SMS マーケティングのポストスクリプト、テキストベースの販売チャネルで成果:AIで作業効率化も

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SMSマーケティングプラットフォームのポストスクリプト(Postscript)は、テキストベースの販売チャネルをブランド向けに提供する取りみを拡大しようとしている。

2019年に創設され、ごく最近6500万ドル(約88億4000万円)を調達したポストスクリプトは、Shopify(ショッピファイ)のブランドと連携して、パーソナライズされたテキストベースのマーケティングキャンペーンの立ち上げを支援することでその名を知られるようになった。しかし、共同創業者でプレジデントを務めるアレックス・ベラー氏によると、同社は1年前に自社プラットフォームを販売促進に使用できるかどうかをテストすることにした。そのためには、より多くの労働力に加え、同社がこれまで行ってきたものとは違う種類の技術が必要になる。

同氏は次のように述べている。「これらをすべて理解し、正しく行うのは大変なプロセスだった。結局当社は、メンバーを雇用してチームを編成することにした。我々は遠隔地にある企業だが、今はフェニックス(Phoenix)eコマース販売センターを保有し、新しいスタッフを迎え入れ、トレーニングを行っている」。

ドクタースクワッチとの取り組み

ポストスクリプトは12社ほどのブランドに対してこの機能のベータテストを行い、毎月新たな企業を少しずつ増やしてきた。ベラー氏によると、同社の7月までの予定は、同社に関心を持つブランドによって完全に埋まっている。現在は(昨年夏の8500から増加して)1万以上のブランドと取引している。この最新の販売プログラムによって毎月新たなブランドが加わるが、近い将来にすべてのクライアントに開放されることはないだろうと、同氏は述べている(完全に開放されるのがいつか、同氏はスケジュールを明かしていない)。フェニックスのオフィスには現在、18人が勤務しており、マネージャーは3人で、さらに多くのブランドが加入するのに合わせて規模の拡大を計画している。しかし、同社は近い将来、チームの規模を指数関数的に拡大することは計画していない。むしろ、この事業部門が成長するにつれ、いくつかの新しい技術が同社の野心を拡大するのに役立つだろうと、ベラー氏は述べている。

同氏は次のように述べている。「AIで構築されるツールにより、販売担当者の作業が飛躍的に効率化される。これにより、AIを使用してデータのインサイトを切り出し、適切なタイミングで会話を集めて使用し、それでいて、高度な経験となる場面では依然として人間味を持つことができる。当社はこれを、要員の配置において長期的な効率化を行うための合理的な道筋と考えている」。

この仕組みについて説明すると、このプログラムの初期のベータテスターのひとつが、男性向けボディケアブランドのドクタースクワッチ(Dr. Squatch)だった。同社はポストスクリプトのチームを使って新しい会話のフローを作り、顧客から寄せられる質問に個人的に回答することで、SMSによる販売をテストした。同社はこれまで、SMSをマーケティングエンジンとして利用し、割引コードや新しいプロモーションの情報を送信していたが、コンバージョンに焦点を当て、よりパーソナライズされたやり取りに顧客が反応するかどうかをたしかめようという目的があった。

ベラー氏自身も、ドクタースクワッチのアカウントを担当し、新しい販売フローが、ポストスクリプトの従来のマーケティングキャンペーンと比べてどのように機能するかを把握することができた。「夫の臭いを改善したい、といった意見が多く聞かれた」と、同氏は述べる。通常のマーケティングの範囲なら、この場合はドクタースクワッチに対して、デオドラントの割引コードを与えたり、その商品の使い方について説明するほかの資料へのリンクを送信したりすることが考えられるだろう。しかし、「ドクタースクワッチは最近、フレグランスを発売したが、その価格帯の方がはるかに高い。そこで私は、セット商品をカスタマイズして作った」とベラー氏は述べる。その結果、ドクタースクワッチはそのセット商品をSMSで宣伝することができたのだ。

売上促進に寄与

ドクタースクワッチは、この新しい取り組みによって、同社のSMSリストからの売上が、以前のコンバージョンに比べ、少しずつ増えていったと語る。

ベラー氏によれば、SMSで的確な販売を行うには、多少のトレーニングと試行錯誤が必要だ。現在ポストスクリプトは、販売チームのトレーニングで2つの点を重視している。「ひとつはブランドだ。そのブランドが取り扱う質問やすべての苦情だけではなく、販売見通しのような、ブランドごとに異なるものも含む」と、同氏は述べる。たとえば、ポストスクリプトがドクタースクワッチに代わってデオドラントを販売するなら、「それは、我々が高級ラグを販売しようとする場合とは大きく異なる行動になる」。また同氏は、「スタッフに対して、販売方法だけでなく、テキストメッセージで顧客と密接な関係を築く方法について学んだことすべてをトレーニングする必要がある」と述べる。

