ウォルマートが拡大し、エージェンシーが注目する コマースメディア :「利益率の高い、新たな収益源となる」

DIGIDAY

メディアセグメントの成長性を示す明確な指標は、そのセグメントを注視しているエージェンシーの数だ。

その指標では、eコマースとリテールメディアはかなり上位につけている。WPP傘下のグループエム(GroupM)がこれらのセグメントの経済的な側面を深く掘り下げ、ウォルマート(Walmart)もそのマーケットプレイス、コネクト(Connect)のパートナーシップを拡大し、ソーシャルプラットフォームやアドテクプロバイダーを取り込んでいるためだ。

まず、ウォルマートのニュースを紹介しよう。Amazonに次ぐ重要なeコマース、リテールメディアプレーヤーであるウォルマート・コネクトは、スナップ(Snap)、TikTok(ティックトック)と提携し、自社のデマンドサイドプラットフォームを通じて両者の広告を提供することになった。

ライブストリーム事業に参入

ウォルマートのエグゼクティブバイスプレジデント兼最高売上責任者、セス・ダレール氏は、さまざまなパートナープログラム契約の概要を説明するブログ記事で、スナップとTikTokのユーザーの大部分を占めるZ世代とミレニアル世代のオーディエンスが持つ約1兆9000億ドル(約272兆3500億円)の購買力に言及している。ダレール氏の発言はこれだけで、コネクトにおける両チャネルの具体的な目標は不明だ。

また、ウォルマートはストリーミングプロバイダーのRoku(ロク)とも提携し、「TVストリーミングをオンラインショッピングの次なる目的地にする」とダレール氏は述べている。

最後に、ウォルマート・コネクトは、トークショップライブ(TalkShopLive)との関係を拡大し、サプライヤー提供のライブストリームをwalmart.com/liveにもたらすことで、ショッパブルライブストリーム事業にも参入し、さらに、ファイヤーワーク(Firework)とも同様のコンテンツ契約を締結している。一部のソーシャルプラットフォームでは、ライブストリームショッピングの熱が冷めてきているため、この動きはちょっとした驚きだ。なお、これらの契約の正確な条件は不明だ。

ウォルマートは他社の尻込みに動じていないようだ。ダレール氏は、ソーシャルコマースが全コマース活動に占める割合は10%だが、2025年までに17%に成長するというアクセンチュア(Accenture)の統計を引用し、この成長を「推進するのはZ世代とミレニアル世代の消費者。つまり、ソーシャルメディアユーザーの3分の2近く(64%)を占める推定20億人のソーシャルバイヤーだ。彼らは過去1年間にソーシャルメディアで買い物したことがあると話している」と述べている。

コマースメディア成長の裏側

フォレスター(Forrester)のバイスプレジデント兼シニアエージェンシーアナリスト、ジェイ・パティサル氏によれば、コマースのクリエイティブこそ、刷新と最適化が必要だという。「クリエイティブの最適化は、単なるメディアの最適化より大きな違いをもたらす」とパティサル氏はDIGIDAYに語った。フォレスターは、(マッキンゼーが概説している)拡大する「コマースメディア」の世界をテーマに、独自調査の結果を発表する予定だ。

エージェンシー各社は、拡大するコマースメディアの世界に先行するために注力しており、その調査も入念に行っている。グループエムのビジネスインテリジェンス担当グローバルディレクター、ケイト・スコット・ドーキンス氏は、報道陣に調査結果を説明した際、eコマースは2027年までに全世界の小売売上高の25%を占めるようになるとの予測を紹介した。2022年の予測値は19%だ。

また、グループエムはリテールメディアの売上についても、2022年は1010億ドル(約14兆4800億円)と試算したうえで、5年以内に1600億ドル(約22兆9350億円)に達すると予測している。

なぜこれほど成長するのだろう? スコット・ドーキンス氏はDIGIDAYの取材に対し、「デジタル化から需要と供給のマッチングまで、いくつかの技術的進歩が後押ししている」と語った。「広告をコンバージョンや購入とひも付けることができるクライアントやメーカーには、両者のつながりがよく見える。そして、透明性が高く、より細かく測定できるため、興味をそそられるのだ」

中国では減速傾向?

しかし、誰もが認めるeコマースのリーダーで、2021年に1兆2000億ドル(約172兆円)の売上を計上したアリババ(Alibaba)は(グループエムによれば、売上がその半分しかないAmazonと異なり)、中国経済の冷え込みを受けて、少し減速する可能性がある。グループエムの調査によれば、中国と米国だけで、全世界のeコマース売上高5兆4000万ドル(約774兆円)の半分以上(52%)を占めている。

「アリババとウィーチャット(WeChat)は、決済とソーシャルを一体化することに成功した」ため、コンテンツコマースが他の地域より急速に成長した。とスコット・ドーキンス氏は話す。「しかし、これまでのようなペースで成長を続けるのは無理だろう」。

また、リテールメディアはとても魅力的なため、一定以上の規模を持つ小売企業が自社のeコマースサイトで広告枠を売り出さないことは、スコット・ドーキンス氏にとっては考えられないことだ。「1ドルショップでさえ」リテールメディアのゲームに「参加しているか、参加しようとしている」。リテールメディアは「利益率が高く、彼らにとって、新しい収益源になる。そのどちらも間違いなく魅力的だ」。

[原文:As Walmart adds TikTok, Snap, Roku and others to its marketplace, GroupM evaluates the whole sector

Michael Bürgi(翻訳:米井香織/ガリレオ、編集:分島翔平)

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