あけましておめでとうございます。年末年始も連日、新型コロナウイルスの新変異株「オミクロン株」の市中感染が報じられているが、外食企業としては政府の対応に注目している。政府分科会の尾身茂会長が「外食は極力少人数で」と呼びかけるだけで、飲食店には影響が出る。客足は減るが補償は出ない状況だ。コロナと経済と両立するなら政府は具体的な方針を出すべきだ。
こうした中、元日に記した私の今年の決意は「あがきつつ、一歩ずつ前へ前へ」だ。ワタミの外食事業は、コロナ前の売り上げ70%を見込んで順調に回復してきていたが、オミクロン株でもう一段の伸びに欠ける。「あがく」には、活路を見いだそうとして必死になって努力するという意味がある。
ワタミも適正な業態の配置や家賃交渉など、ポートフォリオ(資産構成)を見直す。ベストシナリオはコロナ「第6波」が収束し、「すしの和」や「焼肉の和民」といった新業態が軌道にのり、店数を増やせば売り上げが掛け算的に増える状況を作ることだ。
ワーストシナリオはコロナより、インフレや円安を警戒する。米準備制度理事会(FRB)は今春から3回利上げを実施すると発表している。景気に合わせ、金利を操作するのが中央銀行の役割だ。黒田東彦総裁率いる日本銀行は金融政策決定会合で長短期の金利操作を柱とする大規模な金融緩和政策は維持する公算が大きい。
日本は金利を上げられない状況だ。日銀による国債や上場信託投資(ETF)の購入に対して、世界から警鐘が鳴る。債務残高は国内総生産(GDP)の2倍を超す。政府の借金を日銀が肩代わりすることは「財政ファイナンス」と呼ばれ、先進各国でも禁じられているはずだ。金利が上がれば、日銀の債務超過の可能性も生まれる。そうなれば、円の信頼が失われて円安となり、ハイパーインフレを招きかねない。
海外のテーパリング(量的緩和による金融資産の買い入れ額の縮小)の動きに逆行し、日本は取り残される。今年から徐々に弊害が出始め2024年頃には大きな財政危機を迎えるのでないかと懸念する。
外食企業からみると、原材料の高騰と人手不足が目立つ。卸や仲介業者などの牛丼チェーンの値上げは象徴的だ。ワタミの宅食は仕入れや燃料費であおりを受けるが、高齢者が生活の一部としてお弁当をとってくださっており、ギリギリまで値上げしないでがんばりたいと思っている。
人手不足への対処も、短期派遣などに頼りすぎない方針だ。もともとワタミは創業期から、アルバイトさんがその友達を紹介してくれることで、良いアルバイトを増やしていった。価格の値上げも、短期派遣での人財確保も経営としては「楽な選択」だが、企業は「あがくこと」が生き残りのカギとなる。そのためにも今年は、社員教育や研修に注力したい。
今日から仕事はじめの方も多いと思う。今年一年「楽な選択」ではなく「あがく」ことこそ、飛躍へつながるとエールを送りたい。
【夕刊フジ】「渡邉美樹経営者目線」(毎週火曜日連載)より