ポストスクリプトによると、この販売プログラムが売上促進につながっていることが、初期のデータにより示されている。最初の30日間で新規加入者のコンバージョンが30%増加したと、ベラー氏は述べている。「加入者を獲得するためすでに多くの資金を投入しているブランドにとって、コンバージョン率が30%上昇するのは非常に有意義だ」。

ドクタースクワッチのマーケティング担当バイスプレジデントを以前に務めていたコーディ・グリフィン氏は、販売チャネルとしてSMSをテストするのは、同社の既存の戦略における自然な拡張に思えると語る。1年以上前、「当社のフルライフサイクルチームは、SMSを主要なツールとして位置づけするよう方向転換した」と、同氏は述べている。これは、「メールより先にSMSがポップアップし、すべてをSMSファーストにするということだ」と同氏は説明する。「というのも、参加を選んだSMS顧客のLTV(顧客生涯価値)に大きな結果の相違が出たためだ」。

基本への回帰

ドクタースクワッチは今年初め、ポストスクリプトに対し、販売に特化した新しいファネルを使って同社のSMSリストの10%をテストすることを依頼した。この最初のバッチで、コンバージョン率の30%増加が見られたため、グリフィン氏は顧客の数を増やすことを決定した。「この期間に業績は低下したが、すぐに回復した」と、同氏は述べている。これは、eコマースの売上が急速に成長したのと、この新しい部門が新しい戦略のやりかたを学ぶのに多少の時間を要したためだ。

しかし、ひとたび販売チームが販売の方法を習得し、「当社ブランドをよく理解するようになると、チームはすぐに売上の勢いを取り戻し、促進できるようになった」と、グリフィン氏は語る。現在、同社の顧客の50%はこの販売プラットフォームを使用しており、長期的にはさらに増やすことを計画している。

この種の展開は、ある意味で販売チームの基本への回帰でもある。「運営面においては、何も新しいことを発明したわけではない」と、マーケターハイアー(MarketerHire)の共同創設者でCEOを務めるクリス・トイ氏は語る。「これよりはるかに大規模のコールセンターもある。すでに行われてきたことばかりだ」。

しかし、販売のルートに進出したSMSプラットフォームはわずかしかないと、同氏は述べている。同氏は、1年前にボヤージュSMS(Voyage SMS)に売却された、SMSカートリカバリー企業のライブリカバー(LiveRecover)を例に挙げた。SMSベースの販売チームを保有するのは「ギャップを埋める方法のひとつだ」と、同氏は述べている。「この方法はうまく機能する。では、クラビヨ(Klaviyo)やポストスクリプトのようなSMSマーケティング企業はなぜこれを使用しないのか?」。

同氏はさらに、「AI関係のものをすべて追っていくと、あれはステップ関数なんだ」と続ける。すなわち、企業は、このサービスのよりアナログなバージョンを開始し、その規模を拡大するために新しいテクノロジーやソフトウェアを追加する機会があると同氏は見ている。「人々がなぜもっと早くこれを行わなかったのか、正直なところ驚いている」と、同氏は述べている。

人間的な対話

これは、ポストスクリプトによるこの市場の見かたと一致しているようだ。同社はクライアントの顧客にテキストを送り、販売ファネルに引き入れるため、人間のチームを作り上げているが、より簡単に規模拡大ができるよう、AIを追加する予定だ。

ベラー氏は、SMS戦略に別の機能を重ねるのも、将来的にこの戦略の有用性を維持するため役立つだろうと付け加えている。「すべてのマーケティングチャネルは、初期の頃と比べれば多かれ少なかれ衰退する」と同氏は述べる。「この数年間、SMSはeコマースの主流のチャネルとして採用されたが、多少の衰退が見られたと思う」。しかし、「これは当社の強みとなり得る。当社は常に、ターゲット絞り込んだメッセージを送ることをブランドに提唱してきた。今では、人間的な対話を持つように伝えている」と、同氏は付け加えている。

これはポストスクリプトにとって大きな新しいプログラムではあるが、同社の主な注力分野は依然としてマーケティングであると、ベラー氏は主張している。「これは当社にとって、単なるパイの一部にすぎないと見ている」と、同氏は述べている。

[原文:SMS marketing platform Postscript expands into text-based sales]

Cale Guthrie Weissman(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Illustaration by Ivy Liu

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