筒屋」や「いのちのたび博物館」等でも購入できるので、機会があればぜひ味わってみてほしい。ただし……決して美味しくはないぞ。
参考リンク:千草ホテル「鐡平糖」
執筆:砂子間正貫
Photo:RocketNews24.