中身欠く岸田氏の「人への投資」 – 階猛

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1月28日に総務省が発表した昨年の国内の人口移動状況を見ると、東京圏はコロナ禍でやや鈍ったとは言え、約8万人のプラス。他方、岩手を含む被災3県は8426人のマイナスでした。そのうち97%が24歳以下の若年層で、進学や就職をきっかけに地元を離れたようです。こうした傾向が長く続いたため、「一票の較差」が拡大。次回の総選挙に向け、区割り審議会では、都道府県ごとの小選挙区の数を「10増10減」する方向です。

10増のうち9が東京圏。10減には被災地の宮城、福島が1ずつ含まれます。すでに5年前の定数見直しで、岩手は1減っています。当時私は、人口減少が進むと地方の有権者の声が国政に反映されなくなると警鐘を鳴らしましたが、まさしくその通りになりました。一部の自民党議員が慌てて「10増10減」の撤回を言い出しましたが、国会が決めた定数見直しのルールを自ら破るのは、「天に唾する」ようなものです。

それよりも国会は、地方から東京圏への人口流出という構造問題を解決することに精力を注ぐべきです。そこで2日の予算委員会では、地方の活性化策を議論しました。最初に被災地の人口減少を説明し、復興で整備されたインフラが「宝の持ち腐れ」にならないよう、「人への投資」を重視すべきだと述べました。その上で、施政方針演説で岸田首相が「早期に倍増」を目指すとした「人への投資」は、現時点でいくらなのかと質問しました。

ところが岸田首相は、「数字は持っていません」と驚くべき答え。現状が明らかでないのに、倍増を宣言するのはあまりに無責任です。不毛なやり取りを避けるべく、金額が明らかになっている10兆円の大学ファンドが生み出す年間3000億円もの運用益の使い方について尋ねました。政府の方針では、「世界と伍する研究大学」を数校選んで毎年5、6百億程度配分するとのこと。しかし、そうした研究ができる設備と人材を抱える大学は都市部にしかありません。これでは優秀な人材がますます地方から流出してしまいそうです。

そこで、「岩手が誘致している国際リニアコライダー(ILC)のような最先端の研究開発拠点を地方に設けるためにこの資金を使うべきではないか」と、同じ岩手の鈴木財務大臣に提言。ILCを作るのに必要な資金は毎年4百億円程度です。鈴木大臣は、「財務大臣という立場でこれをすると、のりを越える」として踏み込んだ答弁を避けました。

岸田首相は「(地方にとって)最先端の研究開発拠点は重要な要素だ」と語りましたが、他人事のような答弁でした。農家にとって深刻な米価下落問題についても尋ねましたが、「デジタル田園都市」を掲げる割に、「田園」をどう守るのかはっきりしません。「新しい資本主義」もそうですが、岸田首相は耳障りのいい言葉を使うものの、中身が伴っていません。

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