ナイキ や IKEA 、ロシア における事業停止を発表: ウクライナ 危機に対するリテーラーたちの対応

DIGIDAY

こちらは、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です
※モダンリテール[日本版]は、DIGIDAY[日本版]内のバーティカルサイトとなります

ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、多数のブランドや小売業者が、ロシアから事業を撤退した。

いくつかの小売ブランドは、ロシアの暴力行為を非難しながら、店舗を閉鎖し、オンライン販売を差し止めるという自社の決断を発表した。ほかの小売りブランドは、同国での販売を一時的に止める理由として、安全性への懸念を挙げた。これらの動きと時を同じくして、ロシアの裕福な消費者が、ロシア経済が失墜するなかで自分の純資産を保つためにラグジュアリー商品を購入していると報告されている。いくつかのラグジュアリーブランドは、差し当たりは依然としてロシアの顧客に商品の販売を続けている。これには、ジュエリーメーカーのカルティエ(Cartier)とブルガリ(Bulgari)が含まれるバーバリー(Burberry)を含む他社はロシアに対する注文出荷を一時停止することで立場を示した。

また、経済制裁、およびこの戦争に対する増え続ける世界的な抗議により、ロシア政府に圧力をかけ、ウクライナにおいて停戦させることができるかもしれない。しかし、それがいつになるかは不明確だ。いくつかの小売業者は、戦争が進行するにつれ、これらの状態が収益見通しに与える影響を警告している。一方でアナリストは、これらの閉鎖や差し止めの一部は、小売業者の短期売上高に影響を及ぼす可能性があると指摘する。

以下は、大手の小売業者やブランドが進行中の戦争にどのように対応してきたかを示すものである。

小売業者はロシアの店舗を閉鎖

この1週間で、いくつかの企業がロシアでの販売と業務を一時停止した(※原文記事は3月7日に公開)。

一番手となったのはナイキ(Nike)である。同社は、ロシアにいる顧客の注文の発送を「保証できない」と発表した。同社はロシアの自社ウェブサイトにおいて、「したがって、nike.comとナイキアプリ(Nike app)における商品の購入は、この地域では一時的に利用できない」と述べている。同社は3月3日、ロシアにおける全店舗を一時的に閉鎖した。同社は同国において約116店舗を有しており、進行中の危機のあいだにそれらの店舗で安全に事業を行うことができないと述べている。

一方、アディダス(Adidas)はロシアのサッカーリーグとのスポンサー契約を終了したと発表した。アンダーアーマー(Under Armour)とプーマ(Puma)の両社もロシアへのオンライン出荷を止めると述べた。とはいうものの、プーマはロシアにおいて100店舗以上を運営しており、それらの店舗の営業を続けている。

IKEAもまた、ロシアにおける全店舗を閉鎖した著名な小売業者だ。同社はロシアを拠点とした生産と、ロシアとベラルーシにおける輸出入の活動も停止した。同社は声明において、この決断はこの地域における1万5000人のIKEA従業員に影響を及ぼすと認めた。「当面の雇用と収入の安定を確保している」とIKEAはこのリリースで述べている。

Appleもロシアでの販売停止を発表した。同社は3月3日にこの地域における商品の販売を停止し、Apple PayやiTunesなどの一部のデジタルサービスのみを提供すると伝えた。ロシアの顧客売上は、Appleに約70億ドル(約8117億1300万円)の年間売上をもたらすと推定される。これは全収益の約2%である。

ファストファッション小売業者のH&M(エイチ・アンド・エム)は3月2日に、ロシアでの販売をすべて一時的に停止したと発表した。同社のウェブサイトによると、H&Mグループは、現在ロシアで168店舗を運営している。同社は声明において、「ウクライナにおける悲劇的な情勢を憂慮している」と述べ、顧客と従業員の安全のためにウクライナにおけるH&Mの店舗をすべて閉鎖した。

アウターウェアブランドのカナダグース(Canada Goose)は今週、同様の発表を行った。同社は、ウクライナへの攻撃が行われているあいだは、ロシアにおける卸売りおよびeコマースの販売をすべて停止すると述べた。スペインを拠点とするファッションSPAのマンゴ(Mango)は、ロシアに従業員を800人抱えている。同社も同国において事業を一時的に中止すると発表した。

一方、オンラインファッションの小売業者はこれに追随している。英国を拠点とするファッションマーケットプレイスであるエイソス(Asos)とブーフー(Boohoo)はロシアへのオンライン注文をすべて停止した。

BMOキャピタルマーケッツ(BMO Capital Markets)のマネージングディレクター兼シニアアナリストであるシメオン・シーゲル氏は、これらの業務的意思決定は、「どこまで厳密に、また、どの程度の期間にわたって行うかという点で問題があり」、影響の全貌はまだ判断できないと話す。シーゲル氏は次のように付け加えた。「小売業者からすると、影響を判断し、ますます困難となる世界情勢を乗り切るための舵取りが求められるわけで、すでに複雑になっているマクロ環境にさらに課題が積み増すことになる」。

ビジネスへの影響の可能性

一部の小売業者は、ロシア・ウクライナ紛争が今年の最終損益に影響を及ぼす可能性についてすでに投資家に警告している。

ビクトリアズシークレット(Victoria’s Secret)は3月3日に、ロシアによる侵攻がサプライチェーンの制約を追加することにより、同社のマージンに悪影響を与える可能性があると示唆した。同社は、今後数カ月のあいだ自社のビジネスに影響を与えうる要因として「世界的な不安」、物価上昇、および市場の不確実性を挙げている。

アメリカンイーグルアウトフィッターズ(American Eagle Outfitters)は3月2日に、同様の警告を決算発表で伝えている。最高財務責任者であるマイケル・マティアス氏は、アメリカンイーグルの2021年上半期の売上を減らしうる要因として、さらなるインフレーションとサプライチェーンの問題を指摘している。同氏はまた、ウクライナの状況に触れ、「このことを背景に、慎重な見方をしている」と述べている。

T.J.マックス(TJ Maxx)とマーシャルズ(Marshalls)を所有するTJXのような小売業者は、今回の危機に伴う変動性に基づいた財務決定をすでに下しはじめている。3月10日に提出されたSECファイリングによると、割引販売のグループであるTJXはファミリア(Familia)の25%の株式を売却する予定だと発表した。ファミリアはヨーロッパを拠点とし、ロシアに400店舗を有するアパレル小売業者である。TJXは2019年の時点でファミリアに2億2500万ドル(約261億1440万円)を投資している。

アルバレズ&マーシャルコンシューマーリテールグループ(Alvarez & Marsal Consumer Retail Group)のマネージングディレクターであるデイビッド・リッター氏は「今後も小売業者からはこの種のガイダンスが続くと予想される」と話す。リッター氏はさらに続けて、「ウクライナは重要なサプライチェーンの節点であるばかりでなく、多くのリテールテクノロジー企業と小売業者が技術スタッフを抱えているテクノロジーハブともなっている」と述べた。

リッター氏はまた、ロシアは多くのブランドにとって巨大な市場ではないかもしれないが、紛争が長期化した場合、多国籍小売業者はロシア市場への期待を緩和する可能性が高いと指摘した。

多くの企業にとって、進行中のロシア・ウクライナ戦争が事業と収益にどれくらい影響を及ぼすかについて結論を出すのは時期尚早だ。「しかし、何よりもまず、これは人々の命についての話だ」とシーゲル氏は強調した。

[原文:How retailers are responding to the Ukraine crisis]

Gabriela Barkho(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Nike

Source

タイトルとURLをコピーしました